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リアクション
「わけわかんないよぉ〜、あー、ぶくぶくぶく……」
巨大タコに捕まった金元 ななな(かねもと・ななな)が水の中に引き摺りこまれた。
彼女を助けようと思った若者達や、通りかかった女の子達も沢山、タコやイカの足に絡め取れられ、川の中に連れて行かれてしまっている。
「ははは……しょーもない」
木陰でリネン・エルフト(りねん・えるふと)は軽く笑みを浮かべながら騒動を見ていた。
捕えられているのはいずれも契約者で、大事には至らないことが明白なので、自分が助けに行く必要もないだろうと、思っていた。
……そんな彼女の元に。
「……え!?」
木の裏側から、タコの足が現れた。
「ちょ、ちょっと……えーーーーーーー!?」
長い足に絡めとられ、リネンは水の中へと引っ張り込まれてしまった。
「ま、待って、ちょっとまってぇぇーーー!」
叫んでも待ってくれるわけもなく。
リネンは川の家で購入したタンキニの水着姿だった。水遊びを楽しむ為に、武器はペガサスと共に、川原に置いてきてしまっている。
「ち、力づ……あ、あはははは、ぶ、ぶくぶくぶく……」
うねうね動くタコの足がくすぐったく力が入らず、更に水の中と空中を出たり入ったりという悪条件。一切手出しが出来ない状態だった。
「ああ、ごめん。笑って見ててごめんー。フリューネ! 助けて……!」
川の家で買い物をしているはずのフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)を、リネンは大声で呼ぶ。
「わ! 大きなお魚さんがいっぱい!」
駆け付けた黒崎 麗(くろさき・れい)が目を丸くして驚きの声をあげる。
タコだけではない。巨大魚がびちびち跳ねているのだ。
「なんで突然巨大生物が!? っていうか全部海の生き物じゃん!」
黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)が眉を顰める。
「なんとかして倒さないと危ないです!」
麗は魔法を使おうかどうか迷う。
捕まっている人を巻き込まないようにしないと、と。
「あ、、深く考えてる場合じゃないな。倒すしかない!」
遊びに来ただけなので、竜斗は武器を持ってきていなかった。
持っているのは、サバイバルナイフ1本だけ。
その、ナイフに手を伸ばした時。
「……きゃあ!」
共に駆け付けていた黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)が悲鳴を上げた。
「あ! お母さん! ……きゃ!」
続いて、麗も悲鳴を上げる。
地中から近づいていたタコの足が、2人を捕らえたのだ。
「ユリナ様と麗ちゃん!」
水が怖くて少し離れた位置にいた、御劒 史織(みつるぎ・しおり)が手を伸ばすが、2人は川へと引きずり込まれてしまった。
びちっ
ばちっ
大きな魚が跳ねた。
サメサイズの、サケだった。
「オレの女どもに手を出すんじゃねえ!」
川の家から、現場に駆け付けたのは吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)。若葉分校の番長だ。
彼の脳内ではパーティに集まった女の子達は全員自分のファンの女の子なのだ。
巨大魚にアレコレされて可愛い悲鳴を上げている自分の女の子達を放っておくことなど出来ない!
「よし、優子、オレらの(愛の)力を巨大魚たちに見せてやろうぜ!」
イングリットに止められ、うずうず事態を見守っていた神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)に言うと、優子は不敵な笑みを浮かべ。
「そうだな。これこそ、実戦調理実習!」
優子はロイヤルガードの制服を脱ぎ捨てて、再び鮪包丁を鞘から抜き放つ。
「何? そんな小さな獲物で挑むのかよ」
竜司が優子の肩に手を置く。
褌一丁。その他装備しているのは血煙爪だけという姿で凛々しく言い放つ!
