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リアクション
★ ★ ★
「第十一試合に移ります。玉藻 前(たまもの・まえ)選手対、火村 加夜(ひむら・かや)選手です」
「頑張れ、玉ちゃん……」
樹月刀真のコートの中から、漆髪月夜が応援した。実は、彼女はまだ玉藻前が魔法を使うところを見たことがない。そのため、期待で目をキラキラと輝かせている。
「任せておくのだよ」
玉藻前が、やる気満々で絶対暗黒領域を展開させた。黒い妖気が、彼女の下半身をつつみ込むようにわきあがる。その中から、ひょこんと、九本の炎の尾が広がった。
「なんだか凄いですね。でも、負けません。空からの使者よ、敵のすべてを静かなる刃で凍てつかせよ!」
火村加夜が呪文を唱えたが術が発動しない、魔法の準備ができていなかったのだ。
「我が一尾より炎が出(いずる)!」
玉藻前の声と共に、右側の尾の一本がひゅるんとのびて、火村加夜に襲いかかった。
「はうっ!」
焦った火村加夜が防御を怠って武舞台の上から吹っ飛ばされた。
「いずれまた……」
ドボンと落ちた火村加夜の蒼空学園制服がめくれあがり、下に着た学校指定水着のお尻が顕わになる。
「勝者、玉藻前選手!」
★ ★ ★
「第十二試合、トゥプシマティ・オムニシエンス(とぅぷしまてぃ・おむにしえんす)選手対、大神 御嶽(おおがみ・うたき)選手です」
「登場ですぅ」
歩くコタツの上に乗って、トゥプシマティ・オムニシエンスが武舞台に移動していった。
「また、面妖な登場のしかたですね。でも、惑わされませんよ」
ちょっとボーとしたトゥプシマティ・オムニシエンスの見た目に欺されないようにと、大神御嶽が気を引き締めた。
「我、求むるは陸(りく)なる闇。活殺にあっては、滅。幽明をもって、因果を断つ!」
大神御嶽が、手に持った呪符をすっと身体の前で振り下ろした。同時に、濃い闇の塊が生まれ、ふいに消えた。おやと誰もが思った次の瞬間、トゥプシマティ・オムニシエンスの背後に現れた闇の塊が、もの凄い勢いでバリアに激突した。
「わっ、驚いたですぅ。もう、私、堪忍袋の緒が切れました! ですぅ」
びくっとしたトゥプシマティ・オムニシエンスが、思わずコタツから落ちそうになる。
「雷鳴に咲く、輝きの華!」
トゥプシマティ・オムニシエンスが、合わせた手を前に突き出した。パチパチと花火のような閃光を撒き散らしながら、雷光が迸った。だが、大神御嶽の左側に吹きつけるように命中するも、バリアに防がれる。
「まだいけますね。我、求むるは炎の舞。謡(うた)いにあっては、熾(おき)。炎風をもって、扇となす。炎扇(えんせん)!」
大神御嶽が、手に持った呪符を右から左へ振った。扇状に広がった炎が、トゥプシマティ・オムニシエンスの左側から水平になめたが、防がれてしまう。
「今度は、反対側からですぅ!」
トゥプシマティ・オムニシエンスが、逆方向から雷術を見舞うが、こちらもバリアに弾かれてしまった。
「範囲魔法で一帯を攻撃できれば楽なんですがねえ……」
思わず大神御嶽がつぶやく。
「我、求むるは聖なる式。天にあっては、明(めい)。炎をもって、悪しきを止める!」
今度は、大神御嶽が数枚の呪符をばらまいて真言を唱えた。宙に舞った呪符が炎の小鳥の姿となり、群れを成してトゥプシマティ・オムニシエンスの下からむかう。
「だったら、こちらは上からですぅ」
トゥプシマティ・オムニシエンスが雷術を駆使して、上から攻撃をしかけた。
雷光の花弁がバリアで散ると同時に、炎の小鳥がコタツごとトゥプシマティ・オムニシエンスを宙に舞いあげた。
「はうですぅ」
スライムに落ちてすっぽんぽんになったトゥプシマティ・オムニシエンスの上に、コタツがすぽんと落ちてくる。そのまま、こたつむりの格好で運ばれていって、トゥプシマティ・オムニシエンスが救護室にぺっされた。
「勝者、大神御嶽選手!」
★ ★ ★
「第十三試合、悠久ノ カナタ(とわの・かなた)選手対、エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)選手です」
「ふふふ、美味しそうなロリババですわね。わたくしが勝ったら、カナタちゃんの血をいただいてもよろしいかしら」
軽く舌なめずりをして、エレナ・フェンリルが悠久ノカナタに訊ねた。
「スカーレットカナタ、驀進! そんな悪いこと言う子はお仕置きだぞ♪」(V)
広げた手を目のあたりで横にかざしながら悠久ノカナタが答える。
思わず、見ていた緋桜ケイが軽く額を押さえた。
「まあ、あれなら大丈夫だよね。エレナは、あたしらの中では一番魔法に長けてるし。よゆーよゆー」
葉月 エリィ(はづき・えりぃ)が、頑張れーとエレナ・フェンリルに声援を送った。
「さあ、闇に呑まれなさい」
エレナ・フェンリルが、闇術で作りだした闇を背後から悠久ノカナタにぶつけようとしたが、バリアに弾かれた。
「スカーレット・ファイア!」
対する悠久ノカナタも同様に後ろから火術をあてるが、これもまた防がれてしまった。
「でしたら、こちらからですわ」
「負けぬ!」
間髪入れずに、二人が上と下から相手を狙ったが、バリアによって退けられてしまった。
「次!」
だんだん本気になってきた二人が、間をおかずに攻撃する。エレナ・フェンリルの頭上で炎の花が開き、悠久ノカナタの右側が闇につつまれた。
「いいかげんに……」
力を入れすぎで少し息を切らした二人が、真正面から今までで最大級の魔法を放った。
正面からぶちあたった闇と火球が、二人の全身をつつんで一瞬その姿を見えなくする。だが、その直後、弾かれた闇は後ろへと流れて消えていき、炎がエレナ・フェンリルを後ろへと吹き飛ばしていた。
「くっ、油断しましたわ」
ポチャンとスライムに呑まれたエレナ・フェンリルが、黒のセクシーな水着姿になる。
「あら!? エレナでも負けるのかぁ。イコンの訓練ばかりだし、やっぱりあたしら自身の訓練もしていかないとだめなのかな」
その前に、自身の魔法修行が先の葉月エリィであった。
「勝者、悠久ノカナタ選手!」
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