First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
2.散歩
学校も仕事もお休みの日。
たまにの重なったまるまる1日のお休み。
桐生 円(きりゅう・まどか)は、恋人のパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)と共に、ヴァイシャリーの街を巡っていた。
歩いて店を回ったり、ゴンドラにのって移動したり。
ゆっくりのんびり、会話を楽しみながらの散歩だった。
「意外な食感だけど、しっかりした味で美味しいよ、これ。パッフェル食べてみて!」
最近できたお菓子屋さんで購入したセミフレットを一つ、円はパッフェルに差し出した。
「……うん」
冷たいけれど日本のアイスクリームとは違って、生クリームをメインとしたケーキのようなお菓子だった。
「うん、おいしい……」
円から受け取って食べたパッフェルも、美味しいと頷いた。
「オープンしたばかりだから、混んでたよね」
「この味、なら……当分、混みそう」
「うん、商品が良いと客は絶えないよね……。商品が良くても知られてなきゃ、お客は増えないし」
2人は将来サバゲーショップを開こうと約束をしている。
「宣伝の方法とか、商品の説明……接客とか、違いあるんだろな」
どんな風に宣伝をして、集客をしているのか。
客が入る店と、入らない店の違いとか。
円は最近、そういったことを気にしながらショッピングをしている。
「やっぱり気遣いとかが大事なのかな」
雑貨屋の前で立ち止まり、円はショーウィンドーに映る自分の顔と、斜め上のパッフェルの顔を見た。
お互い、楽しいのだけれど――笑顔がない。
「やっぱり笑顔の練習した方がいいのかなー」
そう思って、円はガラスに映る自分を見ながら、にかっと笑ってみる。
「な、なんかぎこちないかな。パッフェルも練習する?」
円が尋ねると、パッフェルはショーウィンドーの自分の顔を見て、目を瞬かせた。笑顔は出ない。
「最高の笑顔で接客した方が、相手も、自分も気持ちがいいと思うよ。うん、きっと練習してた方が人気がでるよ!」
そう言って、円はショーウィンドーに向かい「いらっしゃいませ〜、こんにちはぁ」とにかにか笑ってみた。
「いらっ、しゃい……こんにちは」
パッフェルも挨拶の言葉を言うが、笑顔はごく微笑といったところだ。
「どちらの商品をおさがしですかぁ〜」
笑顔で自分の顔を見ていた円は――その先の、雑貨屋の店員達の姿に気付く。
店員達はこちらを見て、くすっと笑みを浮かべていた。
「うわっ、笑われちゃった」
途端、円は少し赤くなる。
「ごめんね、笑われちゃったね」
そう円がパッフェルを見上げると。
パッフェルは練習の笑顔よりずっと自然な、穏やかな優しさを含む目で僅かな笑みを浮かべて。
「円、かわいい……」
強引に円を引き寄せ、小さな唇に自らの唇を重ねた。
「ぱ、パッフェル」
数秒のキスが終わると。
「……突然、び、びっくりした」
ちょっと驚いた顔で、さっきよりまた少し赤くなって、円はパッフェルの腕に自分の腕を絡めた。
「次は、どっちに向かおうか?」
そして、円が尋ねると。
「……本屋に、行ってみたい。それから、服を見に」
「そうだね。制服とかも考えなきゃなのかな?」
円の言葉に、パッフェルはこくっと頷いた。
先ほどの雑貨屋の店員は、店名の入ったエプロンをしていた。
「迷彩柄のエプロン……とか斬新かな。客層の幅を広げる為に、ちょっと変わったユニフォームもいいかもね」
でも、と。
「サバゲーショップだけど、やっぱりかわいい感じがいい!」
円がそう言うと、パッフェルも首を縦に振った。
「かわいい、もの、好きな、人にも……入ってもらえる、かも」
「うん、色々なお客さんに来てもらえるようにしたいね」
それじゃ、まずは本屋で情報収集をして。
それから、服を見て見ようと。
円とパッフェルは、急ぐことなく歩いて行く。
沢山の店を巡り、歩き回り。
気づけば、夕日が辺りをオレンジ色に染めていた。
帰りに立ち寄った公園で。
「ねーパッフェルー、キスしたい」
今度は円から、パッフェルにお願いをすると。
すぐに、パッフェルの手が円の顔に伸びて。
円を仰向かせて、唇を重ねた。
円は凄く嬉しそうな笑みを浮かべて。
「パッフェル、楽しかった……っ」
ぎゅっと、パッフェルに抱き着いた。
「ええ。楽しかった、わ」
パッフェルも円を愛しげに抱きしめ返した。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last