天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

最強要塞決定戦!

リアクション公開中!

最強要塞決定戦!

リアクション

 

1回戦第7試合 HMS・テメレーア VS アルカンシェル

 
 
「続いては、ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)さんのHMS・テレメーア対、ええっと、ゴチメイのアルカンシェル? いいんですか、これ?」
「ダメでしょ。ダメ……むぐぐぐ……」
 すっかり、ラブ・リトルの口封じ役になったコア・ハーティオンが、すかさず黙らせる。
「もともとは、十二星華のための要塞ですから、アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)がらみで、データを持ってきているのでは? けど、現在のアルカンシェルとはちょっと違うような……」
「もともとが発掘戦艦ですから、埋もれる前のデータということもありますが、さてさてどうなのでしょうか」
 高天原鈿女の疑問に、とりあえずシャレード・ムーンが答えた。
 もともとアルカンシェルは、十二星華のための秘密基地的な物である。十二星華同様、その存在は隠匿されていたのだが、主である十二星華がほぼ機能を失ったところで大地に埋もれていたのだった。現在稼働しているアルカンシェルは、それを発掘した後に、大々的な改修を施したもので、本来のアルカンシェルとは内外がかなり違う物になってしまっている。
 今回のデータは、アルディミアク・ミトゥナが自身の記憶から再構成したらしいが、一度蘇生しているため記憶はやや曖昧で、そこにココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)たちが口出ししたようなので、ちょっと信憑性には欠けると言うところだ。
 HMS・テレメーアの方は、以前H部隊の中核となった物である。こちらも、かなりの改修を施した戦艦型の機動要塞だ。
「さあ、それでは試合を開始しましょう」
 
    ★    ★    ★
 
「いやあ、こんないい物持っているんだったら、もっと早く紹介してくれればよかったのに。これからは、ここを私たちの基地にしようぜ。秘密基地……うーん、いい響きだあ」
 ジーンと感動しながら、ココ・カンパーニュが、アルディミアク・ミトゥナに言った。
「ええっと、本物のアルカンシェルは、すでにシャンバラ政府に収監されてるんだけど……。これはデータだけだから、基地にはできないからね」
「え〜っ」
 アルディミアク・ミトゥナに注意されて、ココ・カンパーニュが不満そうに口を尖らせた。
 そもそも、このアルカンシェルは浮遊岩塊に擬装されているために、雲海にいる限りはとても機動要塞には見えない。ただの浮き島だ。ただ、そのそこかしこに、ちょっと不自然な砲塔やミサイル発射管などがむきだしになっている。これは、アラザルク・ミトゥナがデータを作成しているときに、ゴチメイたちがあーだこーだ口出しして、無理矢理取りつけた物らしい。結局、建前上はアルカンシェルだが、すでに似て非なる物になってしまっているようだ。
「早く、敵を撃墜したいなあ」
「そうですわねえ。さっそくう、レーダーに、反応がありましたあ。スクリーンに映し出しますねえ」
 血気に逸るココ・カンパーニュに、敵を見つけたとチャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)が報告した。
「げっ、あの艦は、おっちゃんの……」
 HMS・テレメーアの姿を見て、マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が、ちょっと絶句した。
「この間、マサラに声をかけてきた男ですか。よし、沈めましょう」
「ええっ〜」
 素っ気ないペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)の言葉に、マサラ・アッサムが困ったような声をあげる。
「やっちゃえー」
 リン・ダージ(りん・だーじ)もすかさずペコ・フラワリーに賛同した。どうも、変な方向にゴチメイたちの独り身組の怒りの矛先がむいているようである。
「まあ、相手はどうであれ、今は敵だからな。よし、バリアを解除して攻撃を……」
 ちょびっとマサラ・アッサム寄りのココ・カンパーニュが命令しようとした瞬間、激しい振動が機動要塞を襲った。
「先に撃たれた!?」
「いえ、敵要塞からじゃないです。おそらくは、どこかにイコンが……。とりあえず、狙撃されない位置へ移動を」
 困惑するココ・カンパーニュに、アルディミアク・ミトゥナが操艦しているアラザルク・ミトゥナに言った。
 
    ★    ★    ★
 
「敵要塞補足しましたわ」
「了解。データを送ります」
 ジェファルコンをカスタマイズしたザーヴィスチに乗ったエレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)富永 佐那(とみなが・さな)が、HMS・テレメーアにアルカンシェルの座標データを送った。コバルトブルーの装甲に被われたクルキアータに似たシルエットを持つザーヴィスチは、今回はHMS・テレメーアの艦載機として、先行偵察と観測の任務についている。
「了解。受信したわ。HMS・ヴァリアントにデータを送るわね」
 報告を受けたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が、雲海に身を潜めているグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)フィーグムンド・フォルネウス(ふぃーぐむんど・ふぉるねうす)の乗っているHMS・ヴァリアントにデータを転送する。
「データ受信した。位置解析開始。解析終了。照準データ、転送」
「受け取ったのだよ。ターゲット、ロックオン。移動偏差修正。ヴリトラ砲、エネルギー充填完了。発射!」
 フィーグムンド・フォルネウスの解析したデータを受けて、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーがトリガーを引いた。
 浮遊する小さな岩塊群に身を隠していたHMS・ヴァリアントが、満を持して強化型ヴリトラ砲を発射する。狙い違わず、アルカンシェルを直撃した。だが、巨大なアルカンシェルでは、まだ致命傷とはならない。
「対空砲による攻撃来ます」
「よし、敵の注意をこちらにむけさせつつ、後退するのだ」
 即座に来る反撃に、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーは作戦通りの行動を開始した。
「敵は、こちらの奇襲にまんまと引っ掛かってくれたようだな。それでは、我が艦も進軍を開始するとしようではないか、諸君。ホワイトエンサインを高く掲げよ。全速前進。各砲塔、撃ち方始めーっ!!」
 戦いの狼煙が上がったことを確認すると、ホレーショ・ネルソンがHMS・テレメーアの進撃を堂々と開始した。