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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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 その後。
 子供たちは、体内の蛆虫に、蟲の細胞を食べ尽くされていた。
 すっかり元の姿に戻った子供たちだったが。
 蛆を呑み込んでから、30分後。
 ブワーーーーーーッ!
 ブワーーーーーーッ!
 彼らは口から、成虫になったパラミタセラピーバエの成虫を、一斉に吐き出した。



 端正な顔立ちを長い髪で覆って、ジブリールがうつむいていた。
 フレンディス・ティラが、ジブリールに話しかける。
「ジブリールさん。もう、暗殺者としての道は踏み留めて頂きたいのです」
「……無理だよ。オレは人を殺すことしか知らない」
 あどけなさの残る声で、ジブリールが言った。
「心配いりません。まだ間に合います。良ければ共に修行を致しましょう」
 フレンが、ジブリールの手を握る。
 しばらく無言だったが、ジブリールは、彼女の手を握り返す。
「……うん。よろしくな、マスター」
「マ、マスター!? 私がですか! あわわ、どうしましょう、マスター?」
 慌てふためくフレンに、師匠のベルク・ウェルナートが苦笑する。
「こらこら。今のマスターは、フレイ。君だよ」

 彼女たちの会話を聞いていたシュリー・ミラム・ラシュディは。
「よかったわ。妹みたいに可愛い子が暗殺者なんて間違ってるわよ」
 と呟き、
 「あれ、弟かしら?」と首をひねった。


 アリー・アル=アトラシュの正面から、肩をガシッとつかんで、狩生乱世は言った。
「アリー! 強く生きろよ!」
 グレアム・ギャラガーは、彼女の背後から淡々と告げる。
「戦争の傷を、君ひとりが負う必要はない」
「そうだぞ、アリー! なんかあったらすぐに言うんだ。あたいが、アンタの居場所になってやるからな!」


 少年になった墓場喜多郎の頭を、葛城吹雪がぽんぽんと叩いていた。
「無事に戻れてよかった、よかった。でもこうしてみると、素顔もヒキガエルに似てるであります!」
「……うるさいよ」
 口をとがらせる喜多郎の隣で。
 イングラハムの体を、コルセア・レキシントンが、ぽりぽりと掻いていた。
「あなた、触手で掻けばいいじゃない」
「我の触手は柔らかすぎる。掻きごたえがないのだよ」
「はあ、なんでワタシがこんなことを……」


 その、イングラハムの体を刺した墓場百合籠は。
 吹雪と仲良さそうな兄を見て、ほっぺたを膨らませている。
 そんな彼女に、永井託がそっと囁いた。
「百合籠さん、たまには素直になっておくといいことになると思うよ〜」
「べ、別にっ! お兄ちゃんなんて、ぜんぜん好きじゃないんだからねっ!」


 ソフィア・ドストエフスカヤの寝顔を、富永佐那が見守っていた。強化人間の彼女は、快復が他の子よりも遅い。
 佐那は、パートナーのエレナ・リューリクと共に、ソフィアの後見人に名乗りでていた。
 正式な手続きがおりれば、ふたりがソフィアの新しい親となる。
「この子には家族が必要でしょうから……」
 佐那は、ソフィアを優しく抱きしめた。


 アクワシア・クワシに、笑顔が戻っていた。
 自分を助けてくれた、バシリス・ガノレーダ、熊楠孝高、八雲尊に何度もお礼を言う。
「みんな、ありがとう!」
 そしてアクワシアは、天禰薫に抱きついた。
「石のなかでね。キミの声、ずっと聞こえていたよ! とってもうれしかった!」
 ふたりの様子を見ながら、次百姫星が、うんうんと頷いている。
「みんな無事で、本当によかったです。あとでガーナ産のチョコレート、いっしょに食べましょうね」
 そう言って、彼女はごそごそと何かを漁った。
「……ところで。私、チョコを持ってるんですよね。パラミタ産ですけど」
 姫星が取り出したのは、ポテトチップチョコだった。
 アクワシアと薫に、それぞれ渡す。
 塩味が、絶妙に効いたチョコレート。それを食べた三人は、いつまでも笑い合っていた。


 ペルセポネ・エレウシスは、すでに地下施設から抜けだしていた。――サソリ姿のマイケル・ストレンジラブと、チアノーゼで気を失ってるドクター・ハデスを背負って。
「ハデス先生! もう少し我慢してください! 病院まで、あとちょっとですからっ!」
 フハハハ!
 フハハハハハハハ!
 フハハハハハハハハハハハ!
 背負われたマイケルが、高笑いをつづけていた。