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リアクション
終章・1
千年瑠璃はほんの一瞬目覚め、また眠りについた。
宴は終わり、襲撃者たちは連行された。空京で警察に引き渡されることになるだろう。
フォーヴ・ルーヴァルは応急処置の後、すぐさま病院に搬送されたが、昏睡状態が続いている。
襲撃者の使った毒は、彼らの故郷であった地域にのみ自生する毒性の強い野草から抽出、濃縮したもので、かなり強力なものであった。
ミアの手当てが早かったからこそ、辛うじて命を落とさずに済んだのだろう。
佐野 和輝は、パートナーのアニス・パラスが、庭園にいた時に凄まじい悪寒を感じたことを聞いた。
その時、キャスケットの少女がすぐ近くにいたことも。
おそらくアニスが感じたのは、刀姫カーリアが具有していた『呪いの大剣』の気配だったのだろう。
ひとりの人間を狂った魔物に変える、一地域に澱のように積もって凝り固まった観念の化した呪い。それは酷く恐ろしい気配だったに違いない。
「本当にありがとう。おかげで助かったよ」
宴が終わって別れる時、キオネ・ラクナゲンは何度もそう言って、協力してくれた6人に頭を下げた。
探していたグレス・デインは無事見つかり、あの混乱の中、城の外で無事身柄を確保された。
偶然にも、彼を魔鎧にした職人のもとに、今回の襲撃犯グループが武装のため、魔鎧をまとまった量で買い付けに来たのだ。
ただ、彼らの用意できる金が少なかったのと、重厚なものではなく出来るだけ軽量のものがいいということで、悪魔は二束三文の不出来な薄い鎧を売りつけたようだった。
その中にグレスがいた。不出来な鎧だったことが、望まず魔鎧にされた彼にとって幸運だったのかそうではないのか、一概には何とも言えない。
しかし、とにかくこれで、依頼は完了する見込みが立った。後は、彼を友人のもとへ連れて帰るだけだ。
「空京で事務所やってるから、魔鎧がらみのお悩みがあったらぜひお越し下さいね〜」
そんな用事ができる日があるだろうか、などとそれぞれに苦笑しながらも6人はキオネと別れた。
「は〜よかったよかった。無事見つかって」
キオネは心底ホッとした顔で、うーん、と伸びをした。
「……しかし、俺の“尋ね人”……“尋ね魔鎧”は、いつ見つかるのかねぇ……」
そう呟いた時、寂しげな光が、キオネの目の奥をよぎった。
「……『ペコラ・ネーラ』……」
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