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リアクション
★ ★ ★
「第三試合、小冊子 十二星華プロファイル(しょうさっし・じゅうにせいかぷろふぁいる)選手対ビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)選手」
「今度は、せーかの番か。ラスティが勝ったんだ、頑張れよー」
椎堂紗月が、パートナーである小冊子十二星華プロファイルを応援する。
「もちろん、あの方のような魔道書に近づくためにも、ここでわたくしの力を見せつけてやりますわ!」
意気揚々と、小冊子十二星華プロファイルが武舞台への橋を渡っていく。
「わーい、お祭りなのだー」
すでに武舞台に渡っているビュリ・ピュリティアは、ピョンピョンと元気に跳びはねている。なんだかすでに危なっかしい。
「では参りますわ。十二の星々よ――我は願い祈りこの身を捧げ汝等の花嫁となろう―我が望むはその力、煌き美しきその華を咲かせ彼の者たちに安寧たる永久の眠りを与えたまえ――」
魔道書を広げた小冊子十二星華プロファイルが、禁じられた言葉を諳んじ始めた。開かれたページの上におかれたエリクシル原石が輝きを放ち、魔道書の上にヘキサグラムを描きだす。
「落華微塵――スターダスト!!」
小冊子十二星華プロファイルの言葉と共に、彼女の足許に十二の光の花弁が現れて広がった。次の瞬間、散るようにバラバラになった光の花弁が彼女の眼前で再び集まり、光の流星となって正面からビュリ・ピュリティアに襲いかかった。だが、バリアに弾かれて光の花弁が舞い散りながら消滅する。
「いっけえ!」
巨大な火球を頭上に作りだしていたビュリ・ピュリティアが、満を持してそれを投げつけた。相変わらず、加減という物を知らない。
渦を巻いた彗星のような火球が、小冊子十二星華プロファイルの右側から彼女をつつみ込んだ。一瞬、飛び散った炎が彼女の姿をすっぽりとつつみ込む。だが、すぐに散り散りに消えた炎の中から、小冊子十二星華プロファイルの無事な姿が現れた。
「や、やりますわね……。まだまだですわ」
小冊子十二星華プロファイルが、今一度呪文の詠唱に入る。再び、彼女の足許に大輪の光の華が咲き開いた。
「今度は冷え冷えなのだー!」
ビュリ・ピュリティアの砲は、今度は巨大な氷塊を空中に作りだしている。
「いっけー!!」
同時に光の華と氷塊が互いの間を飛び交った。
流星が、右側からビュリ・ピュリティアにぶつかった。パチパチと花火がはじけるように光が飛び散り、ビュリ・ピュリティアが武舞台から吹っ飛ばされる。
ビュリ・ピュリティアが放った氷塊は、狙いを外したのか、小冊子十二星華プロファイルのすぐ横を通りすぎていった。
「この程度ですの……」
小冊子十二星華プロファイルが勝ちを確信したそのときだった。外れたと思った氷塊が、あろうことか戻ってきて後ろから小冊子十二星華プロファイルに激突した。
「そんな……まだ……足りませんの?」
武舞台から弾き飛ばされて、小冊子十二星華プロファイルもスライムの海に落ちていく。
シャウラロリィタが脱げてしまったが、幸いイルミンスール魔法学校指定水着を下に着ていたのですっぽんぽんはまぬがれている。エリザベート・ワルプルギスの小人さんたちはいい仕事をしたようだ。
対照的に、自由奔放なビュリ・ピュリティアの方は、容赦なくすっぽんぽんだった。
「はははははははは、女性のためだけの救世主、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)、救急発進! さあ、エロは許しません、これをどうぞ!」
バルコニーの手摺りの上に立って名乗りをあげると、クロセル・ラインツァートがビュリ・ピュリティアにむかって毛布を投げかけた。スライムとの戦いでは毛布を投げ続けた彼にとって、毛布投げには一分の隙もない。
クルクルと回転しながら横に広がった毛布は、狙い違わずふわりとぷりけつのビュリ・ピュリティアの上に舞い落ちた。
「よけいなことを……いてっ」
思わずつぶやいた樹月刀真が、コートの中で漆髪月夜に軽く頭突きを食らわされたらしく、小さく呻いた。
「まったく、せーかの奴」
困ったものだと、椎堂紗月が救護室にむかった。
「相討ちで、両者敗退です。この場合は、次回戦は空席となり、相手の選手は自動的に不戦勝となります」
