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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

リアクション

     ◆

 一方レンは、犬養 進一(いぬかい・しんいち)トゥトゥ・アンクアメン(とぅとぅ・あんくあめん)を協力者として呼び、スーパーにいる。
「時にレン君。何故そんな恰好をしてるんだ?」
 ニヤニヤしながら進一が見つめる先、レンは執事の格好をしっかりと着用していた。と、言うよりは無理やりに着させられた、と言った方が正しかったりする。
「……聞くな。理由は聞くな」
「暑そうだ。でも格好良いぞ! 朕も着たい!」
「無理だろ。お前じゃ丈が足りん」
 進一の適切な突っ込みを物ともせず、と、言うよりは無視する形で、冷房の効いたスーパーの中をはしゃぎながら駆けずり回るトゥトゥ。
「あ、こら! そんなに走り回るな! 他のお客様に迷惑がっ!」
「レン……それは違うぞレン。俺だって負けん!」
「あぁ!? ちょ、進一! 待て!」
 トゥトゥにならって走り始める進一だったが、そこは大人。走ると言うよりは早歩きでレンの元から離れて行った。
「ふぅ……全く。それにしても、まずは何を買うか。今日のこの天気に気温だ。飲み物は必須として……誕生パーティとの事だが、そのラナロックとか言うのは一体何が好きなのやら…」
 一人ゴチる彼は、その風貌に似あわず買い物籠を腕に下げ、一人売り場を練り歩いている。
と、さっそく。
「朕のお気にいりを見つけてきた! 見つけてきた!!」
「……待て。これはパーティで使う物の買い出しだと言っただろう?」
 彼が持っている買い物籠に無造作に放り込まれたのは大量のお菓子。どうやらトゥトゥが食べたいものらしく、それもこれも可愛らしいキャラクタが箱に描かれている。
「違っ、これはみんなの為を思って買ってもらいたいのだっ!」
「皆、ねぇ……」
「そうだぞ、トゥトゥ。お前自分が食べたいだけだろう」
 言いながら現れた進一が、大きなペットボトルをたくさん持ってやってきた。
「そうだぞ。進一の様に正しい物を買ってくるんだ。お菓子はまた後で、だ」
「……ケチ」
「なっ!?」
「負けるなレン君。これはこいつの巧妙なテクニックだ」
「……ケチ」
「………」
 レンは思わず瞳を瞑り、トゥトゥの“買ってよテクニック”を堪えようと数回首を横に振った。
「どケチ! 貧困! 貧乳!」
「なっ!?」
「レン君、耐えろ、耐えるんだぁ!」
「待て、貧乳は関係ないだろう! 俺は男だから関係ないだろう!」
「じゃあシンイチ買って」
「嫌だね」
「買って」
「嫌だ」
「………呪 う よ……?」
「…………」
 トゥトゥの極め付けの一言で、進一はため息をついた。
「一個だけだぞ」
「わぁい!」
「はっ!? 今の? 今の何ねぇ!?」
 レンの驚きをあえてスルーし、二人は関係のない話を始める。と、レンは籠の中に入っている、不適切な物を発見した。
「ちょっと待て、酒は駄目だぞ進一」
「え? ナンノコトデスカレンサンボクワカラナイヨボクジャナイヨ、ハッハッハ」
 片言で弁明を始める進一だがしかし、酒を入れるのは彼しかいない。
「あ、お酒は駄目だって朕は聞いたぞシンイチ! 戻してらっしゃい!」
「……ケチ」
「お前もかっ!」
「それは朕のセリフぅー!」
「…ケチ」
「……駄目なものは駄目だ」
「……呪 う よ?……」
「それも朕のセリフぅー!」
「良いから戻してらっしゃい!」
 レンの言葉で肩を落とし、渋々元の棚に返しに行く進一。
「全く……この調子では結構時間がかかりそうだな。買い物も…」
 大きくため息をついて、レンは近くにあった味噌を手にする。
「あ、このお味噌ちょっと安いかも」
「そ、そなた……」