「優子、オレがおまえの包丁になってやる。このイケメン包丁がお前には指一本も触れさせやしねえぜ!」
そうして、巨大魚に向かって竜司は駆けていく。
「まて竜司、魚に指はないぞ! おまえが包丁なら、私は料理人だ。巧みなお前捌きで、活造りにしてくれる!」
……とかなんとか叫びながら、優子も竜司と共に巨大魚へ向かっていく。
「確かに、これは放っておけないね! 行こう、リコ!」
到着した代王の高根沢 理子(たかねざわ・りこ)に付き添っていたロイヤルガードの小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、事態を知ると川原へと駆けだした。
「美味しい料理を作るためにも、パーティを楽しむためにも! 成敗しないとねっ♪」
正装していた理子も、着物を脱ぎ放って、剣を手に美羽の後を追う。
「ちょうどいいわ。彼方、あなたも来なさい」
理子達に続いて到着を果たした皇 彼方(はなぶさ・かなた)を、祥子・リーブラ(さちこ・りーぶら)が引っ張った。
「え? ええっ!? なんだアレは……!」
川でびちびち跳ねている巨大な海魚を見て、彼方は唖然とした。
訳の分からないまま、祥子に引っ張られていく。
「ティセラ、ごめん。ビックディッパー貸して! あとテティスはコーラルリーフ出して彼方に渡して!」
祥子は恋人のティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)から光条兵器を借りて、彼方の恋人のテティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)の武器は、彼方に持たせて巨大魚へ挑む。
「やい、イカタコ野郎! ギッタギタにしてやるぜ!」
竜司の【警告】に、言葉の理解は出来ずとも、海魚達は本能で怯む。
「う、ぶくぶく、ぶくぶくーっ!」
その間に、なななは自力でタコの腕から逃れた。上着は脱げてしまい中に着ていた水着姿になっていた。
「けほっ、けほっ、ううっ。ひどいよー……」
タコの吸盤により体中を赤く染め、なななは半泣き顔だった。
「俺の女を傷めつけやがったなー! おらおらー!」
「はあっ!」
竜司が轟雷閃を放ち、優子が鮪包丁を一閃。
タコの頭を落そうとするが、まな板の上で押さえている時とは違い、そう簡単にはいかない。
「固定させることが出来れば、わたくしの技も……!」
27歳の姿に変貌した、イングリットの技も完璧には決まらない。
びちゃん!
巨大魚が跳ね、契約者達を川原へと弾き飛ばす。
「よし、次はこっちだ、イケメン包丁!」
「いくぜェ! おらおらァ!」
竜司が血煙爪で、轟雷閃。ショックを受けた巨大魚に優子が入刀!
二人の初めての共同作業だ。
「優子お姉様! イングリット! 助太刀するわよ!」
ビキニの水着に着替えた桜月 舞香(さくらづき・まいか)が、駆けてきた。
「まいちゃん、がんばってー!」
桜月 綾乃(さくらづき・あやの)は、半そでブラウスにミニスカートといった姿で、川の家で購入したメガホンとボンボンを手に応援している。
「綾乃はそれ以上近づいちゃだめよ……っ!」
言いながら、舞香は飛び跳ねた魚に蹴りを繰り出す。
「優子お姉様!」
蹴られた巨大魚は優子達の方へと飛ぶ。
「はあっ」
「くぉりゃー!」
優子と竜司の渾身の入刀が巨大魚に決まり、頭と尾が落された。
「お姉様、新鮮なうちに早く調理を! こっちはあたしたちに任せて!」
「よし、解体したらすぐに戻る。それまで持ちこたえてくれ……っ」
優子は巨大魚やタコを名残惜しそうに見ている。
「なんだか倒すなと言われているような気もするけど……わかりました! 任せてください」
舞香はそう言って、優子を送り出すとタコに向かっていく。
「それにしてもイングリット、凄い体型ね」
イングリットを間近で見て、舞香は肢体の美しさに感心した。
とはいえ、なりたい体型だとは思わないのだけれど。
太ってはいないが筋肉が発達していて、百合園の学校指定水着を着ていても分かるほど、割れた腹筋が浮き出ている。
顔と胸さえ見なければ、どう見ても痩身の成人男性だ。
「助走をつけて、打ち込めば……! はっ!」
川原から走り込んで、イングリットは拳をタコの顔に打ち込もうとする。
その前に、タコは3本の足を空中にうねらせて、イングリットの攻撃を緩和してしまう。
「きゃっ、まいちゃん……!」
「そうはいかないわよっ!」
1本の足が、綾乃の方に伸びていた。
舞香がタコの足を踏みつけると、すぐにタコは足を水の中へとひっこめる。
「大丈夫だから、見てて」
「う、うん。がんばれー! ふれー、ふれー! まいちゃん。大人のイングリットちゃんも頑張って〜っ!
タコ捕まえてきたらたこ焼き作ってあげるからー!」
綾乃は大声で皆を応援する。
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