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リアクション
【ホイップ支援チーム】
「1番の【ホイップ支援チーム】さ〜ん、スタートしやがれこの野郎! ごほっ……してください」
従業員Tシャツを着た蛮族が声を張り上げる。
順番は受付が終了してから、くじ引きで決定していたのだ。
「行くよ〜! 借金ー返済ーー!!」
「おー!!」
ホイップの切実な掛け声にチームがこたえる。
スクリーンを見ていた観客は吹き出したのだった。
屋台で食べていた人達は悲惨な状態になったのは言うまでもない。
■第1問目■
「え〜と……う〜んと……」
「ここはホラ、携帯がヒントになるんです」
ホイップが四苦八苦している横で綾乃が一所懸命に答えへと導こうとする。
最初、ホイップも戦闘に参加しようとしていたのだが、周りに必死に止められたのだ。
借金が増えそうだ、と。
「綾乃さん! まだですか!? コウモリが血を……ぶくぶく」
後ろではすばしこい吸血コウモリに遊ばれている。
血を吸われているのはにゃん丸である。
首筋にいるコウモリを払うと直ぐに離れ、天井まで舞い上がる。
「そっか! Leftで左!」
「そうそう」
綾乃が手を叩いて喜ぶ。
『やっと答えまで辿り着いたようどすなぁ』
『そうどすなぁ〜。だいぶ時間かかりましたなぁ〜』
つまらなさそうに柚子と開耶が実況をする。
無事に左の扉をくぐり、正解への道を行くチームであった。
■第2問目■
「う〜んと、この問題は……」
「ああ、ちょっと待つんだ、フロイライン・ホイップ」
「へっ?」
問題を解こうとしているホイップをエリオットが止める。
戦闘の方ではリアトリスとパルマローザが蛮族に向かっている。
リアトリスが派手にフラメンコを踊り、注意をひきつける。
注意がそちらに向かったところで、パルマローザが後ろから殴りつけ気絶させていた。
「ああ〜、ごほん。この問題の最後ちょっと間違ってるよな? 正確には……色々できるが……1322113231だよな」
エリオットが洞窟の上に付いている監視カメラに向かって言葉を投げかける。
『そうどすなぁ。ここは私も気になっていたところどすな』
『そこんとこタノベはん、どうなってはるんでしょう〜?』
柚子は間違いに気が付いていたらしい。
『申し訳ありません。確かに間違っていたようですね』
『では返事をしときまひょう』
スクリーンに映る画像が上下する。
洞窟の中ではまるで監視カメラが頷いているように見える。
「では、ここを訂正させてもらう」
そう言うとエリオットは洞窟に貼りつけられている問題文を懐から出したペンで直す。
「これで良し。さぁ、問題を頑張るんだ。ヒントは交互」
「うむ〜……あ! 上下をこの数字の通りに交互に読んでいくんだね! みぎがあたりとみせかけてひだりがあたり になるから左が正解だぁ!」
「その通り」
問題が片付く。
ホイップが後ろを振り向くと、にゃん丸が気絶している蛮族の懐から解毒剤を奪っている場面を目撃出来た。
■第3問目■
「あ、これならなんとか大丈夫」
問題をじっと見ていたホイップが声を上げる。
「凄いです。頑張って下さいね」
綾乃がホイップの後ろに付いてフォローしている。
問題を解こうとしている2人にパラミタオオカミが近づこうとすると、にゃん丸が体を張って防御する。
「オオカミがぁー来ーるーー!!」
叫びながらも立派に囮役を果たしている。
スクリーンを見ている人達にはだいぶウケているようだ。
『問題を解くのを見るよりも、にゃん丸はんの方が面白いどすなぁ』
くすくす笑いながら柚子は実況をしている。
『大変な事になっとりますなぁ〜』
開耶の提案に柚子もタノベも賛成をする。
「ぎゃー! まだ問題は解けないのかー!? つか、そこで見ている3人も手伝えよ!」
