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リアクション
第2章
草原ではあまり日陰になるような場所は少なく、太陽の光を直に浴びてしまう。
地面を覆っている草も水分は少なそうだ。
ところどころに生えている木にの影に休みながらホイップ達の移動は続く。
カタリーナ・ウェイセンフェルト(かたりーな・うぇいせんふぇると)は肉眼で、恵は双眼鏡で辺りを警戒する。
「恵さんのその双眼鏡、普通のより大きくてゴツゴツしてますね」
「ああ、コレ。兄さんの形見だからね。だからボクが持つと少し大きいかな」
カタリーナの言葉にちょっと寂しそうに答える恵だった。
「す、すみません」
「ううん。気にしないでね。さぁ、みんなの安全の為に頑張って警戒しよう」
「はい! ん? アレって……」
「なになに?」
カタリーナが指をさしたのは、現在地より右斜め前にあるちょっとした丘の上にある木のあたり。
草原で障害物がほとんどないため、肉眼でも小さな黒い影がウロウロしているのが見える。
恵は双眼鏡をそちらに向けて確認をする。
「もしかして、草原にいる蛮族さんですかぁ〜?」
「蛮族じゃなくてパラミタオオカミだね。なんかこっちを観察してる感じ。まだ遠いし、襲ってくるとは限らないから、警戒を強めて様子見かな」
浅葱 きはる(あさぎ・きはる)が聞くと即座に恵が言う。
「じゃあ。各自、気を引き締めて行こう!」
恵の言葉を聞いたホイップがみんなに言う。
ホイップ達から離れた場所。
蛮族のたむろしている集落ではホイップの話を聞いて空京を飛びだしていた魅世瑠とフローレンスがいた。
彼女達は草原に来て直ぐにこの集落を探し当てていたのだ。
集落とは名ばかりで、掘立小屋が数件建っているだけの粗末なものだが。
偵察に出していたパラミタオオカミが戻って来ると、ホイップ一行が洞窟のそばまで来ていることを吠えて伝える。
「どうだ? あたし達の情報は役に立っただろ?」
得意満面で魅世瑠が蛮族の頭に言う。
「ああ、まったくだ。これで後は、毛を取って出てきたところを襲うだけだな。うまくいったら今夜は宴会だ。お前らも参加しろよ」
「当たり前だよ」
頭に対してフローレンスが楽しそうに返事をする。
「野郎ども! 今回は本物のパラ実生が参加だ! 遅れをとるんじゃねぇぞ!」
「ヒャッハー、ヒャッハー、ヒャハヒャッハー!!!」
頭の鼓舞に手下約50名とオオカミ約30頭がコマネチで応える。
そんなおかしな状況に2人は絶句していた。
ホイップ達がようやく目当ての洞窟へと到着する。
洞窟は地面を掘り下げて出来たもので、洞窟というより大きな穴という印象を受ける。
入口付近は急な坂になっているが、少し行くと地面と平行しているらしいのが見える。
さらに、入口のには大きな爪で何度も引っ掻いた痕がある。
それを見て、今まで無言で空を見つめていた春告 晶(はるつげ・あきら)が口を開く。
「……この、痕跡は……自分の……縄張りを、主張……。本当に……アイスタイガー……いるんだ……」
少しだけ嬉しそうだ。
洞窟からはうっすらと冷気が出ていて、まるで天然のクーラー。
すぐ側には大きな木もあり、良い感じの木陰になっている。
真夏の炎天下を歩き続けていた一行はホッと一息つく。
「休憩も出来たし、そろそろ動くか。俺は先に中に入って洞窟の様子を見てこようと思う。罠もあるらしいしな」
ヴォイド・コーウェン(うぉいど・こーうぇん)が動くと次々に動きが出てきて、それぞれのチームが出来た。
罠解除組、洞窟組、草原待機組となり、すでにチーム毎に別れている。
「それじゃあ、みんなにアイスプロテクト掛けますね」
「では我はディフェンスシフトを使うとしよう」
先行する罠解除組に菅野 葉月(すがの・はづき)と藍澤 黎(あいざわ・れい)がスキルを使う。
技は成功し、罠解除組と洞窟組全体にアイスプロテクトとディフェンスシフトがかかる。
「じゃあ、ボクはカイロを」
エルは肩から下げていたクーラーボックスからカイロを取り出し、洞窟に入る人全員に手渡した。
ちらりと見えた、クーラーボックスの中にはまだ色々な物が入っている。
「なぁイクレス。カイロを見て閃いたのだが、火術で鎧を温める事は出来ますかな?」
セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)が隣でカイロを受け取っていたイクレス・バイルシュミット(いくれす・ばいるしゅみっと)に聞いた。
「無理であるな。我の技術が未熟で危険である」
イクレスが即座に却下する。
「残念ですな」
しょんぼりと肩を落とす。
少し離れたところでは草原待機組のルドルフ・ハイマン(るどるふ・はいまん)が洞窟組のヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)に頼みごとをしている。
「洞窟にあるであろう氷を取って来てもらいたいのだ。ヴァーナー君ならば囮用のクーラーボックスも持ってることだし。頼めないだろうか?」
「良いですよ。では、無事に空京に着いたらお渡ししますね」
ヴァーナーはニコリと笑って承諾する。
こうして洞窟に入る準備は完了した。
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