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リアクション
ここで、風呂あがりの人物の話をもう一つ……。
「ふぅ……いい湯だった。おいルシオン、何か冷たいものはない……あれ? 雅羅?」
大助が風呂から出ると、ミルクアイスバーを咥える水着姿の雅羅がそこには居た。
雅羅のかじったアイスバーの中からトロトロと練乳が流れ、薄桃色の唇から、その豊満な胸に垂れ、谷間に白濁色の液体が溜まっていく光景。
「冷たくないのかい?」
大助が尋ねるも、雅羅はどこか惚けた顔をしている。
「雅羅? どうしたんだい?」
ゆっくりと大助へと振り向く雅羅。食べ方が下手なのか、アイスを持つ手やその赤く染まった頬にも白い液体が付着している。
「……舐めて」
「え?」
アイスバーを投げた雅羅が、胸を両手で押し上げる。
「……」
大助の視線が、雅羅の谷間に溜まった溶け出したアイスの湖に注がれる。
「早く……」
健全な青少年である大助には、あまりに刺激の強い状況である。
「えっと……す、ストローを探さないと、い、いや違う! お箸、じゃなくてスプーンか!?」
周囲を見渡す大助。そこには何故か『牛』と達筆で描かれた看板の下、キチンと正座したルシオンが真顔で二人を見ている。
「ル、ルシオン!? お、教えてくれ。オレはどうしたら……」
「……」
沈黙を続けるルシオンに大助がシドロモドロになる中、雅羅は潤んだ瞳を大助に向ける。
「お口で……」
そう言いながら、胸を寄せる雅羅の水着の肩紐がハラリと落ちる。
「!?」
風呂で上気した大助の顔がさらに真っ赤になり、ぶっ倒れていく。
「それじゃ、頂きま……」
「大さん? 何を頂くッスか?」
「何って、雅羅のアイスを……」
「……大助、かなり重症じゃない?」
「うん……少し、のぼせたみたいだ……雅羅の魅力に……」
「大さん、現実に戻るッス!!」
ペチペチと頬を打つ感触に、大助が目を開く。
そこには、彼を見つめる雅羅のどアップがあった。
「雅羅? ……おわああああぁぁぁ!?」
膝枕されていた雅羅の元から飛び起きる大助。
「ど、どどどどどうして!?」
「どうして、って……大助、お風呂でノボせてぶっ倒れたのよ? ラルクがここまで運んでくれたけど」
大助が周囲を見渡すと、そこは扇風機が回る休憩室であった。
「夢……か」
「まったく、大さんが倒れたって聞いて、あたしと雅羅さんが商売を一旦止めてここまで来たんスよ?」
ルシオンがやれやれといったポーズをする。
「あ……そ、そうか。ありがとう、ルシオン、雅羅」
「ほら、サービスするッスから、これ食べて早く元気になるッス」
ルシオンが大助にアイスバーを渡す。
一口食べた大助が目を丸くする。
「うまい……」
「当たり前ッス! 雪のような舌触りに濃い甘さ、近年の牛乳嫌いの子供を中心に受けるハズ!」
「実際、結構売れてたしね」
雅羅とルシオンが顔を見合わせ笑い合う。
「雅羅?……その、この中の練乳を垂らしたりしてない……よな?」
「え……何ソレ?」
「どういう意味ッスか? 大さん? そんな事したら勿体ないッスよ」
「い、いや!! 何でもない!! 忘れてくれ!!」
慌てて首を振る大助。
「まだノボせてるみたいね?」
「そうッスね。さっきも『好きな人に会えてこうして膝枕してもらってる。それだけでオレは幸福だよ……だから、もう少しだけこのまま』とか言ってたッスから」
「……言ってた? オレが?」
「ええ。他には、ストローやスプーンが何たら、とか……」
アイスを咥えたまま頭を抱える大助。自己嫌悪の嵐が彼を襲う。
「で、大さん? 今度は多分風邪を引くと思うスから、早く服着た方がいいッスよ?」
腰にバスタオル一丁の大助を見て、珍しく真面目にルシオンが指摘するのであった。