オオカミが噛みつき攻撃を仕掛けてくるのを紙一重でかわし、メンバーへ向けて声を投げる。
「いや、面白いからな。見ていて」
「頑張れ〜。にゃん丸君なら出来る!」
「そうですね。もう少しで問題も解けるようですし、観客へのサービスだと思って諦めて下さい」
エリオット、リアトリス、パルマローザの順にきっぱり言われる。
「裏切り者ー!」
涙と鼻水で汚れた顔が画面一杯に映る。
「やっぱり、あたしも参加したかったよ〜!」
スクリーンに映る楽しそうな光景にメリエルは指をくわえて呟いた。
「ほんと、楽しそうだよね!!」
焼きモロコシを食べながらリリィが感想も漏らす。
「出来た! 答えが−6になるから正解は左だね!」
「違いますよ!? もしかして、引き算をそのままやってませんか?」
綾乃が間違えた答えの扉へと向かおうとするホイップを引きとめる。
「あれっ? あ、そっか。引き算は後でやんなきゃいけなかったよね」
慌てて最後を計算しなおし、答えが−9と出る。
「正解は右だったんだね。間違いを指摘してくれて有難う」
ホイップが綾乃へと向き直り、お礼を言う。
正解の扉を開けて、にゃん丸が最後にくぐると勢いよく閉める。
扉の向こうでは止めり損ねたオオカミが扉にぶつかる音が響く。
『無事クリアどすなぁ〜』
『えぇ』
笑顔で開耶が横に居るタノベに同意を求める。
■第4問目■
2匹のコウモリと元追い剥ぎが邪魔をして、なかなか問題文まで辿り着けないでいる。
「おらおらおら〜!」
楽しげに蛮族が棍棒を振り回す。
吸血コウモリがあらかじめ決めていたのではないかと疑うくらい蛮族と連携がとれている。
実際は、話し合いなど出来ようはずもないのだから偶然なのだろうが。
「俺と綾乃さんが吸血コウモリ担当! リアトリスくんとパルマローザさんが元追い剥ぎ担当で宜しく!」
頷くと一同、行動に入る。
にゃん丸と綾乃が素早い動きの吸血コウモリの動きを惹き付ける。
リアトリスとパルマローザがさっきも見せた連携で蛮族の相手をしていく。
敵の注意がこっちに無い事を確認し、駆け足で問題文へとホイップ達が近づく。
「ん? んん〜??」
ホイップの頭上には沢山のはてなマークが飛んでいるのが解る。
「ここは私がやろう」
エリオットがサクサクと解いていく。
コウモリは捕まる気配がないが、蛮族の方は既に気絶していた。
「左が浮かび上がった。正解は左だ!」
「はぁ〜。そうなるんだ!」
ホイップが感歎の声を上げる。
『ここは難なくクリアどすなぁ』
『見せ場が少なくて残念な感じですね』
柚子とタノベが感じた事を述べる。
■最終問題■
「よっ! おめぇさんの顔は見覚えがあるぞ! 今の仕事に付けたのはお前のおかげらしいが……手加減はしないぜ! ヒャッハーヒャッハーヒャハヒャッハー!!」
蛮族の長が1人コマネチをして気合いを入れる。
「ホイップちゃん、知り合いなの!?」
にゃん丸がビックリして声を掛ける。
「はあ、まぁ、一応……」
ぼこぼこにしたのを思い出し、目を背ける。
その様子にリアトリスとパルマローザも苦笑いした。
「んじゃ、俺達が時間を稼ぐから2人とも頑張れよ!」
そう言って、にゃん丸は我先にと駆け出し、長の前へと向かう。
にゃん丸がリターニングダガーで切りつけると左手に装備している盾で防ぐ。
リアトリスは太ももをセクシーにチャイナドレスのスリットからチラ見せしながらフラメンコを踊り、間に剣での攻撃を挟む。
エリオットが火術で頭を狙い、盾を上に持っていくように仕向ける。
パルマローザはその2人に当たらないよう、氷術を長の足元へと放つ。
氷術が成功し、地面と右足が凍りつく。
動きが制限されたところを見計らって、ホイップと綾乃が問題文へと近づく。
綺麗に息の合った攻撃に観客から称賛の声が溢れる。
『見事なものですね』
『あの氷術のコントロールもなかなかのものどす』
