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リアクション
メニエス・レイン(めにえす・れいん)。
「――それなりに格好は付いたわ」
彼女の言葉に、電話の向こうで声が笑う。
『だから、言っただろう? 君の一言は、もう君が思っている以上に力を持っているんだ』
それに、と彼は言う。
『皆、ウェスト博士がばら撒いた“玩具”を使いたくて、うずうずしていただろうからね』
「遊び方を分かっていると良いのだけど」
仰いだ空を、シュバルツ・フリーゲとバルバロイを先頭にしたシュメッターリンクの部隊が飛ぶ。
向かう先には、ヴァイシャリーの街があった。
雲海での戦闘
ヴァイシャリー南部の雲海にて。
迫りくる龍騎士団と巨大空母に、
シャンバラのイコン部隊が相対していた。
クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は、
パートナーの島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)とともに、
自らイコンLAHに搭乗し、
シャンバラ教導団【新星】のリーダーとして、イコン部隊を率いる。
「国軍である我々が守るのはヴァイシャリーだけではない。
シャンバラ王国全てだ」
クレーメックは、教導団第四師団中尉である。
シャンバラを守るという責任を強く持ち、
【新星】のイコン部隊を指揮していた。
【新星】のイコン部隊は、2体で1組の編成を行い、
お互いが、また、味方部隊が孤立しないように注意していた。
ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)と
フィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)のクェイル、
香取 翔子(かとり・しょうこ)と
クレア・セイクリッド(くれあ・せいくりっど)の赤城は、
その中で、対龍騎士戦を担当していたのだが。
「狙うなら、小物ではなく、出来るだけ大物を狙いたいぜ!」
ジェイコブは、従龍騎士ではなく、
龍騎士を目標としている。
そのことを、翔子も承知しており、協力することにする。
(リスキーな策なのは承知の上だけど、今回は仕方ないわ)
機体に派手なカラーリングを施して、
最前線に躍り出ると、翔子は龍騎士を挑発する。
「私はシャンバラ教導団第四師団大尉、香取翔子!
エリュシオンの龍騎士は誉れ高き者のはず。
それをこのような奇襲で、
ヴァイシャリーの無辜の民を襲撃するとは!
龍騎士の誇りがあるのなら、
私達と戦いなさい!」
一方、パートナーのクレアは味方機に通信を行い
龍騎士の包囲網を完成させる努力を行っていた。
「頭に血が上った龍騎士が突っ込んでくるはず。
こちら側は冷静に対処しないとね!」
「そこまで言うのならば、私が相手をしよう!」
戦闘にいた龍騎士の一人が、槍を構えて突撃してくる。
「かかったな!」
ジェイコブのクェイルは、翔子の赤城が、
反撃しながら後退してくるのを補佐しつつ、
龍騎士の死角をついて攻撃する。
性能に劣るクェイル、
しかも、ジェイコブのパイロットとしての練度はさほど高くない。
だが、【新星】の包囲網で、孤立した龍騎士は、
徐々にダメージを蓄積させていき、ついには撃墜された。
「よし、次の奴を相手だ!」
「落ち着いてください。これで、敵側の警戒も強まったはずですわ」
ジェイコブのパートナーのフィリシアが、猪突猛進な攻勢に出ないように諌める。
■
こうして、【新星】が、龍騎士の包囲網を展開する中。
九条 風天(くじょう・ふうてん)と
白絹 セレナ(しらきぬ・せれな)の機体、禍雷は、
雲の中に潜み、龍騎士団の隙を伺う。
セレナにより、迷彩塗装で白く塗られた禍雷が、
シャンバラ側と撃ち合いをしている従龍騎士の一団を狙う。
「そこです!」
風天は、ダブルビームサーベルで、何のためらいもなく、
従龍騎士の身体を切り裂いた。
(エリュシオンにはティセラを操り、
カンバス・ウォーカーさんを殺ってくれた、
大きすぎる借りがあるのでトコトン返してやるとしましょうか)
すぐさま、禍雷は離脱して、雲の中に身を隠す。
セレナは、怒りを冷静な一撃に替えるパートナーを見て、
その身を案じる。
「お前は存外、執念深いからなぁ……、
勇み過ぎて失敗するんじゃないぞ」
「白姉、わかっています。
ボクも、まだイコンの操縦には慣れていません。
それに、白姉も一緒に乗っているのですから」
風天は、努めて冷静にパートナーにうなずいた。
■
他方、百合園生の崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)と
崩城 理紗(くずしろ・りさ)は、ワイバーンのイトハに乗り、
ヴァイシャリー防衛を目指していた。
「まったく、闇龍の時といい総督府の件といい……人気者はつらいわね」
ヴァイシャリーが幾度も危機に陥っていることを、
亜璃珠は嘆息する。
「けど、私たちも退くわけには行かないでしょう。
私たちにも意地があるのよ」
沿岸部には、百合園生が編成した、【ラビット隊】が布陣している。
陸戦型であるキラーラビットの部隊である。
雲海での戦闘で、龍騎士団を疲弊させ、
沿岸部から狙撃できるよう、亜璃珠は誘導を試みる。
「……大帝さまは悪い人じゃないんだよね
悪い人はきっと王様になんかなれないはずだし。
多分、どっちもいろんな理由と、譲れないものがあって……。
うーん、これが戦争なのかなあ」
イトハの後部座席に同乗している理紗は、
亜璃珠が龍騎士を引き付けつつ、
徐々に沿岸部に連れて行こうとするのを見ながらつぶやく。
「がはは! 俺様はサイキョーのモヒカン、ゲブー様だぜ!」
そこに、ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)と
ホー・アー(ほー・あー)の乗る
愚零吐・ゲブー・喪悲漢が飛び出してきた。
「百合園は俺様のモノだぜ!
それをかっさらおうったあいい度胸だな!
安心しな、俺様が守ってやるぜ!」
ゲブーは、亜璃珠に向かって言う。
「は? 待ちなさいよ、何言って……」
「気にすんな! おっぱい洗って揉まれるの待ってろや!」
ゲブーは、エッチな巨大同人誌を振りかざす。
「がはは、てめぇもこのエロ本がみたいんだろ? そらよ!」
「ここは無駄なエネルギーを使わないほうが歓声があがるのである」
ホー・アーは、イコンの残りエネルギーに注意する。
「なめるな!」
「ぎょわあ!? ひでぶ!?」
しかし、あっというまに敵に囲まれて、愚零吐・ゲブー・喪悲漢はぼろぼろになる。
「うむ、さすがは龍騎士団。強いのだな、完敗だ!」
ホー・アーは、
鼻血を流して気絶しているゲブーを抱えて、
墜とされた愚零吐・ゲブー・喪悲漢から脱出すると
偽龍翼で堂々と飛び去って行った。
「なんだったのよ、あれは……」
気を取り直して、亜璃珠は冷静さを失っている龍騎士団を誘導することを再開した。
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