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【創世の絆】銀行強盗ゲルバッキー

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【創世の絆】銀行強盗ゲルバッキー

リアクション

そうしていると、
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)
コルデリア・フェスカ(こるでりあ・ふぇすか)が、
翔龍に乗ってやってくる。

「もう、お父様ったら〜……他人様に迷惑をかけてしまったんですから、
ごめんなさいって謝らなくちゃいけませんのに〜。
娘として恥ずかしいですわ〜」
コルデリアは、【ゲルバッキーの娘たち】の一人である。

「これがホントのバットう術……なんちゃって♪」
コルデリアが、抜刀術で野球のバットを振りかぶる。
「何を言って……」
「仕置きの手段ですわ、Oh! My boll! ですわ〜」
「ぎゃああああああああああ!?」
コルデリアが、ゲルバッキーをボコボコに殴る。
「っていうか、コルデリアはあれか、
エキセントリック花嫁ガァルとでも呼べばいいのか」
エヴァルトがつぶやく。
「まあいい。俺も『説得』に加わろう」
そう言い、エヴァルトが、ゲルバッキーに近づく。
「お前は“滅びを望むもの”を倒すために色々やってきたんだろう?
そいつはもう退けられた、それでいいだろうが。
別の世界に逃げたとかで追いかけたいんなら、他人に迷惑かけない範囲で勝手にすりゃあいい。
まぁ、お前自身が“滅びを望むもの”になりたいんなら、
俺は全力で阻止するが……この市販の強力除菌スプレーお徳用×2でな!」
エヴァルトが、バットで殴られているゲルバッキーに除菌スプレーを吹きかける。
「うぎゃああああああああああああああああ」
「早く説得に応じろ、ゲルバッキー」
「ちゃんと皆さんに謝るまで許しませんわ〜。
嫌と言われるのでしたら、除菌スプレーでじわじわと……」
エヴァルトとコルデリアが、ゲルバッキーに迫る。

そうしていると。

「ゲルバッキー!
これからはちゃんと罪を償うって、ファーストクイーンに約束して!」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、
ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)とともに、
拡声器で説得する。
「ファーストクイーン様の話を聞いてくれないようなら、
お父さんがファーストクイーン様に宛てて書いた
恥ずかしい内容のラブレターを、いまここで読み上げますよ!」
【ゲルバッキーの娘たち】のひとりである、
ベアトリーチェが、ニル子に、ニビルの手紙を見せながら言う。
「な、なんでそんなもの持って!?
騙されないぞ、ファーストクイーン様は……」
「ファーストクイーン、ニビルの恥ずかしい思い出とか何かないの!?」
「え、恥ずかしい思い出ですか?」
美羽が、ニル子にたずねる。
恥ずかしいエピソードを披露してもらい、
ゲルバッキーに言うことを聞かせる作戦なのだ。
「自作のポエムとか、どうせそんなのばっかりもらってたんでしょう」
「たしかに、そういうこともあったような気が……」
美羽の言葉に、ニル子が首をかしげる。
「ここに実物があります!
『ああ、ファーストクイーン様。
あなたはなんと美しい。
あなたは太陽、月、星、大地そのもの。
その薔薇の花のようなくちびるに、ふれることができたなら……』」
「ぎゃああああああああああああ!?
やめろおおおおおおおおおおおお!?
やめてくれええええええええええ!!」
ベアトリーチェに手紙を読み上げられて、
ゲルバッキーが羞恥心にのたうちまわる。

「早く言うこと聞かないと、もっとたくさん読むからね!」
「お父さん、早く言うこと聞いてください!
娘として、こんな手紙、私も恥ずかしいんですから!」
「恥ずかしいとか言うなあああああ!!」

しかし、ニル子が、ゲルバッキーに優しい言葉をかける。
「こんなに私のことを思ってくれていたのですね、ニビル」
「え?」

その声音に、
地面を転げまわっていたゲルバッキーが動きを止める。
「もしかして、あなたは……」

そこに、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が、
魔鎧の漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)をまとって現れ、
ゲルバッキーが出せなかったラブレターを読み上げる。

「麗しのファーストクイーン様。
僕の気持ちに気づいていらっしゃるでしょうか。
あなたは本物の美を体現したお方です。
それに引き替え、僕はただの臣下に過ぎない。
ああ、僕とあなたが結ばれるのであれば、
どのような犠牲を払ってもいい……」
「うわあああああああああああああああああ!?」
またも羞恥心で転げまわるゲルバッキーに、
綾瀬が、平然と言う。
「あら、良いではありませんか?
……貴方の思い人にその気持ちを伝える事が出来たのですから」
そして、綾瀬は、ニル子に注意を促す。
「良く見て……いえ、感じて下さい。
彼女の内に存在している、もう一つの……貴方にとって大切な、その人物を」
「あなたは、ほ、ほんものの……。
つまり、僕は、本物のファーストクイーン様の前で、
らららららラブレターを!?
ぎゃああああああああああああああああああああ!?」
そのことに気づいて、ゲルバッキーはさらに羞恥心でもだえる。

「良い手紙ではありませんか。
本当にファーストクイーン様の事を愛してらしたのですね……
しかし、ならば、彼女が愛したニルヴァーナと言う地も愛し、
守り抜こうと何故思わなかったのか……」
綾瀬は、そう、誰に言うとでもなくつぶやいた。

「ぼ、僕は、ファーストクイーン様のいない世界など……
滅びてもかまわないと思ったんだ……!」

ゲルバッキーの口調は、幼い少年のものになっていた。
まるで、駄々をこねるように。

そこに、
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が、手紙を手に現れる。
パートナーのルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、
残っていたゴーストイコンの追撃を防ぎきって、
ゴアドー島のダリルの元に手紙を持って来たのだ。
ルカルカは、聖槍ジャガーナートを両手に、
Sインテグラルナイトの速度を引き上げて、
全力で飛んできた。
【最終兵器】とすら呼ばれるルカルカであれば、
長時間の手紙の輸送にも耐えることができた。
なるべく、長い距離を運び、
ダリルには、すぐに手紙を渡して、
ゲルバッキーと話す時間を与えたいと、ルカルカは願っていた。
だから、あえて、ダリルには、ゴアドー島で待機してもらい、
手紙にふれる時間を最小限にしようとしたのだった。

なぜならば。

「とうさん……」
ダリルがつぶやいた。
ダリルも、また、【ゲルバッキーの息子たち】のひとりであった。

「これ以上罪を重ねないでくれ」
ダリルが、ゲルバッキーに手紙を差し出す。
ゲルバッキーは、そっと顔を上げた。
「この字は……」
「とうさんの、大切な人の書いたものだと聞いている」
言いにくそうに、ゲルバッキーを「父」と呼びながら、
ダリルが告げた。

この手紙は、
昔、ニビルに「ゲルバッキー」という名を与えてくれた、
キャバクラ嬢が書いてくれたものであった。



「ゲルバッキーへ。

本当は、あんたも知ってるはずよ。

ファーストクイーンがたとえいなくても、
あんたは前をむいて歩いていってもいいんじゃないかしら。

ファーストクイーンがあんたを愛してるなら、
きっとあたしと同じことを言ったと思うわ」




簡潔だが、深い愛情をこめて、
その手紙には、ゲルバッキーへの想いがつづられていた。

「ぼ、僕は……」

ゲルバッキーは、手紙を持って、しばらくの間、呆然としていた。
ダリルも、周りの者たちも、
その様子を、じっと見守っていた。