『4人ともカッコイイどすなぁ〜』
実況解説席でも評判が良い。
「この問題は知ってる!」
ホイップが嬉しそうに綾乃へと笑顔を向ける。
「商い益々繁盛!」
ホイップと綾乃の声がハモる。
「では、答えは……」
「お客さんがいっぱいの扉だから右だね!」
確認し合い、お互い頷く。
長との戦闘は1対4だというのに苦戦している。
近接攻撃を仕掛けると棍棒から繰り出されるカウンターを食らうからだ。
実際、よけきれずにリアトリスが腹を強打され吹っ飛ばされた。
直ぐに起き上がり、攻撃に参加しようとするも腹に力が入らず、断念している。
「正解の扉を開きました! 皆さん早くこちらへ!」
綾乃が手招きをする。
その声を聞き、パルマローザがもう一度氷術を長の足元へと放ち、動けないようにした。
急いで、リアトリスの元へと駆け寄ると肩を貸し、一緒に走り出す。
他の2人も急いで扉をくぐる。
皆が入ったのを確認してから、扉を閉める。
「あ〜あ、行かれちまったなぁ」
くしゃくしゃと頭を掻きながら、長は笑っていた。
棍棒を使い、氷を叩くと凍っていた足が自由になる。
「さて、次はどんな奴かなぁ」
『見ごたえのある最終問題どしたな』
柚子の言葉に観客もそれに頷いているようだ。
■?■
扉を閉めるとそこには暗闇が広がっていた。
「あれで最後じゃなかったのか?」
一同が疑問に思っていた事をエリオットが口にする。
「ふはははっ! 良く来たな。ここがお前たちのは〜か〜ば〜だ〜!」
どこからともなくノリノリな声がすると、部屋の真ん中に上からライトがあたり、地面から何かがせり上がってくる。
モーター音が止まると、そこに居たのは見た目重視の鎧を身に纏ったウィングといつも通りのファティだった。
「今なら魔法でも銃弾でも真っ二つに出来る気がする!」
更にノリノリで口走る。
『なんと最終問題後にもイベントが追加されたんどす〜』
『いやぁ、どうしてもやりたいという熱意に負けました』
楽しげに開耶とタノベがやりとりをする。
「さあかかって来るが良い! 私がラスボスだぁ!!」
「風と大地の神霊よ、彼の者に祝福を与えたまえ! パワーブレス!!」
ウィングがセリフを吐いている間にファティがスキルを使い、強化する。
「はっ! ついあまりの光景に呆然としてしまった!」
チームの中で一番早く思考ストップから回復したのはエリオットだった。
「なんだろうか……ちょっと懐かしい感じがしますね……」
ウィングが何かを少し考えている間に、エリオットが皆の思考ストップを復活させる。
「むむむ〜? ごほんっ。とりあえず……私を倒せば賞金が――」
「氷術!!」
エリオットが容赦なくウィングとファティの足元にぶちかます。
「なっ!? 口上中は攻撃をしかけては――」
「爆炎波!」
「氷術!」
リアトリスが腹を押さえながら爆炎波で上半身を攻撃し、パルマローザがさらに顔を氷術で凍らせる。
「え〜い!」
最後は綾乃が竹箒で壁へと叩きつけたのだった。
「私の出番なかったや」
ホイップが少し残念そうに呟いた。
『容赦のない攻撃の嵐どしたなぁ』
『そうですね。ここまでやってくれると見ている方もスカッとしますね』
柚子の言葉にタノベも頷いた。
無事にクリアの扉をくぐると外に出る。
蛮族の従業員から1番の文字の入った札を渡され、後ほどここに集合するように言い渡される。
外ではスクリーンの様子をハラハラしながら見ていた黎がホイップの事を待っていた。
勿論、お留守番をしていたメリエルとリリィも来ている。
ホイップが無事なことを確認するとホッとした表情で抱きしめる。
「怪我も何もしていなくて良かった」
「大丈夫だよ。心配してくれて有難う」
心底安堵した声を出す黎をホイップが背中をぽんぽんと叩く。
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