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スリーピングホリデー

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スリーピングホリデー

リアクション

 魔女が無事に確保されたことをネットで知ったダリル。
 ふと後ろを振り返ると、ルカルカが嬉しそうに声を上げるところだった。
「ななな!」
 どうやら、なななも目を覚ましたらしい。
 キスせずに事が解決して良かった、と、ダリルは胸を撫で下ろした。

 目賀家へ戻った大佐は、トレルの自室へ入るなり違和感を覚えた。
「何かあったのか?」
「た、たいさ!」
 普段なら自ら助けを求めようとはしない相手だったが、今のトレルには救いの女神に思えた。
 ベッドを飛び出して大佐の背後へ回るトレル。
「助けろっ」
「……は? 状況がよく飲み込めないのだが」
 首を傾げる大佐に構わず、トレルは他の三人の視線から逃げるだけだった。

「おはよ、リンネさん」
 と、博季はようやく目を覚ましたリンネへ微笑んだ。
「ん……おはよう、博季くん」
 言葉を返しながらむくりと起き上がるリンネ、小さく欠伸を漏らして彼に顔を向けた。
「それにしてもぐっすり寝てたね、リンネさん」
「あ、もうこんな時間……っ」
「昼間からリンネさんのかわいい寝顔を見れる機会は、あんまりないからさ。しっかり目に焼き付けましたよ?」
 と、茶目っぽく言う博季に、リンネは顔を赤くした。しかし、まだ眠気が残っているのか、再び欠伸を漏らしてしまう。
「リンネさん、まだ寝ぼけてます?」
「ん、うん……」
「もう……じゃあ、ちょっと目、つぶってて」
 言われたとおりに両目をつぶるリンネ。直後に唇を重ねられ、頭が覚めた。
「はは。目、覚めた?」
「そんなことされたら嫌でも覚めちゃうよっ」
 と、リンネは博季へ文句した。
 すると彼は、ちょっと真面目な顔になって言う。
「……ね、リンネさん。無理してません?」
「え?」
「だって、おやすみの日は必ず一緒に何処か出かけてるでしょ? もしかしたら、疲れてないかな……無理、してないかなって。さっき寝顔見てて、考えてたんだ」
「博季くん……」
 彼に心配してもらえることは嬉しかったけれど、確かに無理をしていたような気がして答えられない。
「ごめんね、リンネさん。いきなり変な事言って。さて、デートの続きにしましょう」
 と、博季が立ち上がった。
「ついでに晩御飯の材料買って行かないとね」
「あ、うん。そうだね」
 慌ててリンネも立ち上がり、自分が彼の上着とマフラーを着けていたことに気付く。
「これ、博季くんに返すよ。ありがとう」
「え、いいんですか? リンネさん、風邪ひかない?」
「うん、大丈夫。それに、風邪ひくなら博季くんだって同じだよ」
 と、リンネは上着を脱いで彼へ返した。受け取りながら、博季はふと提案する。
「それなら、マフラーは半分こしよう」
 ぴったりと寄り添って、リンネの首に巻かれているそれを自分の首にも巻く博季。
「これならいいでしょう?」
 優しく微笑む彼にリンネもにこっと微笑み返した。

 十分にのんびり出来たことだし……と、いつまでも目を覚まさない彼女の唇に、そっとキスを贈る垂。
「……ん」
 ようやく目を開けたセイカへ、垂はにっこり微笑んだ。
「目が覚めましたか? お姫様」
「……し、垂っ」
 はっと身体を起こして周囲を見渡す。すっかり夜になっていた。
「よく寝てたな、セイカ」
 と、垂が声をかければ、セイカは歩いている途中で自分が眠ってしまったことに気がついた。せっかくの公園デートだったのに残念だ。
 しかし、垂が満足げな表情を浮かべているのを見ると、セイカも頬を緩めてしまいそうになる。
「ごめんなさい、まさか眠っちゃうなんて……」
「大丈夫だよ。それに、たまにはゆっくりしないとダメだろ?」
 と、立ち上がった垂に手を差し伸べられ、セイカは顔を上げた。
「さあ、帰ろう」
「はいっ」
 その手を取って立ち上がる。
 街灯がまばゆく輝く公園を、二人で手を繋ぎながら歩いて行く。

