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桜吹雪の狂宴祭!?

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桜吹雪の狂宴祭!?

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第三章

 桜の袂に設けられた茶席……の隣にある更衣室。
 中に居るのは新緑の振袖を着たレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)と制服を脱いだ小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)、そして精霊だ。
「ふむ、美羽さん……お肌がすべすべですねぇ」
「ひゃう! ちょ……変な所触らないでくださいよ!」
「おっと失礼……おや、精霊さんも中々いいお肌をしてますねぇ」
「にょー! 何するのよ!」
 シャー、と獣みたいに威嚇する精霊。それを見てレティシアが笑った。
「さて、イタズラはこの辺りにして、真面目にやりますかねぇ」
 そう言ってレティシアが取り出したのは二着の着物。
 今、二人はレティシアに着物を着付けてもらっていた。 

 今より少し前、美羽と彼女のパートナーであるコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が涼司達の見回りに同行する事になった。その際美羽がレティシアの茶席に行く事を提案したのであった。
 茶席でレティシアが点てた茶を嗜んだ後、彼女が言ったのである。『良かったら着てみますかねぇ』と。

「……しかし、泪先生残念だったね」
 先程あった出来事を思い出し、美羽が呟く。実は先程まで、泪も居たのだ。
「あれは……結構ショックなのよ」
 精霊もうんうん頷く。
「ええ、私も驚きましたよ。まさかあんなことがあるなんてねぇ……」
 レティシアも、苦笑を浮かべていた。

 一方その頃、茶席にて。
「お待ちの間どうぞ……インスタントですが」
 ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が湯飲みを差し出す。
「すみませんね、私がお茶を点てられたら良かったのですが」
「いや、これも中々悪くない」
 そう言いつつ湯飲みを啜ったのは草薙 武尊(くさなぎ・たける)。彼もまた同行者の一人だ。
「そう言って頂けると助かります。山葉校長もどうぞ」
「ああ、ありがとう……あの、泪先生もお茶いかがですか?」
 涼司が声をかけるが、
「……いえ、遠慮しておきます」
と暗い声で泪は返した。
「……何があったんですかね?」
 コハクが涼司達に小声で言う。
「いや……皆目検討がつかない」
 涼司がそっと泪を見る。
 先程、更衣室から戻ってからずっと泪は落ち込んでいた。声だけではなく全身から暗いオーラを漂わせ、隅の方で体育座りをしている。
「すみませんね泪先生、色々サイズは揃えておいたんですけど、まさか胸が大きすぎて入らな――むぐっ!?」
「そそそそういう事は言わないで下さい!」
 落ち込んでいたのもなんのその、泪は即座にミスティの口を塞ぎにかかった。
 その光景を見て、男性陣は苦笑する。
「しかし、中々時間が掛かるものだな」
「女性の場合は仕方ないですよ。僕もよく美羽に待たされたりするからなぁ……」
 草薙の呟きに、コハクが苦笑しつつ答えた。その時だった。
「そこのおにーさんたち、お暇でしたらちょっと見て行きませんか?」
 そこに現れたのは、大きな荷物を背負った緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)(ハルカちゃんバージョン)だった。
「見ていく?」
「はい、移動販売のお店です」
「へえ……暇だし、まあいいか。泪先生も見ませんか」
「……そうですね。いつまでも落ち込んでいられませんし」
 涼司の言葉に、泪が頷いた。
「色々取り扱ってますよ」
 そう言って包みを広げる。
「えーとおつまみに飲み物、おやつのおかしに武器まで」
「ちょっと待て。今聞き間違えたようなんだが、最後なんて言った?」
 涼司の問に、ハルカは首を傾げながら答える。
「武器ですけど」
 そう言って平然とハルカは武器を取り出した。どう見ても殺傷能力がある代物だ。
「いやいや、何で武器を売ってるんだ!?」
「需要ありますよ?」
「あるんですか……」
 泪が苦笑交じりに呟いた。
「何か欲しい物はありました? これなんか相手を苦しませるのにいい武器ですよ?」
「いや……特に無いな」
「そうですか……わかりました。ハルカはその辺をうろうろしているので御用の際はよろしくお願いします」
 そう言ってハルカは荷物を纏めて去っていった。
「にょ〜……」
「お、やっと戻ってきた……ってあれ?」
 戻ってきた精霊の姿を見て涼司が声を上げた。
 ふらふらとした足取りで、先程と同じ格好だったのだ。
「着物着なかったんですか?」
「締め付けられるのが嫌だったのよ」
 結局、着物を着るのは美羽だけだった。
「まあこんな場なんで少しくらいの汚れは大目に見ましょう。けど、破いたりしたら保障はしませんよ?」
 退出際、レティシアが美羽に言う。
「美羽、気をつけなよ」
「大丈夫だよ。コハクは心配性だなぁ」
「……なんか不安だよ」
 笑う美羽を見て、コハクは一人呟いた。