リアクション
* 火を焚いて、持参した食料で、ライゼとルゥが簡単な夕飯を作った。 「垂はいいからっ。垂はいいからっ」 「あのな……二回も言わなくていいからさ……」 「さあ皆さん。できましたよ」 夕飯を食べる間は、皆無口だった。 深夜の内に出たので疲れもあったし、どの辺りかもわからない森に迷い込んでしまった不安もある。 一通り食事を終えると、 「では、ユウとルイスが交代で見張りをするであります!」 マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)がびしっと指示を出した。 「……ええ。……そうですね」 「……」 「騎士ルイス。どうしたであります返事がないでありますぞ!」 「いえ、服従致しますよ。騎凛殿の命であれば」 「ルイスさん……私と行くのは、いやですか? 私は、ルイスさんと行けることは、嬉しく思いますよ」 ルイスは少し間を置いて、 「教官の上に淑女とあれば、貴女に逆らえる理由はありませんよ。忌々しいことに僕は騎士ですから」 肩を竦めると、ランスを持ち直し、闇の方へ歩いていった。 「……」 「では、自分はあちらの方で見張ることにしますので」 ユウも、盾とランスをしっかり持つと、ゆっくりこの場を去った。 「……。さあ、寝ようか? 疲れをとって、明日は近辺の村を探さないとな。お風呂にも入りたいし」 ライゼを、馬車の方にやる朝霧。「騎凛教官。明日はまた、早いだろ」 「ルゥ。ボク達も行こうか。おーいユウ。見張りは、ボクも代わるからね!」 「ルゥはユウにくっついてます」 「あっ。なんだよっ、待ってってば」 「あとで代わってくださいね。ルゥは、ユウと一緒に寝ますから」 「そ、そんなぁ。……」 三厳らのやり取りを、クスっと見ていたサクラ。 真剣な面持ちで、騎凛に向き直り、 「主が失礼を致しました。……あれで、教官を尊敬しているんです。 今回の旅でも色々教わりたいと、自分から護衛を志願しています」 サクラはそう言って主ルイスの性格を思い、どうしてああ捻くれているのか……とため息をついた。 「ルイスさん……」 マリーとカナリーは騎凛を見た。 「カナリー、新たなライバル出現かも知れませぬぞ」「……。ええっ??」 * しばらくすると、ユウとルイスに代わって、二人を気遣う三厳、サクラと、夜にはとことん強いマリーが見張りに着いた。 「三厳、大丈夫ですか?」 「うん。今はボクがユウを、……皆のことを守るから。安心して」 ユウとルイスは、火を焚いた辺りで、うつらうつらと眠る。 馬車の中では…… ライゼ、ルゥ、カナリーはすでにぐっすり眠り込んでいるようだ。 疲れてはいるんだけど、何となく眠れない朝霧。それに騎凛も。 「……朝霧さん?」 「……ああ。起きてるぞ。 ……。 そうだ。騎凛教官とアンテロウム副官との出会いや、契約したきっかけって何なんだ?」 「きっかけは……何となく幼なじみに似てて。出会いは…… ……」 「(ほ、本当か??) あれ騎凛教官? ……寝たのか?」 「起きてます」 「それからさあ、騎凛教官の話を聞いて思ったんだけど、パートナー契約が解約されることってあるのかな? また、事故ではなく、寿命でパートナーを失った場合は、障害は発生するんだろうか? ……正直なところ、人間の寿命なんてわずかなものだぜ?」 「……そうですね。……儚いものですよね、…………」 「あ、……寝たか」 「そのときはそのとき。今は今を大切にして、楽しく過ごしていければと思うよ」 ライゼの声だ。暗がりで、表情は見えないけど…… 「ライゼ。……。寝言か?」 「起きてます」「起きてる」 騎凛とライゼが同時に言う。 「……」 ルゥが、皆に気付かれないように、すっと馬車を抜け出す。 「ユウ」 「……どうしたのです? やっぱりしがみつきながらじゃないと寝れませんか」 「……(しがみつきながら、寝る……しがみつきながら寝る……??)」 そっと薄目あけるルイス。 「……何だ。皆起きてるんだね……」 馬車から覗いて、カナリーが呟いた。 |
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