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闇世界の廃病棟(第3回/全3回)

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闇世界の廃病棟(第3回/全3回)

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第6章 求め合う魂

-PM22:00-

 仲間の生徒たちに置いていかれた緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は、彼らを探そうと1人で実験場内を歩いていた
「うう・・・今回は置いていかれちゃいました・・・」
 彼らの行きそうな場所を探し歩いていると、時刻はいつの間にか夜の10時を回っていた。
 ガリッギィィイッ・・・ギィギギ。
 金属製の床を爪で引っ掻く耳障りな音が徐々に近づいてくる。
「おやおや・・・。あなたのことを探しているわけじゃないんですけど・・・ねっ!」
 突如ギロチンのような刃が天井から襲いかかり、とっさにキサハンマーで受け止めた。
「(さすが兵器として作られたことはありますね・・・並みの人間でしたら受け止めた瞬間、腕が折れていますよ)」
 ハンマーを握り締める手が衝撃によってビリビリと痺れる。
「三十六計逃げるに如かず・・・って簡単には逃がしてくれませんよね・・・」
 ひっついてる両足を振り回し、歪な刃で遙遠の頭部を狙う。
「このっ・・・通しな・・・さいっ!」
 ガンッガキィッ。
 ハンマーと刃がぶつかり合う金属音が冷たい空気を振動させ辺りに響き渡る。
「―・・・不毛な消耗戦をするつもりはありません・・・」
 氷術がハンマーを伝って亡者の身体を凍てつかせていく。
「頭は生きているうちに使わないと意味がありませんからね」
 エレベーターへ駆け込み、Fエリアへと上っていった。



「カードキー集めに行った生徒たち、なかなか戻ってこないな」
 Fエリアの奥のドアの前で、風森 巽(かぜもり・たつみ)たちはカードキーを探しに行った生徒たちを待っていた。
「実験場とかにもあの人いなかったよね・・・」
 ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)は床を見つめ顔を俯かせる。
「(どうか無事でいますように・・・)」
 目を伏せて島村 幸(しまむら・さち)は祈るように、片手をぎゅっと握り締めて胸元に当てた。
 幸の傍らで後先考えずに無茶をしないかと、アスクレピオス・ケイロン(あすくれぴおす・けいろん)は彼女を心配そうに見つめる。
「遅くなりましたー、かなり待たせちゃいましたか?」
 陽太たちがカードキーを持っている片手を振りながら、彼らの方へ駆け寄ってきた。
「それじゃあこれ、お願いしますね」
 赤のカードキーを巽に手渡してやる。
「後は任せたぞ・・・」
「えぇ・・・全員一緒に必ず戻ります」
 永太は無事に帰還できるよう願いを込めて、黒のカードキーを幸に渡した。
 壁の差込口に2枚のカードを入れると、ゆっくりとドアが開かれていく。
「ボクたちに出来るのはここまでだね」
「彼らを信じて待ちましょう・・・」
 クリスは祈るように見つめながら、扉の向こうへ行く彼らを見送った。



「生物実験か・・・蒼を連れて来なくてよかったな・・・」
 エレベーターの前にたどり着いた椎名 真(しいな・まこと)は、ふぅとため息を漏らして呟く。
「できるとこまでいいから、蒼くんのことフォローしてあげてねぇ」
「あぁ・・・」
 後ろから着いて来ている獣人の気配を察知した佐々良 縁(ささら・よすが)が、真に聞こえないように小声で佐々良 睦月(ささら・むつき)にこっそり言う。
「このボタンを押せばいいのか?―・・・のぁあっ!」
 柱の影から飛び出してきた何者かが真に抱きついた。
「そ・・・蒼!何でこんなところに!?」
「だって兄ちゃん・・・夕方いなくなって朝まで帰らない・・・心配だもん・・・」
 真に抱きつき見上げたまま彼方 蒼(かなた・そう)は、黒色の双眸を潤ませて尻尾をパタパタと振る。
「あれれぇ蒼にー・・・怖いのかー?」」
 眉をへの字にして怯えている蒼に対して睦月がいたずらっぽく見つめてからかう。
「こ、怖くなんかないよ」
 ぷぅっと頬を膨らませた彼が反論する。
「ふぅん、ならいいけどよぉ・・・。ちみっ子なんだから大人しくしてろよ」
「ぐぐ、ぐ・・・睦月のほうが年下じゃないかーー!」
 挑発気味に言われた蒼は眉を吊り上げ睦月に向かって、噛みつきそうな勢いで怒鳴った。
「静かにしろ、ゴーストが来たらどうするんだ」
「―・・・ご・・・ごめんさぁい」
 パートナーに叱られてしまった蒼は、瞳に涙を浮かべてしゅーんとした顔をしてしまう。
「さて・・・ここからが本番だ。皆・・・覚悟はいいな?」
「生きて帰るための覚悟ならあるわよ」
 遠野 歌菜(とおの・かな)が真の傍らで笑いかける。
 狂気に満ちた暗闇へ通じる扉が閉まり、死者が蠢く死の匂いが満ちた場所へ彼らを誘う。