救護室にうねうねと運ばれていくビュリ・ピュリティアと小冊子十二星華プロファイルを見送りながらシャレード・ムーンが言った。
★ ★ ★
「第四試合、神代明日香選手対、ウルリーケ・クアドラングル(うるりーけ・くあどらんぐる)選手です」
「エリザベートちゃんおつきメイド、神代明日香ですぅ」
空飛ぶ魔法↑↑を使い、神代明日香が、ステップを踏むようにして空中を渡っていく。ふわりと武舞台の上に舞い降りると、自作の魔法のメイド服のスカートをちょっとつまんで優雅に御挨拶をした。
「やっほー、エリザベートちゃん見てますですぅ? 頑張るですぅ!」
放送席にエリザベート・ワルプルギスの姿を見つけて、神代明日香が元気に手を振って声を張りあげた。
「ふっ、元気そうじゃのう。勝てば血が余りまくっている若い者から思う存分吸血できるんじゃろうなあ。ふふふ、じゅる、今から楽しみじゃて」
つかつかと尊大な態度で武舞台へと渡ったウルリーケ・クアドラングルが、じゅるりとあふれるよだれを手の甲で拭った。
「わらわの名はウルリーケ。一人残らずぶっ飛ばして血を吸ってくれるわ!」
「エリザベートちゃーん、見てるですぅー?」
胸をはって名乗るウルリーケ・クアドラングルではあったが、神代明日香はそれよりエリザベート・ワルプルギスに手を振る方で忙しかった。
「こら、人の台詞ぐらいちゃんと聞かぬか。よろしい、痛い目に遭わせてやるのじゃ。古の盟約より氷の……ええい、詠唱など面倒じゃ! 凍りつくがいい!」
馬鹿らしくてまともに相手などしていられるかとばかりに、ウルリーケ・クアドラングルが、真正面から冷気の奔流を神代明日香にむかって放った。だが、あっけなくバリアに弾かれる。
「なんだ、なぜ効かぬ!?」
ちょっと呆然としてウルリーケ・クアドラングルが叫んだ。ちゃんと試合前に説明はあったはずだが、どうやらちゃんと聞いていなかったらしい。
「きゃっ、いつの間に……。見てないときに攻撃してくるなんて卑怯です〜! 許さないですぅ。いっけー、赤いハートの魔弾ですぅ!」
神代明日香が、魔道銃に火術で弾丸を込めて撃ち放った。赤く燃えるハートの弾丸が複雑な軌跡を描いてウルリーケ・クアドラングルの左側から襲いかかった。だが、こちらもバリアにぶちあたって、あっけなくハートの弾丸が砕け散る。
「はっはっはっ、そんなへなちょこ弾があたるものか。そなたの脆弱なバリアなど、わらわの魔法でぶち破ってやるのじゃ!」
だから、ルールを理解してないだろうと会場のあちこちから声があがったが、ウルリーケ・クアドラングルは聞く耳持っていなかった。真正面から再び氷術をぶつけてくる。当然、また跳ね返された。
「いっけー、黄色いクラブの弾丸ですぅ!」
今度は雷術の弾丸が頭上からウルリーケ・クアドラングルが襲ったが、これもまた弾かれた。
「今度こそじゃ!」
「いっけー、青いダイヤの魔弾ですぅ!」
馬鹿正直に前面への力押しを続けるウルリーケ・クアドラングルに、神代明日香が氷術の魔弾を後ろに回り込ませてぶつけた。だが、これも防がれる。
「次こそ、わらわの最大の魔力をぶつけてやるぞ!」
「いっけー、輝くスペードの魔弾ですぅ!」
今度は、正面から二人が攻撃をぶつけ合った。当然のようにウルリーケ・クアドラングルの攻撃はまたも弾き返されたが、神代明日香の攻撃は今度はしっかりと相手の身体を捉えた。等身大に巨大化したスペード型の光が、大きな壁となってそのままウルリーケ・クアドラングルを弾き飛ばした。
「ぐわああああああっ!?」
一瞬何が起こったのか分からないうちに、ウルリーケ・クアドラングルが下に落ちた。
「マジックスライムじゃと? なんじゃそれは、ぎゃああああああああああああああ!?」
下にマジックスライムが蠢いていたことまで気づかないほど周囲を見ていなかったウルリーケ・クアドラングルが、両手を突きあげたまますっぽんぽんになってスライムの海に沈んでいった。
またクロセル・ラインツァートが毛布を投げようとしたが、すでにスライムの中深く沈み込んだ後だった。気を失ったまま高速で運ばれていき、救護室へぺっされた。
「さすがに、長く飲み込まれていると死にますからね」
それを見たクロセル・ラインツァートが、自身の経験を思い返しながらうなずいた。
「勝者、神代明日香選手!」
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