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【借金返済への道】眠れるアイスタイガー

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【借金返済への道】眠れるアイスタイガー

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第5章


 無事に空京へと帰還した一同。
 ゆっくりと……している暇はなく、氷像にされた人達を戻す。
 陽一をアーチボルドが、ユニをファル、クルードをブレイズが火術を使い融かす。
「あ、あれ? アイスタイガーは?」
 戻ったばかりの陽一はキョトンと辺りを見回す。
「我が融かしてやったのだ。感謝の意を表しながら血を吸わせるが良い」
 アーチボルドが吸血の約束を取り付けようとするのを、ミキが慌てて止める。
「有難う御座いました」
「……世話になった……」
 ユニとクルードはなんとなく状況を把握し、素早く礼を言う。
「気にしないで」
 それに対して、ファルは笑顔で返し、
「フフハハハハ! 僕を有り難く思うが良い!!」
 ブレイズは威圧的に返したのだった。
 お礼だけ言うとクルード達はどこかに消えてしまった。
「みんな無事で良かったですね」
「……ああ……そうだな」
 ユニの満面の笑みに釣られてクルードも微かに笑う。


「え〜と……で、エルさんは?」
 薬屋の前で呆然としていた真を見つけ、ホイップが聞く。
「実は……空京に着いて直ぐに発煙筒で姿を隠してしまったんだ。探したんだけど見つからなかった。……すまない」
 真は項垂(うなだ)れてしまう。
「ホイップちゃ〜ん! お帰り〜!」
 頭上から箒に乗って現れたのはエルだった。
 毛の入ったクーラーボックスを脇に抱えている。
「この毛をちゃんと渡すから……ホイップちゃん、デートして」
 エルの言葉にホイップだけが固まり、あとは皆やれやれと顔を見合わせている。
「……」
 ニコラは無言でアサルトカービンを構え、撃つ。
「うわっ! 危ないなぁ」
 そう言って地面に降りてきたエルを亞狗理がすぐさま簀巻きにする。
 無事にアイスタイガーの毛を奪還し、ホイップが薬屋へと入っていく。
 その後を追って、美羽とベアトリーチェ、文乃が薬屋へと入る。
「おじさん。ちゃんと持って帰って来たよ」
 クーラーボックスをおじさんに見せ、反応を待つ。
「おお! 助かったよ。有難うな。何かあったらまた仕事回してあげるよ」
「やったー!」
「はい、報酬の5000G
 ホイップは手にした報酬に歓喜する。
「ねぇ、おじさん。これは買い取ってもらえない?」
「こっちの毛皮も見てね」
 美羽とベアトリーチェは追い剥ぎから追い剥ぎした解毒剤を出し、文乃は剥ぎ取ったオオカミの毛皮を出す。
「う〜ん、そうだなぁ……解毒剤は500Gかな。毛皮は1000Gで買い取るよ」
「やった〜」
「良かったです」
 美羽とベアトリーチェは手を取って喜ぶ。
「これで、あの蛮族達に少し渡してあげられる。お金が無くて追い剥ぎしていたのなら、これで稼げる事を証明できるよね」
 文乃も安心したような顔をしている。
「で、はい! ホイホイ。これ、借金返済の足しにしてね。ヒガリンと疾風っちも解毒剤確保してくれたんだよ」
「もし私たちが困ったときは、ホイップさんも力になってくださいね」
 美羽達が500Gをホイップに渡す。
「うん、有難う〜! 皆にお礼しなくちゃね!」
 外に出て、買い取ってもらえた事を報告し、皆をお茶へと誘うのだった。


