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校長帝国を倒せ!

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校長帝国を倒せ!

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《VS エリザベート》



「おい、瑠璃!一人で突っ走って行くなっ!」

 相田 なぶら(あいだ・なぶら)の静止も聞かず、敵陣の隙を突っ走る木之本 瑠璃(きのもと・るり)
 その拳の目指す先には、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)がいる。

「キーがないと、校長には勝てないっていってるだろ!」
「キーなどいらぬ!我輩は我輩の拳で、あの愚か者をぶちのめすのだ!」
「フフッ。キーの力も無しに私を倒そうなんて、お笑い種ですぅ〜」

 不敵な笑みを浮かべ、瑠璃を待ち受けるエリザベート。

「人の力で野望を遂げようとするその腐った精神、我輩が叩き直してくれる!」
「自分の力で頑張るのも結構だけど、キーがなければ、ここまで来ることも出来ないんじゃないかしらぁ?」

 行く手に、学徒兵が壁を作る。

「言わんこっちゃ無い!ったくもう、いつも後先考えないんだから!」
「ホラホラ、そんなトコロで立ち止まってると、危ないですよぉ〜」

 ゆっくりと、右手を振り上げるエリザベート。

(瑠璃っ!させるか!)

 なぶらは、咄嗟に《光術》を放つ。

「何っ!」

 光の玉がエリザベートを撃ち、呪文が発動寸前で止まった。

「五月蠅い虫がいますねぇ〜。そっちから先に片付けちゃいましょうか〜」

 口調こそおっとりとしているものの、なぶらを見るその視線には、猛烈な殺意が籠っている。
 エリザベートは、先程のゆっくりとした詠唱がウソのように、立て続けに呪文を唱えた。

「うわぁ!」

 たちまち、酸の雨に襲われるなぶら。
 
「なぶらっ!クソッ、そこを退けェ!」

 エリザベートを止めようと、遮二無二前進しようとする瑠璃。
 だが、幾重にも立ちはだかる学徒兵が、それを許さない。

「アハハハハッ!ソレ、そぉれェ!!」
「グアァ!!」

 最大にまで濃縮された《アシッドミスト》に、全身を焼かれるなぶら。
 エリザベートの哄笑が、辺りに響く。


「その醜い笑い、止めて頂きましょう。聞くに絶えません」

 エリザベートの周囲が、猛烈な黒炎に包まれる。

「な、何者だ!」

 頭上を振り仰ぐエリザベート。
 そこいるのは、黒い瘴気が凝り固まって出来た龍【『エル・アザル』】だ。

「これ以上校長の姿で醜態を晒すのは、この私が許しません」

 その背からエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)アーマード レッド(あーまーど・れっど)が飛び降りる。

「ネームレス、有象無象は任せます」
「了解……。行くよ、エル・アザル」

 魔瘴龍の腹に蹴りを入れ、学徒兵の群れに突っ込むネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)
 ある者は龍の顎門(あぎと)に捕らえられ、ある者はネームレスの振るう【無銘:大戦斧】に一薙ぎにされ、見る間に隊列を崩していく。

 その隙をついて、一気にエリザベートへと迫る瑠璃。
 エリザベートは呪文で攻撃しようとするが、瑠璃は既に目の前だ。

「喰らえっ!正義を貫く必殺の拳!」
「うがァ!」

 瑠璃の怒りの一撃が、エリザベートの顔面を捉える。
 錐揉みを切って吹っ飛ぶエリザベート。

「こ、このこんなのウソですぅ……。私が……キーも持ってないのに……」

 口の端から血を垂らし、必死に立ち上がろうとするエリザベート。
 その上に、黒い影が差す。

「さて、我が校長を愚弄した報い、受けてもらいますよ」

 傍らに転がった【イルミンスールの杖】に手を伸ばすエリザベート。
 だが、エッツェルの右手首から伸びた、刃持つ触手【ヌギル=コーラス】が、杖を両断する。

「……無駄です」
「ヒッ……!」

 突然の激痛が、エリザベートを襲う。
 エッツェルの【古きモノの呼び声】が、エリザベートを蝕んでいるのだ。

「い、いやぁァァァーーー!」

 悲鳴を上げるエリザベートを、エッツェルは右手の触手で絡め取り、引きずり起こす。
 苦痛に歪むエリザベートの顔が、更なる恐怖に引きつる。
 振り上げたエッツェルの左の掌に、『口』が開いたからだ。
 無秩序に牙が生え、ヨダレを垂らした、醜悪な口が。
 凄惨な笑みを浮かべながら、その手で、エリザベートの顔面を掴むエッツェル。

「ギャアァァァァ!」

 口から伸びた無数の触手が、エリザベートの顔を喰い破り、身体の奥目指して突き進む。
 生きながらにして貪り喰われる激痛に、恐ろしい絶叫を、切れ切れに上げるエリザベート。
 やがてその声も止み、ヒクヒクと痙攣を繰り返すのみになる。

「もういいでしょう。さぁ、レッドさん、トドメを」
「了解。プログラム、インストール」

 アーマード レッド(あーまーど・れっど)は無機質な機械の声で答えると、フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)に姿を変えた。
 思う存分エリザベートを貪り喰ったエッツェルは、まるでボロ雑巾か何かのように、彼女を放り投げた。

「お、お願い……。た、助け……」

 見るも無残な顔を上げ、弱々しく哀願するエリザベート。
 その顔のすぐ前で、レッドの【二十一式大型砲剣「轟沈」】が、冷たく光を放つ。

「目標を補足。距離……零」

 極太のレーザーが、エリザベートの身体を瞬時に蒸発させる。

 その瞬間、エリザベートのキーの『大いなる力』が暴走を始めた。