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第四師団 コンロン出兵篇(第1回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第1回)

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 一条アリーセは、クィクモで医療活動を行いながら、クィクモの人たちからのヒクーロへの感情を探っていた。
 一条は、今の空中戦力では「コンロン最強の飛空艇団」を相手にするのは厳しいだろうと、そこに龍騎士が加わればお手上げだ、と思う。それを防ぐには、ヒクーロが龍騎士と結ぶ前に、クィクモとの関係を何とか、修復したいところ、である。そのための一歩である。
 だが、一条が医療活動に忙しくしているときに、
「ヒクーロに、すでに部隊が向かった……? 何故。魔物を何とかするため、ですか。
 確かに、ヒクーロは魔物に悩まされている。それを助けることでこちらがヒクーロ側と友好を結ぶきっかけにはなるかもしれませんね。しかし、下手に刺激はしないといいですが」
 会議において、ヒクーロの空戦力を教導団側に取り込めれば、ということは二部隊長から進言された。
 しかし、クィクモとヒクーロの関係はあまり、良好ではない。
 一条からすれば、教導団はすでに協力を申し出たクィクモに味方する形でコンロンに入っているので、そう事が上手くいくだろうか、と思える。また、そのことについてもクィクモ側はどう思うだろう。よくは思わないかもしれない。クィクモ側の意思も無視するわけにもいかないはずであるが。戦闘部隊を率いる二部隊長は、今後の戦闘を見据え、とにかく戦力を増大することに意識がいっているのだろう。
 
 リリ マル(りり・まる)が、一条の勤務する診療所へ資料を運んでくる。また、一条は、町の人々から幾つか話を得た。
 かつては、ミロクシャがコンロンの首都であり、コンロン帝を中心にまとまってきた。
 クィクモ、ヒクーロはもともとコンロン雲海に屯した雲賊(辺境の蛮族にあたる存在)らを排除する軍事組織であったが、徐々に独立し軍閥化していくことになる。
 クィクモはまた、立地的にもシャンバラとの飛空船貿易の窓口となって潤い、飛空船の役割と雲賊との戦闘から貿易メインにシフトしていった。ヒクーロはその間も、雲賊と戦い続け、軍事力では最強の勢力となった。(この辺りから独立化が進む。)
 ヒクーロは始めは、ミロクシャを中央とするコンロン全土のため、辺境から侵略を試みる雲賊を討伐しそれから守る役割を積極的に担っていたが、各軍閥が独自の発展を遂げ、一方のヒクーロが貿易で潤っているところなどを見て、在り方を変えてきたようである。抑えても反乱を繰り返す雲賊らを力で抑え続けるよりは、取り込んでしまう。ヒクーロは、雲賊と取り引きを結び、雲賊はヒクーロの外の貿易船などを襲うようになった。
 ヒクーロが雲賊と手を結んでいるのではないか、ということは、この辺りから来るクィクモ付近の住民らの憶測という印象が大きいように思われた。
 
「元気なだけが取り得のやつらが病院にいても、邪魔なだけだからって追い出されちまった……」
 久我 グスタフ(くが・ぐすたふ)は、仲間になったばかりの空賊連中を引きつれ、クィクモの町を歩く。
「こういうときはまぁ、一杯やりに行くかぁ」
「ですねぇ」「さすが久我の兄貴」「行きましょうやぁ!」
 中心街の酒場に入ってくる久我一行。
「おお。教導団の方かね」
「ああ、席は空いている?」
「おお、どうぞこちらへ」
 ぱーっと飲み食いして、クィクモの人らに「教導団はいい客になる」とでも思わせておけば、これから先色々便利だろうさ。そう久我は思った。「まァ、これも仕事と思えばいいさ?」
「ですねぇ」「さすが久我の兄貴」「飲みましょうやぁ!」