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リアクション
★ ★ ★
「第十四試合、エリシア・ボック選手対、坂上 来栖(さかがみ・くるす)選手です」
「あら、エリシアさんも参加していましたのね。応援していますので頑張ってくださいませ」
橋を渡っていくエリシア・ボックに対して、藍玉美海が声をかけた。
「あなた、水着着てますか?」
坂上来栖が、正面の武舞台に立ったエリシア・ボックに訊ねた。
「もちろんですわ。競泳水着は、乙女のたしなみですわ」
「じゃあ安心して落とせます。私よりちっちゃい方など、一発です」
「なんですってえ!」
早くも、舌戦から戦いが始まっている。
「いいから始めましょう」
坂上来栖が、空中に闇の剣を二振り作りだして言った。
「さあ、いきますわよ!」(V)
負けじと、エリシア・ボックが火球を生み出して正面から坂上来栖にぶつけた。同時に、坂上来栖の闇の剣も正面からエリシア・ボックに突き刺さる。
「あっ!」
二人の気合い諸共、お互いが後ろへと吹き飛ばされた。
「くっ、わたくしの負けですわ。この屈辱はいつか必ず晴らして見せますわ!」(V)
腕を突きあげながら、競泳水着になったエリシア・ボックがスライムの海に沈んでいく。
だが、すでにすっぽんぽんでスライムの海にぷっかりと浮いていた坂上来栖の耳には届いてはいなかった。
「えーっと、えーっと……おねーちゃん負けちゃいました――送信っと」
さっそく、ノーン・クリスタリアが影野 陽太(かげの・ようた)にメールで結果を報告する。
でんでろり〜ん。
さっそく返信が来た。
『メールありがとうございます。できたらエリシアを元気づけてあげてください。財布のお金は自由に使ってOKです』
そのころ、エリシア・ボックあてにも、『えっと、気を落とさずに。次回があります、きっと』というメールが届いていたのだが、意識を取り戻したエリシア・ボックがそれを見て、「駄目人間に気をつかわれると余計にムカツキますわ!」と叫ぶのはまだ少し後のことであった。
「両者相討ち!」
★ ★ ★
「第十五試合、愛海 華恋(あいかい・かれん)選手対、飛鳥 豊美(あすかの・とよみ)選手です」
「いよいよ華恋の番ね。でも、あの子そんなに強いのかしら……。まあ、下に落ちても怪我はすることはないけれど……」
ちょっと心配そうに白波 理沙(しらなみ・りさ)が見送る中、当の愛海華恋は張り切って橋を渡っていった。
「よーし、ボク頑張っちゃうからねーっ☆」
腕をぐるんぐるん振り回して、やる気満々である。
「ちょっと待ってくださいねー」
隅っこの方に行った飛鳥豊美が、何やら真新しい袋をごそごそと開けている。
「よいしょっと」
袋の中から真新しいパンツをとりだした飛鳥豊美が、いそいそとそれを穿いていった。普段は穿いてないから大丈夫少女なのだが、さすがにすっぽんぽんは恥ずかしいので、今日は特別におパンツを新調してきたらしい。
衆目の中でのおパンツ穿きましたはちょっとあざといが、これも他の魔法少女に抜きん出る作戦なのかもしれない。
「よろしくお願いしますー。今日は新しい技を用意してきたんですよー」
準備が整い、武舞台に渡った飛鳥豊美がにこやかに言った。
「最初は陽乃光鋭射、行きますよー」
日本治之矛を掲げて飛鳥豊美が言った。穂先に集まった光がぎゅいーんと大きく曲がって愛海華恋の後ろのバリアに命中する。
「よかった、火術だったらどうしようかと思っていたんだよね」
魔道書ゆえに火が怖い愛海華恋がほっと胸をなで下ろした。
遅ればせに放った氷術が、飛鳥豊美の前方で弾き返された。
「ふう、シールドが張ってあってよかったですー」
飛鳥豊美の方も、ちょっと胸をなで下ろしているという感じだ。さすがに、一撃で敗退は避けたい。
「ボクも魔法少女になりたいから、豊美さんの攻撃は参考にさせてもらうね」
「いいですよー、どんどん参考にしてください」
なんだか愛海華恋にとっては先輩になるらしいと知った飛鳥豊美が、ちょっとうっとりしながら答えた。
「じゃあ、次はこっちから行ってみますねー」
飛鳥豊美が、今度はぎゅいいーんと下から光線をあてた。
まねするように、愛海華恋が雷術で放った雷光を上から飛鳥豊美にあてる。雷光が弾けて、火花が飛鳥豊美をつつむように降り注いだ。
「わ、もう少しであたるところでしたー」
降り注ぐ雪のようなスパークを綺麗だなーと見ながら、飛鳥豊美が言った。
「華恋、頑張れー」
なんだか変にほのぼのとした戦いにちょっと安堵しながら、白波理沙が声援を送る。
「次はこっちですー」
「じゃ、ボクも下から!」
飛鳥豊美が同じように上からぎゅいいいーんと光を落とした。バリアに弾かれて、愛海華恋の身体がスポットライトを浴びたように照らしだされる。だが、飛鳥豊美の方は、下から襲いかかってきた雷撃をもろに食らって反動でスカートと髪の毛を逆立たせてよろめいた。
「負けちゃいました、残念ですー。でも、おニューのおかげで助かりましたー」
妙な安心のしかたをしながら、飛鳥豊美がスライムに飲み込まれていった。おパンツ以外はすっぽんぽんだが、ぺったんこな魔法少女としては、それはそれでステイタスである。
「勝者、愛海華恋選手!」
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