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リアクション
・第三層
第二ブロック第三層を、司城一行は駆けている。
転送後しばらくPASDメンバーはまとまってアーク内を進んでいたが、第二層で戦闘が始まってから徐々に分散していった。
そして第三層。
降りた瞬間から、機甲化兵・改が待ち構えていた。
「避ける事は出来そうにありませんね」
夜住 彩蓮(やずみ・さいれん)が呟く。前に訪れた際のマップデータを確認しながら、中央制御室までのルート取りをしたが、一切戦わずに済むルートはなさそうだった。
光学迷彩とブラックコートで姿を隠していたが、敵のセンサーは彼女達を既に捉えていた。
「道を作ります。司城先生、リヴァルトさん達はこのまま奥へ!」
彼女の合図と同時に、パートナーのデュランダル・ウォルボルフ(でゅらんだる・うぉるぼるふ)が武者人形を展開し、撹乱を図る。敵の攻撃がそちらに向いた瞬間、処刑人の剣に轟雷閃を纏わせ、奇襲を仕掛けた。
敵の排除対象がデュランダルに移る。が、これもまた敵の陽動だ。時間を稼いでいる間に、中央制御室へ向かう司城達は機甲化兵・改相手に時間を奪われる事なく先を目指す。
機甲化兵・改の一体がデュランダルに反撃しようとする。彼による腕部の関節を狙った一撃はヒットしたが、まだ破壊するには至らない。
デュランダルの方を機甲化兵・改が向いた瞬間、人工機晶石を使用してのライトニングブラストを彩蓮が繰り出す。
攻撃はそれだけにとどまらない。さらに追い討ちをかけるように、ライトニングウェポンによって電気を帯びている大鎌で敵の腕部を斬り落とす。
もう、力を出し惜しみする必要はなかった。敵にも完全に気付かれた今、彩蓮もデュランダルも光学迷彩を解き、機甲化兵・改に立ち向かう。
「――――!」
敵の一体から、レーザーのようなものが飛んでくる。武者人形がそれの盾になり、攻撃を防いだ。
敵は二体。しかもこれまでの機甲化兵より手強い相手だ。倒すのは容易ではない。
ならば、
(攻撃手段を封じるまで!)
レーザーの発射口に向け、彩蓮がライトニングブラストによる電撃を発射する。それが当たるかどうかを目視することもなく、次の瞬間には一歩踏み込んで間合いを詰めていた。大鎌を振りかざし、さらに発射口をへと一撃を加える。
もう一体の相手をしているデュランダルが、封印解凍を行う。強化された状態で狙うは、敵の両脚だ。
轟雷閃を放ち、脚部の動きを鈍らせる。その上で、続けざまに繰り出したのはアルティマ・トゥーレだ。冷気によって鋭さを増した剣で機甲化兵を斬る。
だが、他よりも弱い関節部とはいえ、そう簡単に斬り崩せるものではない。
ならば、同じ事を繰り返せばいい。同じ箇所にさらに轟雷閃を打ち込み、少しずつ削り取っていく。あとは弱ったタイミングで剣を思いっきり振りかざし、アルティマ・トゥーレでもって薙ぎ払う。
脚を失い、バランスを崩して倒れた近接型の機甲化兵に、それ以上侵入者を止める手立ては残されていなかった。
そうなると、問題は射程の長い武器を持っている方だ。
レーザーの発射口は封じた。だが、彩蓮の眼前には両腕に内臓された別の銃口がある。実弾の弾幕を鎌で弾きながらも、容易に近づくのは難しい。
ならば、とすぐにライトニングブラストで銃口を狙う。同時に両腕を狙う事は出来ず、片方だけを封じる事に成功する。
が、もう片方がある以上、距離を詰めるのが不利である状況は変わらない。
――彼女が一人ならば。
次の瞬間、一体を封じたデュランダルが銃口に剣を突き立て、轟雷閃を放つ。中に強力な電撃を流され内側から敵の腕が爆ぜた。
二体一。しかも、敵の攻撃手段は一つを残して破壊した。ここまで来て、負ける道理はもはや彼女達にはない。
彼女達が戦っている間にも、先を行く者達の前には、次々と機甲化兵達が現れる。
「雷の閃きよ!」
立ち塞がる敵に、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)が雷術を放つ。
「ここは抑えるわ! 今のうちに!」
ブライトグラディウスを構え、機甲化兵・改に向き直るアリア。
「こんなヤツら相手に時間を取られる必要はない。行け!」
橘 恭司(たちばな・きょうじ)もまた、ここで敵を食い止めるために、武器を構える。栄光の刀と女王のソードブレーカーだ。
敵の数は三体。近接型が二、銃撃型が一だ。
「腕と一体になっているのか。ならば――」
恭司が駆け出した。放っておくと厄介そうな銃撃型に向かって。
銃口は既に恭司に向けられている。懐に飛び込むのが先か、銃口が火を噴くのが先か。 その時、彼の眼前で閃くものがあった。
アリアが雷術を放ち、銃撃型の動きを止めたのだ。ほんの一瞬だけの間ではあるが、それが一つの突破口になった。
対し、アリアは雷術を放つと同時に、対峙する槍を手にした機甲化兵に向けて、轟雷閃を繰り出す。狙うは弱点である関節だ。敵を無力化するべく、武器を持つ腕部を狙って。
敵の腕を一閃するが、それ一発で腕を落とすには至らない。が、確実に効いているのは見て取れた。
