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変態紳士を捕まえろ!

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変態紳士を捕まえろ!

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七章 そして、こうなる

 「みなさーん! 周囲に変態が出没していまーす! 教室に鍵をかけて出来るだけ廊下に出ないようにしてくださーい!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はパートナーのルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)が操る箒に跨がって生徒たちに呼びかけていた。
「うん! ルカたちが呼びかけてるお陰で生徒たちはあんまり廊下に出なくなったね」
「これで混乱は最小限に抑えられそうだね……ん?」
 ルカは前方に見えた異様な光景に目を凝らした。
 そこには──全裸の変態三人が股間に輪を大量にかけて倒れていた。
「へへ……意外とやるじゃねえか変態紳士……」
「鬼羅も……中々凄かったぞ……」
「ふふ……死力を尽くして戦った後は気持ちのいいものだ……」
 そんなエセ爽やかな会話がルカルカとルカの耳に届いた。
 ルカは箒を強く握って速度を上げ、
「突撃ー!」
 勢いよく三人を轢いた。
「「「ぎゃああああああああああああ!!??」」」
 三人は一斉に叫び声を上げると、一様にひっくり返り輪っかがあちこちに散らばった。
「やり過ぎたかな……」
「大丈夫だよ、変態ってゴキブリの次に丈夫らしいから」
「どっちに失礼か分からないね」
「その発言が失礼だろう!」
 変態紳士が反論のために起き上がると、フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)は口元をニヤリと歪ませて三人に向かって走る。
「隙有りだ!」
 フィーアは変態紳士に走り寄り、天井にぶつかりそうなほど跳躍し、
「変態紳士覚悟ー!」
 そのまま蹴りを見舞った──鬼羅に。
「へぶ!?」
 完全に不意をつかれた鬼羅は受け身も取らずに再び廊下に転がった。
「なんでオレ!? 変態紳士って言ってたじゃねえか!」
「なんか気が変わったんだよ!」
「フィーアさん、もう少し真面目にやってください!」
 ヴァルトルート・フィーア・ケスラー(う゛ぁるとるーと・ふぃーあけすらー)はフューチャー・アーティファクトを変態紳士の股間に向かってぶっ放した!
「ぎゃっ!?」
 本日何度目か分からない股間の激痛を味わい、変態紳士は股間を押さえて膝をつく。
「さあ! 覚悟しろ変態紳士!」
「く……! くそ!」
 ヴァルトルートは拳を振り上げて思いっきり殴った──鬼羅を。
「だからなんでオレ!?」
 叫びながら鬼羅は再び吹っ飛ばされる。
「繰り返しのギャグという奴だよ」
「よーし! 変態一人捕獲〜!」
 フィーアは嬉しそうに鬼羅を捕まえると、戸次 道雪(べつき・どうせつ)は巨大な鋏を持って鬼羅に近づいてきた。
「よし、ならこれを使って股間を切り落とすかのう。犬猫も去勢すれば大人しくなるというし……」
「なにも、よし、じゃねえだろうが! ちょ! 馬鹿やめああああああああああああ!」
 廊下に鬼羅の断末魔が響いた。
「お、恐ろしい……」
 変態紳士はその光景に寒気を覚えながら、身体の異変に気が付いた。
「ん……しまった! さっきの騒ぎで黒紙を無くした! これではまるで変熊の2Pカラー……あ、お嬢さん! 私の股間に貼る黒紙を知らないかな?」
「え……? き、きゃあああああああああああああああ!!」
 突然股間を見せつけられた花柳 雛(はなやぎ・ひな)は熱いお茶の入った水筒を変態紳士にぶっかけた。
「あづうううううううううううううう!?」
 変態紳士はビタンビタンと股間を重点的に悶えさせていた。