 ふと、唇に何かが触れるのを感じて月夜は目を覚ました。
 夜空を背景にこちらを覗き込んでいる刀真。先ほどまで見ていた夢の続きのように思えて、月夜は感情のままに彼の首へ両手を回した。
 身体を起こし、ぎゅっと抱きついてキスをする。今度は触れるだけじゃない、本物のキスだ。
 刀真は月夜の身体を無意識に抱き返してしまい、手を出すのを我慢する気持ちと戦っていた。彼女の想いはありがたいが、刀真はまだその気持ちに応えきれない……。
 それでも、二人はお互いに大切なパートナーだった。

 日が暮れてきて、北都は肌寒さを感じた。
 クナイはいまだ眠りから覚めない様子で、仕方なく起こすことにする。『超感覚』を使用した聴覚で得た情報によると、ヒントは「眠り姫」らしい。
 ――僕は王子様じゃないけれど、目覚まし時計くらいにはなれるかな?
 と、北都は周囲に誰もいないことを確認してから、そっとキスをした。
 すぐに顔を離し、何事もなかったかのように振舞おうと身構える北斗。数秒もしないうちにクナイが目を覚まし、北都は尋ねた。
「大丈夫? どこか具合悪かったりしない?」
「……え、ええ」
 上半身を起こしたクナイは、特に異常もない様子だった。
「良かった。魔女の魔法で眠らされちゃってたんだよ」
 と、北都が状況を説明すると、クナイは彼をじっと見つめた。
「そうだったんですか。それなら、どうやって魔法を解いたのですか?」
「っ……」
 とっさに視線を逸らした北都。嘘が嫌いな彼は、恥ずかしくて答えられなかった。
 その様子だけで何となく察したクナイは、もうひとつ質問をした。
「あと、私が眠ってから目覚めるまで、何をしていたのですか?」
 北都の顔が真っ赤になっていく。
 クナイはおそらく「そういうこと」なのだろうと納得し、眠っていたことを残念に思った。

 樹を待っている間にミシェルは本当に眠ってしまっていた。
 唇にキスをされて目を覚まし、はっとするミシェル。
「……樹」
「目、覚めたか? これからパーティーやるんだってよ。行こうぜ? ミシェル」

 目賀家の客室を借りたアスカは、眠っている鴉をモデルに絵を描いていた。
 その前にはオルベールが鴉をいじって遊んでいたのだが、意外と魔女の魔法は解けないものだった。
「……よし」
 満足したアスカは筆を置き、そっと鴉へ歩み寄った。
 少し腰をかがめて唇を重ねる。
 目を開けた鴉は彼女の顔がすぐそばにあることに気付き、そして離れたところで口を開いた。
「やっぱ、この方法で目覚めるのな……」

 海の手をぎゅっと握って、柚は彼の目が覚めるのを待っていた。
 眠っている彼もかっこいいと思い、見惚れてしまう柚。
 これまでにあった出来事の一つ一つ、海と過ごした日々の一つ一つを思い出して、温かな気持ちになる。
「どんな夢、見てるのかな……?」
 楽しい夢でありますように、とつないだ手に力をこめて祈る。
 ――もし悪い夢なら、助けにいけたらいいのに……。
 柚の耳にも「眠り姫」というキーワードは届いていた。しかし、柚はまだ海とそんな関係にない。ましてや、王子でもない。
 だからこそ、柚はただ祈り続けた。
「……」
 ふいに両目を開けた海は、そばで柚に手を握られていることに気がついた。
「あ、起きましたか? 海く――あっ」
 慌てて柚は手を離し、誤魔化すようにはにかんだ。
「あのっ、大丈夫? 頭が痛いとか、悪い夢を見てたとかないですか?」
「うん……悪い夢は、見てないな」
 と、海は優しげな表情を浮かべた。
 その笑みにも似た顔に、頬を赤くしてしまう柚。
「そ、そうですか。楽しい夢、見れてましたか?」
「ああ」
 海は頷いた。どうやら、柚の祈りは届いていたらしい。
 にこっと微笑んで、柚は頷いた。
「それなら良かったですっ」