が、敵は一体だけではない。もう一体の近接型のセンサーが彼女の姿を捉えている。手に持った大剣が、彼女に向かって振り下ろされた。
「……っ!!」
注意を払ってはいたため、直撃する事はなかった。とはいえ、このまま一人で二体相手にするのは分が悪い。しかも、武器より怖いのは、直接的が殴ったりしてくる事である。装甲が頑丈である以上、それを敵が生かしてきた時の方が威力が上のように、彼女には思えたのだ。
腕と脚を無力化してしまえば、そういった攻撃の危険をなくす事が出来る。
二体の攻撃を避けながら、雷術と轟雷閃を組み合わせながら反撃をする。だが、回避しながらの攻撃では、有効打を与えるのが難しい。
「……これ効くかしら?」
アリアが状況打破のため、これまでとは異なる手段を使う。
(敵がカメラも使って私を認識しているとしたら……)
ソートグラフィー。敵の視覚センサーに向かって、自分の姿を誤認させようと試みる。そして、その目論見は成功した。
機甲化兵・改二体の挙動がおかしくなる。索敵の時は音や体温のようなものをセンサーで認識し、発見した後はカメラに映る視覚情報も合わせて敵を認識しているらしい事がPASDの調べで分かっていた。
二つの情報が一致しないため、機甲化兵のAIが混乱し始めたようだった。そのため、二体の機甲化兵が互いに「敵」だと認識し、戦い始める。
(よし、上手くいったわ)
同士討ちにより、機甲化兵二体の武器が失われた。さらに、互いの攻撃で装甲にもダメージを負う。
その隙をついて、アリアが雷電属性攻撃を浴びせる。関節部への猛襲は、敵の腕部を麻痺させるには十分だった。
一方、恭司の方は銃撃型の懐に飛び込む事に成功していた。
ソードブレイカーで腕と一体化している銃を叩き折ろうとする。しかし、装甲と一体化しているために、かなり頑丈だった。
(ならば――)
銃口を攻撃し、照準を意図的にずらす。一歩間違えると仲間に当たる恐れがあるが、そんなヘマはしないように、的確に行う。
それによって、近接型二体へと攻撃をさせ、銃撃型を「敵」と認識させる事も狙いだ。自分から注意がそれた機甲化兵は、隙だらけとなる。
あとは轟雷閃を銃弾が発射される前に銃口の中に叩き込み武器を無力化するだけだ。ボンッと音を立てて敵の腕から煙が上がる。
「終わりにしようか」
次いで脚部へも轟雷閃を繰り出し、敵のバランスを崩す。ぐらついたところで、恭司は跳躍し、敵の胸部に向かって蹴りを繰り出した。敵は一度倒れると、なかなか起き上がれなそうに見えた。だからこそ、崩したところにとどめを刺そうとする。
胸部装甲の継ぎ目に栄光の刀を突き立て、さらに轟雷閃を浴びせる。それによって内側から装甲を削ぎ、最後は体内の人工機晶石を直接砕いた。
さらに、同フロアの別の場所では。
「一体でも多く確実倒していこう、マティエ」
曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)とマティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)もまた、機甲化兵・改の相手をしていた。
光学迷彩を使ってこのブロックまで入っていたが、全能の書によって侵入は看破されており、さらに機甲化兵のセンサーに引っ掛かれば姿が見えなくても関係がない事があり、ほとんど意味をなしていなかった。
あるとすれば、奇襲をしかける最初の段階だけだ。
幸いにも彼らが引き受けた機甲化兵は、現在一体。少し離れた場所には他の機体も見えるが、そちらは一体を始末してからだ。
「前と後ろ、挟み込んでいきます」
前方から瑠樹が堂々と轟雷閃を放とうとする。当然、敵の攻撃対象も彼となる。その間に光学迷彩を使い、かつ静かにマティエが敵の背後に回りこむ。
敵の攻撃が瑠樹に繰り出された瞬間、マティエが轟雷閃を敵の脚部に放つ。続けざまに、二発、三発と繰り出した後は、後方に飛びのく。この時も光学迷彩を使用しているが、敵にはもう認識されている。
そちらへ攻撃対象が移ろうとした瞬間に、今度は瑠樹が同じように轟雷閃を放つ。もちろん、出来る限り連続でだ。
彼の攻撃によって、機甲化兵の片脚が崩れた。バランスを失った今が、絶好のチャンスだった。
「マティエ!」
一度敵の間合いから離れたマティエが瑠樹の合図で駆けてくる。二人が同時に胸部へと攻撃を仕掛け、胸部装甲に穴を開ける。
そして、体内の人工機晶石を破壊した。
「まずは一体」
続いて、他の機甲化兵の機体に目を移す。銃撃型には注意が必要だが、同じやり方で近接型の敵はなんとか倒せそうだった。
互いに驚きの歌を歌い、精神力を回復する。連続した技の使用は、消耗も早くなるのだ。
回復したところで、次の機甲化兵・改に向かっていく。まだこのフロア全体を考えれば、相当な数の敵がいるのは確実なのだ。
それでいて、このアークで待ち構えているのは、第二層で見た白い髪で紅眼の女のような得体の知れない存在である。
それならば、出来る限り引き受け、先へ行く者を支援したいというものだ。
続く二体目に向かい、彼らは飛び込んでいった。
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