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リアクション
地下施設
解毒剤をもったグループが、地下施設に到着した。
「本当に、そんなもので治るの……?」
たいむちゃんをはじめとして、その場にいる者たちは半信半疑だ。
だが、いまは他に手がない。
子供たちに、パラミタセラピーバエの幼虫を呑ませていった。
しばらくして、金鴻烈を連れた三人も到着する。
EJ社の最高経営責任者。
たいむちゃんが、鴻烈の前に立つ。
「あなたは何を考えているんですか! こんな……こんなひどいことを……!」
たいむちゃんは涙ながらに訴えた。
対する鴻烈は、やはり表情をひとつも変えない。
「力を得るためだ。私こそわからないな。女王のコピー体と友達ごっこしている場合ではないのだよ。今のニルヴァーナには、力が必要だ」
「……たしかに、ニルヴァーナには力が必要です」
たいむちゃんが、鴻烈を見据えた。
「でもその力は、子供たちを守るためにあるべきです。子供を犠牲にした力など、私は欲しくありません! そんな力は必要ないんです!」
それを聞いた鴻烈は、無言のまま彼女を見つめた。
そして、
「――さすがは、創世学園の校長を務める者だ。君の言うとおり、私が求めていた力は、間違っていたのかもしれないな」
そう、呟いた。
鴻烈の視線の先には、彼の息子である、龍雲がいた。
マゴットセラピーにより、みるみる人間の姿に戻っていく。
龍雲は、もとの可愛らしい少年になった。
息子の姿を見て、鴻烈の表情がはじめて変わった。
満足そうに微笑みを浮かべている。
それを見ていた、セレンフィリティ・シャーレットは、あることに気づく。
「いけない! 彼は、奥歯に毒を仕込んでいるわ!」
その忠告は遅すぎた。周囲のものは、出遅れる。
ただ一人。
はじめから鴻烈を蹴り飛ばそうと突進する、長原淳二を除いては。
「俺は……おまえの顔面を蹴らないと気が済まない!」
鴻烈が自ら命を断つ前に。
淳二の蹴りが、彼の奥歯をへし折っていた。
「こんな馬鹿な実験をして……どういうつもりだ!」
なおも淳二は、鴻烈に食いかかる。
そんなパートナーを、ミーナ・ナナティアがなだめる。
「……もう十分だよ。やめよう。彼を裁くのは、きっと、あの子が決めることだから」
ミーナが見つめた先には。
異形の少年――ヴアドが、立っていた。
鋭峰たちに連れられて、地下施設へたどり着いたヴアド。
彼は、ゆっくりと鴻烈の前に立つ。
鴻烈を見下ろし、剣に変えられた右腕を上げた。
その目は、殺意をこめて、彼の首筋に向けられていたが――。
やがて、ヴアドは右腕を下ろした。
「貴方ニハ……生キテ……償ウコトガ……アル」
ヴアドはそう言うと、鋭峰を見た。
「後ハ……オ願イ……シマス」
「ああ。わかっている」
鋭峰は、すべてを見通していたように頷くと、すぐに鴻烈の連行を手配した。