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なし

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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

リアクション

     ◆

「ふぅ……何だかとんでもない事になってるみたい。コタローさん、ふふ。頑張りましょうね。これも何かの、縁と思うし」
 そんな事を呟くのは、今しがたまでコタローと掲示板内で会話をしていたリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)その人だった。
「情報かぁ…ウォウル・クラウンに…ラナロック・ランドロック。聞いた事がある様な、聞いた事がないような……まぁいっか。とりあえず調べてみよう。あ、あと人手不足って書いてあったわね。よし――ダメもとで」
 自室のパソコンの前に座っている彼女は、そう呟くと徐に携帯を拾い上げ誰かに電話をかけ始めた。
「もしもし。そっちはどう? え? うん。大丈夫だって、もう慣れたわよ。 え? うん。そうそう。 あ、そうだ、あのね。ちょっとあんたに頼みがあんのよ」
 肩に携帯を挟み、ひたすらパソコンを叩きながらに彼女は続ける。
「それは良いから! うん、そ。 で、今からちょっと蒼空学園に向かって欲しいの。うん、事情は説明してくれると思う。 何? こっちも今手が離せないのよ! うん、よろしくね。はーい……っと、これで良し」
 言い終るや、彼女はエンターキーを二度叩く。
「へぇ、これがその人たち。ふんふん、なかなか格好良いお兄さん、ってとこね。ま、関係ないっか」
 呟きながら、再び彼女はキーボードを叩くのだ。遠く離れた彼らの為に――。


 と、場面はツァンダに戻る。
「あぁ……! クソ、あのバカ女、人使いが荒ぇんだよ……ったく」
 アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)は今パートナーからかかってきた電話を切りながら、そうぼやいていた。が、表情はそこまで嫌そうなものではなく、別段何、と言う訳でもない。そして彼は、足を進める。
「事情はわからんが蒼空学園に迎え、か。後でぜってー文句言ってやんよ、あのバカ女」
 リカインの言葉、そしてその話題の切り出し方で彼はなんとなく感じ取っていたのだろう。故に彼は、そう言いながら一度、自らの光条兵器を取り出した。
「ま、少しくらいは楽しませろよ。そしたらまぁ、文句くらいにしてやるからさ」
 にんまり笑った彼の瞳は、何処か透き通った光を放っている。



     ◆

 一方パソコン室では、聞き込みに向かっていた一行が集まってきていた。
「あぁ…駄目だったか」
 ふぅ、とため息をつきながら、孝高が開いている椅子を引いて腰を下ろす。
「しょうがないよね……それこそ目撃情報があれば警察が動いているだろうし」
 薫はどこか腑に落ちない、と言った様子で彼に向けて言葉を放つ。そうは言っているものの、彼女は幾らばかりか違和感を覚えている様だ。
「で、でも…その、おかしいですよね」
 夜舞は難しそうな表情で、しかしおどおどしながら呟く。
「何がおかしいのさ?」
「だって……確かに誰かが見ていれば、その、警察は動きますけど、それでも目撃者がいなさすぎる気がするな…って」
「…まぁ、そっか」
 薫の考えを夜舞が代わりに代弁し、そしてそれを聞いていた斎が相槌を打った。
「どちらにせよ、情報はなかったです。ごめんなさい……」
「ボクたちも頑張ったんだけどねぇ…」
 柚と三月が申し訳なさそうに雅羅へと言った。雅羅としてもそれは仕方ない、と思っているらしく、「気にしないでよ、ありがとう」と一同に返事を返していた。と、此処で新しい情報が彼らの元に飛び込んでくる。
「う! りかいんしゃんから、めーうがきたろ!」
「ん? なんだ、コタロー」
 樹がパソコンに目を向け、リカインから送られてきたメールを読む。
「お、一人こっちに増援が来るってよ。どうする?」
「わ、私迎えに行ってくるわ!」
 雅羅が勢いよく立ち上がり、そう言って部屋を飛び出して行く。
「どうしたんです? 彼女……」
「皆が頑張ってんのに私だけ何もしてないんじゃないか、って、さっきんな事を言って嘆いてたんだぜ、雅羅」
「気にし過ぎな気がしましたけどねぇ…」
「ま、良いんじゃないかなぁ? それも彼女のいいところなんだって、事でさぁ」
 幸祐の質問に答えた静麻と、苦笑を浮かべる可憐。アリスはにこにこと笑っている。と――、そこで、異変がやってきた。
 風も少ないこの日。燦々と照りつける太陽光を遮る雲もないこの日。何の雅羅飛び出して暫くの後、突然窓が一斉に揺れ出した。
「ん? ……風?」
 異変に対し、カイが眉を顰めた。
「それに――雲、出てきたのかしら。傘持ってないわよ? 私」
 渚の言葉で全員が窓を見た。見えるのは校庭。そしてそこを疾走する雅羅――が、雲はどうにも小さい。疑問にも似た違和感が一同を襲った頃には、もう遅い。
今までかたかたと揺れていた窓が、次の瞬間轟音共に揺れ始める。まるで地震の様に、微かに揺れていたそれが一変、大きな音で百合動く。
「な、何!?」
「怖いよっ! どうしたの!?」
 セルファが思わず立ち上がり、結は反対に机の陰に頭を抱えて身を隠す。
そして一同が目にしたのは――。
「………ど、ドラゴン!?」
「おいおいおいおいおい! レッサー種ったって洒落になんねぇぞ、こりゃ!」
「雅羅様が危ない! 行きましょう!」
「そうね!」
 緊張感が辺りを包み、カイ、可憐、アリスが慌てて部屋を飛び出した。
「俺たちも行った方が良いんじゃないですか?」
「そうよね!」
「わ、待ってください…!」
 真人、セルファも部屋を後にし、夜舞が二人に続き外に出た。
「雅羅ちゃんが危ないって事だよね!」
 柚は立ち上がり、残った一同に声を掛ける。
「よし、全員此処を離れるぞ! 急げ!」
 樹の叫び声により、残った一同もパソコン室を後にした。