天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【借金返済への道】眠れるアイスタイガー

リアクション公開中!

【借金返済への道】眠れるアイスタイガー

リアクション

 アイスタイガーの寝床へ到着いたホイップ御一行。
 改めて良く見ると、そこには人影がいた。
 アイスタイガーの横で添い寝している。
「ふふふ……仲良くなって蒼空学園まで連れて帰れたら……あ〜んな事やこ〜んな事も出来るよねぇ」
 うっとりと自分の手で梳いて、アイスタイガーの毛づくろいをしているのは鳴神 優(なるかみ・ゆう)だった。
 ホイップ達とは違う目的を持ってだいぶ前から居たようだ。
「……良い、な……」
 晶はそれを心底うらやましそうに見つめる。
「これ、綺麗です〜」
 ヴァーナーは、頼まれごとを思い出し、壁に付いているダイヤの様な氷の欠片を幾つか自分のクーラーボックスへと仕舞う。
「それじゃあ、毛をとって来るね」
 ホイップはクーラーボックスを持った酒杜 陽一(さかもり・よういち)、その側で控えるようにフリーレ・ヴァイスリート(ふりーれ・ばいすりーと)、小さい袋と冷やした小さいナイフを持ったカナタと共にアイスタイガーの顔まで移動する。
「火術隊【ファイヤードラゴン】用意!」
 ブレイズ・カーマイクル(ぶれいず・かーまいくる)が火術がいつでも使えるように号令を出す。
 洞窟の外で待機している間に、火術を使用する人、クーラーボックスを余分に持っている人達への蛮族用囮準備、さらにアイスタイガーが目を覚ましてしまった時に備えて注意を惹きつけるチームを編成していた。
 毛を刈るのを申し出てくれた人も居たのだが、洞窟から戻ってきた黎によって止められたのだ。
『自分の借金なのだから、自分でやるべきであろう。我等はその手伝いだ』
 というもっともな正論でホイップが自分で毛を刈る事に決まったのだ。
「では、取ります」
 カナタからナイフを受け取り、慎重に眉間の紫の毛を刈り取る。
 すぐさまカナタが袋に毛を入れ、陽一の持つクーラーボックスへとしまう。
 ぴっちょん。
 それは毛を刈り取りホッとした瞬間だった。
 ホイップが恐る恐るアイスタイガーの顔を見ると欠伸をしたアイスタイガーと目が合う。
 頭上にあった氷柱が大勢の体温で融けだし、アイスタイガーの目覚ましになってしまったのだ。
「ぐるらぁぁぁぁぁ!!」
 咆哮を1つ上げるとアイスブレスをさっそく放つ。
「あとは任せた!」
 陽一がクーラーボックスをエルと椎名 真(しいな・まこと)へと向けて投げる。
 次の瞬間には陽一の氷像が転がっていた。
 みんなの背中には冷たい汗が落ちる。
 受け取ったエルと真は急いでこの場を離れた。
 囮としてヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)も共に外へと向かう。
「起こし、て……ごめん……敵じゃ、ない……」
 必死に目を見つめ訴える晶だったが、寝起きで機嫌が悪いのか睨まれる。
「アキ、ぼーっとしちゃダメ!」
 永倉 七海(ながくら・ななみ)は、ふらふらとアイスタイガーの側へ行こうとする晶を抱きかかえ走る。
 さっきまで晶の居た場所にアイスブレスが放たれる。
 アイスタイガーが寝ている時から添い寝をしていた優もフリードリッヒと一緒にマタタビで宥めようとするが、マタタビ自体をアイスブレスで凍らされてしまい失敗。
 セオボルトはディフェンスシフトを使用し、防御力を高めてからアイスタイガーの前へと躍り出た。
「さぁ、来い! 自分が相手になってやる!!」
 ランスを構えて、アイスタイガーを牽制する。
「仕方ない、大陸に来てからはこの技を使わないようにしていたんだけど……」
 フリードリッヒは凍らされたマタタビを捨て、少し離れてから呪文を唱え始める。
 目を閉じ、二本指を構え、息を吸ってカッと眼を見開き言葉を発する。
「秘技、常磐流! 旋火爆殺呪!!」
 アイスタイガーへと向けられた腕から炎の塊が放出。
 炎はアイスタイガーへと当たる――が、すぐに消えてしまった。
 火力が足りずにアイスタイガーの体温によって鎮火してしまったのだ。
「そ、そんな」
「何が出るかと思えば……単なる火術じゃないですか」
 ショックを受けているフリードリッヒにロージー・テレジア(ろーじー・てれじあ)が言葉でツッコミを入れる。
 アイスタイガーからも尻尾でビンタをされ、ツッコミを入れられたような形となった。


 洞窟の入り口を見張っていたパラミタオオカミが1つ吠える。
 それを合図に、嫌らしい笑みを浮かべた蛮族の長が声を張り上げる。
「お前ら、準備は良いか!」
 蛮族達は応えるように各々の武器を上へと高く上げる。
 草原へと出て来た、エルはクーラーボックスから発煙筒を取り出し、こちらを見張っているやつらからこちらの姿を隠す。
 その煙の中でエルの操縦する箒に真が乗り、急いで空京へと向かった。
 発煙筒のお陰で蛮族達には見つからずに飛び立つ事が出来たようだ。
 一緒に出てきていた囮のヴァーナーは草原組へと事情を説明する。
 オオカミの声がもう1つ聞こえ、発煙筒の効果も薄れた。
 そこを狙い、パラミタオオカミ1体が突っ込んできて、クーラーボックスを持ったヴァーナーに襲いかかる。
「きゃー! こっち来ないで下さい!」
 オオカミが飛びかかったその時、小型飛行艇に乗った支倉 遥(はせくら・はるか)が間に入り、ダガーでオオカミを切りつける。
 驚いたのか、オオカミは1度引きこちらを窺っている。
「大丈夫ですか? 可愛らしいお嬢さん。怪我はありませんか?」
「はい、有難うございました」
 遥へと深々と頭を下げる。
 その瞬間にも鈍い音が近くで聞こえた。
「油断するな」
 遥の後ろに乗っていたベアトリクス・シュヴァルツバルト(べあとりくす・しゅう゛ぁるつばると)が後ろから近づいてきていたオオカミをホーリーメイスで返り討ちにしていた。
「さっすが男前ですねぇ」
「……男前言うな」
 こちらでも戦闘が開始されたのだった。