「わわわ、私の上着をお貸ししますからお願いだから隠してくださいっ! そんな格好だと、風邪引いちゃいますし!! 女性に嫌われちゃうんですよ!! あと、後は……、も、もっとまっとうに生きなきゃダメなんですよ!! 判ってますか!!」
「そんな事は百も承知だが女の子の前で恥部を露出すると興奮することに気付いた私はもうまともに戻る気は全くない! なのでもっと見て頂こう!」
「きゃあああああああああああああああああ!?」
 雛はさらに熱湯をぶっかけて、
「お、汚物は消毒です!」
捨て台詞を吐いて、顔を真っ赤にしながら離れていってしまう。
変熊はそんな様子を見てギリリと歯ぎしりをする。
「おのれ変態め……! 私より目立つとは! 誰か! 誰か私に構ってくれ! 変態は寂しくなるとあなたを道連れにして死んじゃうんだぞ!」
「それなら私が構ってあげましょう!」
 そう名乗り出たのは右手のパンツを握り締めている葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
「どうだ! 学院の校長! 静香さんのパンティーだぞ! 欲しかったら奪ってみろ!」
「ちなみに今日の混乱に乗じてワタシが拝借しました」
 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が控えめに補足する。
「よかろう、その挑戦受けて立つ!」
「待て! 私も参加させたまえ!」
 そう言って変態紳士は変熊の横に並ぶ。
「ええい負けるか! パンティーはもらった!」
 変熊はフライング気味に吹雪に飛びかかり、
「ロケットパーンチ」
 吹雪がロケットパンチで迎撃する。
 飛びだした左右の腕は変熊の右頬と股間に直撃して、
「ああああああああ!!」
 校舎から飛びだして落下していった。
「まったく……こんなパンツ一枚で釣られるなんて変態って悲しい生き物ですな」
「そんなこと言いながらその下着をポケットにねじ込もうとしないでくれる?」
 変態紳士は窓の外を呆然と見ていると、白鳥 麗(しらとり・れい)が背後からフェイスロックを仕掛ける。
「いだいだだだだだだだ!?」
「我が学舎で破廉恥な行為を行うのは感心しませんわね。ここで働いた蛮行の数だけ、わたくしがおもてなしをしてあげますわ!」
 麗はフェイスロックを外して、フラフラしている変態紳士の腕を取りチキンウィングアームロックを仕掛ける。
 絡めた腕が支点となって、変態紳士の肩がギリギリと悲鳴を上げて──ゴギリ……と鈍い音を立てた。
「〜〜〜〜〜ッ!!?!」
 外された腕はだらりと下がり、変態紳士は声も上げれずに脂汗を流す。
 麗は姿勢を低くして変態紳士を肩で持ち上げてアルゼンチンバックブリーカーを仕掛け、
「これで、退場ですわ!」
 そのまま変熊が落ちていった窓に落とした。
「ついでですわ!」
 勢い収まらず、麗はフィーアが捕らえた鬼羅を引っつかみ──ドロップキックを見舞った。
「オレは関係ないだろおおおおぉぉぉ……」
 鬼羅も二人と同じ場所から落下し、下には麗のパートナーサー アグラヴェイン(さー・あぐらべいん)が台車を構えて待ち構えていた。
 三人は無事に台車に収まり、運ばれている。
「も、申し訳ない……一体この台車はどこに向かっているのか教えて頂きたい」
 変態紳士はアグラヴェインに不安そうに訊ねると、
「遺言があるなら聞こう」
 ズレてはいるが、黙らせるには充分な答えが返ってきた。
 そして辿り着いたのは、燃えさかる焼却炉の前だった。
「え……? 冗談ですよね?」
「まさか放りこみませんよね?」
「流石に変態でも火にくべられたら死にますよ?」
 あまりの事態に三人は思わず敬語になるがアグラヴェインの表情は一つも変わらない。
「グッドラック」
 アグラヴェインは何事も無いように三人を火に放りこみ、
「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!」」」
 三人の悲鳴が上がる。
 こうして変態たちによる乱痴気騒ぎは幕を閉じた。