 大人数でも余裕で入れる空京の『琥珀亭』へとホイップは招待した。
 簀巻きにされていたエルも解放し、招く。
「え〜、ではでは。無事に帰還を祝しまして……かんぱ〜い!」
 ホイップが高々とアイスティーのグラスを掲げるとみんながソレに倣う。
「まだホイップちゃんとのデート諦めたわけじゃないぜぇ!」
 叫びながらエルはグラスのアイスティーを一気に飲み干す。
「やっぱり真夏でも渋い番茶に限るぜ」
 この暑い中、零は1だけ熱い飲み物を注文していた。
 入れ物もグラスではなく、勿論湯呑みで。
「で、またそれをブシドー・ウスタンとか言いだすんですか?」
 ルナは苦笑いしながら溜息を吐く。
「教導団の人達へのお土産買うの……後でも良いよね?」
「そうでありますな。忘れぬようにしなければ」
 そう会話してサイモンと真紀はグラスのアイスティーに口を付ける。
「僕も空京で買い物しようと思ってました。宜しければ一緒に行きませんか?」
「あ、それ賛成〜」
 2人の会話に葉月とミーナも加わる。
「おお。これで買い物を忘れる等という愚行を犯さないですみそうであります」
「それに、一緒に行けば面白そうだよね」
「あ、でも葉月に手を出したら許さないんだからね?」
 この後の楽しい買い物コースを決めていく。
「はい」
 芳樹はホイップの前にズイと違うグラスを置く。
「へ?」
「僕のおごり。お疲れ様って事だ」
 グラスの中は炭酸アイスティーの上に濃厚なミルクアイスが乗っている。
「ええ〜!? 今回、お世話になったのは私だよ?」
「良いから。これからまだ借金返済あるんだろ? 頑張れって意味も込めて」
「有難う!」
 嬉しそうにアイスをスプーンで掬い、口へと運ぶ。
 その様子を確認して、芳樹は違うテーブルへと移っていった。
 そこへ、ケイの側をこっそり離れたカナタが近づいてくる。
「のう、おぬし。その〜……図書館の時の『ぼんきゅっぼん』はまだ持っておるのか?」
「う、う〜ん。お礼にあげたいのは山々なんだけど、あの時全部無くなっちゃったんだ。ごめんね」
「そ、そんなぁ」
 しょんぼりと背中を丸めケイの側へと帰っていくケイであった。
「そうそう、ルドルフちゃん。頼まれていた氷持って帰って来ました」
「おお! 有難う」
 クーラーボックスごと渡された氷の塊を見つめ、これを氷菓にしようかお茶の氷に使おうか楽しそうに悩んでいる。
「まだ借金残ってるんでしょ? 次は何しようかな〜、ワクワクするね!」
 カレンがホイップに笑いかける。
「うん。皆とだったら借金返済のお仕事も楽しいね」
「あ、ところでねえホイッピー……あたしは自分で払うけどさ、この人数にお茶ごちそうして……報酬残るの?」
 琴音が心配そうにホイップを見る。
「大丈夫、残るよ! だから奢らせてね。心配してくれて有難う」
 そんな会話をしている最中に『琥珀亭』へ小柄な男の子が入って来た。
 少し、店内を見回し、入口付近に居たハンスへと質問をしてからホイップの所へとやって来る。
「なんだろう?」
 不思議そうに琴音が呟く。
「ホイップさんですね?」
「はい。そうですけど……?」
「これ、店長に渡すように言われて持ってきました」
 そう告げると男の子は懐から白い封筒をホイップに手渡す。
「ちゃんと渡しましたから」
 男の子はそれだけ言うと去って行った。
「なになに?」
 興味津津でカレンが覗いて来る。
 厚みのない封筒を開けると、中身は数字の書かれた紙きれが1枚。

 請求書
ホイップ様名義エル様お買いもの分
5500G


「あの……道具とか、クーラーボックスとか……って、事……?」
「あちゃぁ」
「ホイッピー……どんまい」
 ホイップは青くなり、琴音とカレンはホイップの肩を励ますように叩き苦笑いしている。
「まだまだ大変だと思うけど、頑張って下さいです!」
 その様子を心配してか、ヴァーナーがホイップに可愛らしく抱きついて応援したのだった。
 外では暑さを強調するように蝉が鳴き続けている。


■今回の返済■
借金
−31000G
報酬
  5000G
解毒剤売り代金
   500G
お茶代
  −500G
ホイップ名義の請求書
 −5500G
今回の合計
−31500G

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 シナリオ参加有難うございました。

 前回に続き、今回もエル・ウィンドさんがおいしい役をやってますね。
 パラ実で唯一悪役に回ってくれた羽高 魅世瑠さんとパートナーのフローレンス・モントゴメリーさんも目立っていたのではないでしょうか。

 【借金返済への道】は今後も1話完結で続いていきます。
 皆さんの行動次第で借金は増えたり、減ったりしていきますので、その辺りも楽しんでいただけたらと思います。

 では、次のシナリオで!