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【裂空の弾丸】Knights of the Sky

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【裂空の弾丸】Knights of the Sky

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第1章 生ける者たちの決戦 4

「こちらブリッジ、了解したわ。すぐに通達する。……アルマ!」
「はい。帰還命令を出します」
 ベルネッサの言葉を聞くや否や、この一帯の空域に呼びかけるアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)
『こちらホープ・シーカーから各員へ。ワープまで残り二十分を切っています。速やかに帰還してください。繰り返します―――――』
 アルマの迅速かつ的確な指示に従い、前線へ出ていた部隊が続々と帰還していく。
「アルマ」
「はい?」
 ベルネッサの声に振り返るアルマ。
「ワープ後、飛空艇のコントロールは全てあなたに任せる」
 ベルネッサの言葉から、アルマは感じ取る。
「ベルネッサさんは、行かれるのですね」
「ええ。全部終わらせてくる。だから、飛空艇をお願い」
 ベルネッサの願いに、アルマは決意を持って頷いた。
「船の心臓部にある機晶石には、あらかじめ伝えてあるから……きっと、力になってくれると思うわ」
「了解しました。全てが終わるまで、必ず死守します」
「ありがとう」
 二人は、笑いあった。

「笑えない! 全然笑えなーい!」
 アルマとベルネッサとは対照的に、必死に機関部を修理しまくり、笑うどころでないのは柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)
 飛空艇の機関部を全て任されている彼は、現在てんてこ舞いだった。
「いきなりチャージ量が上がったと思ったら、それを蓄える部分が異常を起こすとかもー! そんなんだったらできないようにしとけよなー!」
 流れるように愚痴を言いながらもその手は迅速に破損した箇所を修理していく。
 負けず劣らず、チーム『整備班α』も頑張ってはいるが破損はそれ以上に速い。
「おい! レンチ取ってくれ頼む!」
「そんなもん自分でなんとかしろ! こっちは煙吹いてんだぞ!」
「んなこと言ったらこっちは火だ! 誰か水もってこい!」
「機関部に水かけるとか死ぬ気か!? つべこべ言わずさっさと直せってんだ!」
「オレ、この修理が終わったら一軒家建てて、のんびり暮らすんだ……」
 ……壮絶である。
「うおおお!? チャージ量のメモリ振り切れてる振り切れてる!! まずいって絶対これどっかぶっこわれ」

 ドカーン! ちゅどーん! しゅばばばばーん!

「……ああそうよだフラグ立てた俺が悪かったよさっさと直せばいいんだろ直せばあ!!」
 派手爆発した箇所へ駆け寄り、応急処置を施した上で修理を行う桂輔。
「どんだけぶっ壊れようと、ぜーんぶ修理してやるよ! 絶対に、墜落させないからな!」
 頑張れ桂輔負けるな桂輔! 修理王の道を突き進め!

 一方、外で攻撃を行っていたフリューネ、リネン、フェイミィの三人は未だ飛空艇に戻れないでいた。
「これは、まずいわね……」
「ここまで粘られるとは、予想外だわ!」
「こんのっ、邪魔だ!」
 分厚い敵の群れ。突き崩せども突き崩せどもわらわらと群がってくる。
「あらら、どうやらそっちも帰れないみたいだね」
 北都とクナイが三人のもとへ駆けつける。二人も敵の多さの前に、帰還できないでいたのだ。
「……こうなったら、最後の手段。フリューネ」
「えっ?」
 いきなり呼ばれ、すっとんきょな声を出したフリューネに向けて、リネンは自分の所持品である融合機晶石を投げた。
「あっちは任せたわ。ここは、私とフェイミと、そこのお二人さんと一緒にどうにかするから」
「……っ。……わかったわ」
 信頼してるからこそ、言葉は続けない。感情を押し殺して、フリューネが突撃の準備をする。
「気にすんなよ。リネンは絶対、守るからさ!」
「ええ。頼んだ、わっ!!」
 フリューネが何者をも顧みずに飛空艇へ向けて突貫する。その思いに共鳴するかのごとく、エネフもスピードをあげる。
 一陣の風となったフリューネを止めよとする敵もいたが、当然そんなことはできない。
 なぜならば。
「フリューネに、触れるんじゃないわよ!」
「だからってリネンに触れるのもなしだぜ!」
「まあ、そういうことらしいから」
「彼女のことはお気にせず、私たちと遊びましょう」
 心強い仲間が守ってくれるから。だからフリューネは振り返らない。
 ここは任せ、ワープ後を任された責任と義務を、そしてみんなの思いを無駄にしないため。
「届けえぇぇぇーーーっ!!」
 フリューネが飛空艇へと手を伸ばす。
『ホープ・シーカー、ワープ開始します! 各員、衝撃に備えてください!』

 キュウウウウゥゥゥン……――シュパァァァァンッ!

 轟音と光を伴いながら、飛空艇は光に包まれて、その姿を消した。
「あの質量の物体を転移させるなんて、つくづくすごい船ね」
「あいつがいないってことは、無事にワープしたってとこか」
 何とかフリューネがワープできたことに一安心したのも束の間、四人と遊撃隊の周りは敵だらけ。
 そして、もう支援は期待できない。
「いやーこの展開は予想外だったなぁ」
「お姫様抱っこも、嘘じゃなくなりそうですね」
 北都とクナイも周りを見渡して、そんな言葉を漏らした。
「……実は、この間フリューネがやってたの見て、私もやってみたかったのよね」
「? なにをさ?」
「……このリネン・エルフト、引きはしないわ! かかって、きなさい! ……なーんてね」
「……っはっはっは! 随分と余裕だな! なんか、ピンチって感じがしなくなったぜ!」
 二人のやり取りをみて、北都とクナイも笑う。
「あはは、それいいね。僕だったら……んーなかなか思いつかないね」
「それなら、お姫様抱っこをされるため撃墜されるぞ! なんてのはどうです?」
「おっ! それならオレはリネンをお姫様抱っこだな!」
「ふふっ、セクハラは禁止よ?」
 この緊急事態に、四人は大いに笑いあう。だが、気が触れたわけではない。
 全員、これから始まる死闘を前に覚悟を決めたのだ。
「さてと、それじゃ……行くわよ!」
「おう! 遊撃隊、ぬかるなよ!」
「うん。たまにはやってやらないとね」
「はい。全員で生き残りましょう」
 こうして、四人の長きに渡るであろう死闘が幕を開けたのだ。