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千年瑠璃の目覚め

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千年瑠璃の目覚め

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終章・3


「卿は、ヒエロ・ギネリアンと直接の面識がおありか?」
「ほんの一度だけだがね。完成したばかりの千年瑠璃と刀姫カーリアを見せてもらった。
 私は、彼の作品の一ファンにすぎんよ」


 宴が終わり、大分人も減った旧・謁見の間。
 千年瑠璃の石柱の前には、モーロア卿とジェイダスが佇んでいる。ジェイダスの後ろには早川 呼雪とパートナーのヘル・ラージャが控えている。

「貴殿は信じられるか。この結晶、2百年前にはもっと、透明に近い色だったのだ」
 モーロア卿が語り出す。
「水晶のような無色の色彩の中、千年瑠璃の周りだけ、青い色がぼんやりと漂っていた……
 年を経るにつれ、その青がだんだんと濃く、広がっていって、ついには元から蒼い結晶であったかのようになってしまった」
 千年瑠璃の姿は、けぶる青の向こう。
「やがてこの青が千年瑠璃の姿を完全に隠してしまった時……それが、彼女のタイムリミットなのかもしれぬ」
 それで、彼女の傷が治っていないのを知りながら、宴を開いてお披露目したのだと彼は語った。
 何とか、千年瑠璃の活路を見出すために……


 なぜ鎧の姿ではないのか。そう疑問を持った者は多かった。
 人の姿を選んでいたのではない。人の姿で深手を負い、鎧になれない状態だったのだ。


「卿が宴に入場制限を設けなかったのは、もしや……
 ヒエロ・ギネリアンの来場を期待していらしたのか?」
 ジェイダスがモーロア卿に尋ねた。
「ザナドゥで権力闘争に巻き込まれたという噂が本当かどうかは知らないが……
 もしや、真実力ある何者かに狙われるような立場にあるのなら、生き延びるため、如何様に姿を変えているか分からない。
 だから、実質誰もが入れる宴にしたのでは?」
 その問いに、モーロア卿は意味深な微笑を返しただけだった。――それが、答えだった。
 彼もまた、深手を負った千年瑠璃を治せるのは、製作者たるヒエロだけだと考えているのだろう。
「しかし、契約者も交えたお披露目で、主が見つかることに期待をかけたのも、紛れもない事実だよ」
 モーロア卿は言った。
「契約を果たすと、人も魔鎧も、それによって飛躍的な力を手に入れると聞いていたからね。
 その力が彼女の自己治癒能力を上昇させ、その体を元に戻せるのではないかと、淡い期待を抱いたのだが……」
 言葉を切り、モーロア卿はどこか老いて見える目をして、石柱を見上げた。

「あくまで、ヒエロを待つ、か……」



 古城での宴で結局、千年瑠璃は主を得なかったが、彼女を助けるための何らかの策で、また今回のような大規模な宴を開く可能性もあるとモーロア卿は考えていた。
 なので、この城はこのまま管理下に置きたいと言うので、古城を貰い受けたいという東 朱鷺も、その交渉を控えざるを得なかった。


「理事長…」
 卿が広間を退出した後、呼雪は、ジェイダスにそっと声をかけた。
「悪魔もまた、かつて地上を追い遣られた人々が転じた存在。
 真に美しいものを前にしては、人は尋常ではいられない……というのは、あなたの教えでしたが。
 聞けるものならお聞きしたい。あなたの目に、今回の顛末は、どのように映りましたか?」
 ジェイダスは、呼雪を見返した。
「今回の顛末、か」

「案外、モーロア卿の言う通りかもしれんな、と」
「とは?」

「美しさ、その影にある醜さ、陰惨さ。浅はかさ、欲得、執心。
 ――すべて皆、シンフォニーを作る旋律の一つであったかのようだ。
 だが、この交響曲はまだ、終わってはいないだろう。よって名曲か駄作か、まだ判別するには早い」


 案外、この「シンフォニー」という言葉は便利な使い方ができるかもしれんな、と、ジェイダスはクックッと笑った。

担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

 参加してくださいました皆様、お疲れ様でした。
 …………ミステリーシナリオ難しっっっ!!!(爆)
 謎解きの解をきちんと書かなくてはと思っていたら、戦闘シーンが結構バタバタの文章になり、おまけに終盤ほとんどNPCのお喋りになってしまいました(汗)。読みにくくなってしまって本当にごめんなさい(土下座)。

 毎回ながら皆様のアクションが、こちらが予想したものの遥かに上を行く秀逸さだったり、全く予想していない角度から飛んできていたりで、うわ〜とテンパりつつも書いていて非常に楽しい思いをさせていただきました。
 殊に、謎解きをかけて下さった方々の推理などは、「ヤバい、真実の方がショボい……!(爆)」と頭を抱えてしまったほどのクオリティでした。真相に拍子抜けしてしまった方々、すみませんです(苦笑)。
 また、『キャスケットの少女』に目を付けた方々にも、鋭い考察をされた方が多くて驚かされました。彼女、意外とモテてしまったため、接触希望のアクションを出してくださった方々それぞれが、十分に納得のいく接し方になったかどうか自信ないです……ちょっと申し訳ない感でいっぱいです。
 いろんな方のおうちの魔鎧LCさんの事情が覗けたのも、とても楽しかったです。
 あと、さすがはジェイダス理事長、カリスマですねー。護衛志願多かったです。若干取り合い状態(笑)。

 このような結果になりましたが、千年瑠璃も刀姫カーリアも、今後の運命に多難を抱えつつ、またどこかで出てくることになると思います。取り敢えず、今回はメインストーリーの外辺をふらふらしていたキオネは、近いうちにふらふらと再登場する予定です。自分としては、魔道書のシリーズを一応まだ続けていますので、それと交互に、時たま単発物なども交えながら進めていければと思っています。ので、だいぶ遅々とした進みになってしまいますが(苦笑)、もしご興味を持っていただけましたら、気長に待っていていただけると有難いです。
 あと、いつまでたってもアナログ気質(?)が抜けずキーボードタッチが全然成長しないものですから、リアクション執筆中何度も「千円瑠璃」と打ち間違えてました……ははは(乾いた笑い)。

 参加された皆様(実際にリアクションに登場された方々)に称号を送りいたします。ほぼ実質、本シナリオでの行動記録みたいなものですが、ご笑納くださいませ。
 またお会いできれば幸いです。ありがとうございました。