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第三章  対薔薇学戦線



《VS 学徒》

「さぁかかって来なさい!アナタたちの相手は、この俺です!」

 【ジェットドラコン】の背で見栄を切るクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)
 マントが風を受け、翻る。
 クロセルの動作は一つ一つが大仰で、芝居がかっていた。

「人の姿で侵略を行い、故無き罪を押し付けるなどとは、言語道断!その腐った性根に、社会のマナーを叩き込んで差し上げましょう!」

 大きく振り上げた両手を、学徒に向かって突き出す。

「喰らえ、正義の鉄拳!【ロケット、パァーーーンチ!】

 爆煙と共に発射されたロケットパンチが、密集隊形を取る学徒たちをまとめて吹き飛ばす。

(見たか!貴様ら如き、キーの力を使うまでもない。この俺自身の力で、倒してみせる!)

 クロセルにとっては、自分が目立つかどうかが何より重要だった。
 キーを使用すればラクに勝てるのは分かっているが、それでは変身している人物が目立ってしまう。

 ドラゴンから飛び降り、パンチで生まれた空間に着地するクロセル。
 押し寄せる学徒たちを、両手の【超電導ヨーヨー】で薙ぎ払う。
 しかし何せ1対1000。倒しても倒しても湧いてくる学徒に、ドンドン包囲の輪が狭まって来る。
 ドラゴンが空からブレスを浴びせ、クロセルを援護するものの、囲みを破るには至らない。

「大丈夫?」
「無理するな!すぐに行く!」

 クロセルを助けようと、クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)が、敵を倒しながら進んで来る。

「ここは俺一人で大丈夫です!皆さんは先に進んで下さい!」
「でも!」
「ニセ校長さえ倒せば、兵士は戦意を失って逃走するハズです!これ以上、味方の損害が増えないウチに早く!」

(折角一人で戦ってるのに、味方がいたらその分俺が目立たなくなるじゃないか!)

「……わかった。無理するなよ、真城
「死なないでね、真城さん

「え……?真城って……!?」

「済まない、真城!」
「有難う、真城さん!」
「すぐに戻るからね、真城さん!」

 クリストファーたちに続いて、次々と通り過ぎていく生徒たち。
 皆一様に、クロセルのコトを真城と勘違いしている。
 残念なコトに、クロセルと{SNM9998976#真城 直} とは、外見がよく似ているのだった。

「お、俺、もしかして真城に間違えられてのか?」

(せ、折角キーを使わずに頑張ったのに……。目立ったのは俺じゃなくて、真城だったっていうのか……)
 
 残酷な現実の前に、クロセルの中で、何かが音を立てて崩れていった。



《VS ルドルフ》

「危ない!」
「ナニッ……グワァ!!」

 クリスティーの叫びも虚しく、ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)の【裁きの刀】を受け、仲間が倒れる。
 ガックリと膝を突き、倒れて行くその光景が、【おおきなハミングバード】の背に乗るクリスティーには、やけにはっきりと見えた。
 そして、同じようにルドルフの足元に倒れ伏す、3人の仲間たちも。
 皆、クリスティーたちより早く、偽ルドルフに戦いを挑んだ者たちだ。

「よくもみんなを!」

 ハミングバードをホバリングさせ、【ミニたいむちゃんタワー】を乱射するクリスティー。
 だがその攻撃を、ルドルフは華麗なステップでかわす。

「空からとは卑怯な。キミも薔薇の学舎の生徒ならば、降りて来て正々堂々と戦ったらどうかね?」
「お前のようなニセモノに、学舎のコトをとやかくいう資格はない!」

 ルドルフの挑発を無視して、ビーム攻撃を続けるクリスティー。

「それに、学舎で重んじられるのは、『美しいか否か』だ。それが美を放つ程に研ぎ澄まされたモノであれば、どのようなモノであれ認められる。それが薔薇の学舎だ」

 背後からの声に、咄嗟にマントを翻すルドルフ。
 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)の棒手裏剣が、マントに弾き飛ばされる。
 翻るマントを利用して、一気に距離を詰めるクリストファー。
 《ブラインドナイブズ》で、激しくルドルフを攻め立てる。
 そのルドルフの足を止めようと、ビームを浴びせるクリスティー。

「なるほど、2対1か。僕の強さを引き立てるには、ちょうどいいハンデかな」

 そう嘯(うそぶ)きながら、その全てをかわし、受け止めるルドルフ。

「……でもね!」
「うわっ!」

 防御一辺倒から一変、翻したマントの影から、【日輪の盾】を投げつけるルドルフ。
 クリスティーは力いっぱい操縦桿を切るが、その一撃を避けることができない。
 片羽根を切断されたハミングバードは、クルクルと錐揉みしながら落下していく。

「クリスティー!」

(このままじゃ、地面に激突する!)

 まるで洗濯機にでも放り込まれたような回転の中、必死に状況を把握するクリスティー。
 その視界の端に、対峙するクリスティーとルドルフが見えた。

「キャラクターチェンジ!」
「ウーーーェルチ!」

 ハミングバードが、地表に激突する寸前。
 ギリギリで飛び降りるのに成功したクリスティーは、ウェルチ・ダムデュラック(うぇるち・だむでゅらっく)に変身すると、あらん限りの力で《叫び》声を上げた。

「!!」

 ハミングバードの爆発音すらかき消されるような凄まじい音に、耳を塞ぐルドルフ。

「もらった!」

 ルドルフの目の前で、《光術》を発動させるクリスティー。

「ガァァ!」

 輝く光球が、ルドルフを焼いていく。

「トドメだ、クリスティー!」
「これで、どうだぁ!」

 ミニたいむちゃんタワーから放たれた虹色のビームが、完全に足を止めたルドルフを直撃する。

「ば、バカなぁーーー!」

 長く尾を引く叫びを後に残し、一瞬で炭化するルドルフ。
その命の火が消える直前、校長キーの『大いなる力』が暴走した。