 メイドに用意してもらったお茶を飲みながら、ささらは恋人が目覚めるのを待っていた。
「ん……」
 小さく唸り声がして、友美へ身体を向けるささら。
「目が覚めましたか? 友美さん」
 両目を開けてぼーっとする友美を、じっと見つめる。
 はっとした友美はすぐに上半身を起こした。
「あら、ここは?」
「客間ですよ。突然眠ってしまわれたので、お借りしたんです」
「そう……」
 紅茶のカップをことんと机へ戻し、ささらは友美の頬に手を伸ばした。
 彼女が何か反応する隙も与えず、唇を重ねる。
「っ……んん」
 少しばかり嫌がる様子を見せた友美だが、深いキスの前に抵抗はできなかった。
 キスを終えると、ささらはにやり微笑んで言った。
「待たせた罰です」
「……そうね」
 意図を感じ取って、友美も口の端を吊り上げる。窓の外はもう暗くなっていた。
「どうです? 友美さん……もっと激しくしますか?」

 アゾートのまぶたが開かれるのを見て、エリセルは両目に涙を溢れさせた。
「アゾートさん……!」
 と、喜びのあまり抱きついてしまうエリセル。
「……エリセル?」
 突然のことに少し驚きつつも、アゾートは現在の状況を把握しようと思考を巡らせる。確か自分は、お茶会に参加していて、エリセルも一緒で……突然眠ってしまった?
「良かったです、アゾートさんっ。本当に、本当に……私、心配で、もう、あの、本当に……っ」
 彼女に心配をかけてしまったらしいと気付き、アゾートは言った。
「ボクのこと、ずっと見ててくれたの?」
 はっとしてエリセルはアゾートから離れる。
「あ、いえ……その……あ、あの! ご、ごめんなさい、急に抱きついたりして」
「ううん……心配してくれてありがとう」
 嘘のない言葉にエリセルはほっと胸を撫で下ろすとともに、愛しさがこみ上げてきて苦しくなった。
「……はい」
 エリセルはアゾートを見つめ、ぎこちなく微笑みを返した。

 オツキミをいじって遊んでいた夢悠は、雅羅の表情が変化するのを見た。
 ふと大助も顔を上げ、雅羅の両目がぱちりと開く。
「起きた! 良かった! おはようお姉ちゃん!」
「……え?」
 寝ぼけ眼で首を傾げる雅羅に、夢悠ははっと口をつぐむ。
「あ、いや、雅羅さん!」
 それすらもアピールなのかと疑いつつ、大助は起き上がる雅羅をそっと支えた。
「雅羅、大丈夫?」
「ええ……ずいぶん、眠っちゃってたみたいね」
 と、雅羅は一つ欠伸をした。

 日が暮れてきて室内の電気が明るく感じられる頃、小暮は目を覚ました。
「起きたか? 小暮」
 そばにいたのはクローラだった。
 眼鏡の位置を直しつつ、起き上がる小暮。
「一体、何が……?」
「ちょっと迷惑な魔女がいてな、そいつにかけられた魔法で眠ってたんだ」
「……魔法? なるほど」
 特別異常のない様子を見て取って、クローラは誘った。
「帰るついでに、本屋に寄って専門書を探さないか?」

 いろいろなことがあったが、お茶会を楽しんだ白波理沙(しらなみ・りさ)はまだ少し眠たそうにしている雅羅へ声をかけた。
「ねぇ、雅羅。今度、学校帰りにスイーツ食べに行きましょうよ」
「スイーツ?」
「ええ、オススメのお店があるのよね♪」
 と、にこっと笑う理沙。
 すると、チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)が二人の会話へ口を挟んだ。
「わたくしも、ぜひご一緒したいですわ。スイーツは好きですし」
「そうね、良いんじゃないかしら」
 と、答えてから雅羅ははっとした。
「でも、何か起こったって知らないわよ?」
「大丈夫よ、雅羅。それくらい分かってるもの」
「そうですわ、心配なさらないで下さい」
 二人の優しさが雅羅の胸を突く。
 少し後ろでは大助と夢悠が彼女を見ていたが、女の子の話題には入っていけなかった。
「じゃあ、いいわよ。約束ね」
「ええ」
 楽しそうにしている雅羅の表情に、二人の男はそれぞれ複雑な思いを抱くのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

瀬海緒つなぐ

▼マスターコメント

皆さん、お疲れさまでした。
参加して下さった方々、ありがとうございました。

恋人および夫婦であることを証明する称号を持たない方々に対しては、少々厳しめにさせていただきました。
キスはもちろんさせていませんので、ご了承下さい。

それでは、またの機会にお会いしましょう。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

良いお年を!