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闇世界の廃病棟(第3回/全3回)

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闇世界の廃病棟(第3回/全3回)

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第9章 執念の逃走

-AM4:00-

「この私の知能さえあれば、また新たな兵器を作りだせるんだからっ」
 いざとなったらアリアを盾にしようと、姚天君は少女を引きずりながら実験場のエレベーターに乗り込む。
「もうすぐ時間だわ。外でまた実験体を確保しなきゃ」
 エレベーターから降り、階段の方へ向かう。
「残念だが、そのような時間はないようだ」
 先回りして待ち構えていた垂が逃がすまいと立ちはだかる。
「難しいことは解らないけど、命を弄んじゃいけないことくらいは僕にだってわかるよっ!」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)がズンズンと姚天君に詰め寄り、キッと睨みつけた。
「命を弄ぶだけでも許せないのに、それをモノの様に使い捨てるなんて正真正銘のクズだな・・・。来なよ、相手してやるからさ」
 相手を鋭い目つきで睨みながら垂が吐き捨てるように言い放つ。
「フンッ、来いと言われて来るヤツなんていないわよ?」
「人の命を粗末に使うヤツを見過ごせるほど、俺は出来た人間じゃねぇんだよ!」
 逃げようとする姚天君の腕を是空が掴んだ。
「この私にそんなことしていいと思っているわけ?」
 ニヤッと笑う彼女に、是空はぞくっと背筋が凍りつくような悪寒を感じとった。
「貴様らの相手はこの子たちがしてくれるわ」
 天井の金網を突き破り、ゴーストたちが床へ落下する。
「あなたたち、こいつらをやってしまいなさい♪」
 姚天君が命じるがまま垂たちに襲いかかる。
「お・・・おのれぇえっ!逃げるのか、卑怯者がぁああー!!」
 ヒューマノイド・ドールの裂けた心臓部から強酸のような煙に阻まれてしまう。



「今・・・何か聞こえなかったか?」
 カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)はキョロキョロと辺りを見回し、耳を澄ませて音の発生源を探ろうとする。
「実験動物飼育場から逃げ出した犯人が近くにいるのかもしれないな」
 真っ暗な廊下の奥を睨むようにエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が視線を向ける。
「もうこんな怖い目に遭うのは、これで終わりにしなきゃダメなんだヨ」
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は犯人を倒そうと意気込んでいた。
「どっちが終わるのかしらね」
「―・・・えっ」
 物陰に潜んでいた姚天君が、クマラの眼前へ火術を放つ。
 とっさにエースが彼の身体を抱きかかえて床へ転がった。
「あら残念ね、せっかく丸焼きにしてげようと思ったのに」
「生者の邪な欲望のために、死者を冒涜する行為は決して許されるものではない」
 エースは床に倒れたまま姚天君を見上げて睨みつける。
「可笑しなことを言うわね。探求のために犠牲はつきものよ?そうやっていろんな技術が進歩していったんじゃないの。そもそも世の中、利用する側と利用される側どちらかしかいないでしょ」
「じゃあその業を持って倒れるのね!」
 姚天君がぱっと後ろを振り返るとルカルカの姿があった。
「お前だけは許せない!死んで詫びろ!!」
 高周波ブレードで乱撃ソニックブレードを放ち急所を狙う。
「まだまだぁあっ!」
 轟雷閃とソニックブレードの連撃を繰り出す。
「今よ!」
 号令をかけるとソファーの傍に隠れていた渋井たちが姚天君を倒そうと姿を現す。
 シャーロットとエースのパワーブレスで強化した渋井が銃のトリガーに指をかけ、シャープシューターで無数の銃弾をくらわす。
「ふぅ危なかったわ」
 ゴーストを盾にして姚天君は襲撃を全てかわしていた。
「やれるもんならやってみなさいよ!」
 心臓を狙うダリルの斬撃の盾としてアリアを見せつけた。
「その子を離せ・・・もう息が限界に近いじゃないか」
「えぇ無事に外へ出られたら、その辺にポイしとくわ」
「酷いですぅ・・・女の子をそんな目に遭わせるなんて!」
 人を物扱いする姚天君に腹を立てたシャーロットが怒りの表情をする。
「私だって女の子よ?大勢で倒そうだなんて酷いわね♪」
 敵意の眼差しを向けるシャーロットに、姚天君はバカにしたような言葉を返す。
「いや、お前はゲテモノだ」
「こんな可愛い女の子いじめちゃイヤッ」
 思いっきりぶりっこな態度をとる姚天君に誠治は嫌悪のあまり吐きそうな気分になる。
「それじゃあまたどこかで会いましょう」
 片手を振るとアリアの腕を掴んだまま、病棟の外へ向かっていった。



「さぁて、もうすぐ出口ね」
「そうはさせないわ」
 美羽とベアトリーチェが手術室の近くで待ち構えていた。
「ヘルドさんの気持ちを利用して、人間が材料の生物兵器を作らせるなんて・・・・・・絶対に許せません!」
 ベアトリーチェの雷術によって強化した美羽の轟雷閃の一撃を姚天君にくらわそうとする。
「う・・・油断しちゃったわ」
 美羽が放った一撃が姚天君の片足を斬りつけていた。
「人質も無事保護しました」
「これであなたを守る盾はなくなったわよ」
「ふんっ、貴様らのような小娘どもなんかに易々と捕まるもんですか!」
 ファイアストームの熱風を放ち、彼女たちを追い払おうとする。
「くぅっ、熱っ・・・・!」
「それ以上近寄ると炭にするわよ?あーっははは!」
「まったく女と思えない下品な笑い方ですね」
 奈落の鉄鎖が姚天君の身体を縛る。
「私は・・・私は・・・・・・彼らをこんな風に利用し捨てた貴方を、いいえ鏖殺寺院を決して許しません!」
 幸は憎しみを込めた口調で言い放つ。
「絶対に許さないっ・・・これ以上、もう誰も傷付けさせないんだからっ!届いて、私の歌・・・」
 歌菜のミンストレルとしたの歌が、幸の能力をアップさせ拘束力を強める。
「この小娘どもがぁああっ!―・・・うぐっ」
「2度とさえずれないようにしてやろうか?」
 光条兵器の光鞭を姚天君の首に巻きつけ、ぐぃっと引っ張った。
「ちょっと手間取っちゃったけど・・・なんとか追いつたよ」
「観念しな!」
 創造主が放ったゴーストから離れ、傷を負いながらもライゼと是空が駆けつけた。
「とりあえず安楽死にする?それとも・・・もっと惨めな最後にしてやろうか?」
 縁は機関銃の銃口を向けながらニヤッと笑う。
「人質は解放されたようね。これで心置きなくお前を殺せるわ!」
「待って!ここでコイツを殺すのは簡単です。刑務所に入れて生涯償わせましょう」
「たっぷり仕置きされるといいぜ!」
 主犯者を殺そうとするルカルカを止め、幸が姚天君を務所送りにしようと提案する。
「今の時期、とっても寒いようですからね・・・死ぬより辛い目に遭うんでしょうね」
 冷ややかに耳元で囁くように言う。
 ようやく観念したのか、姚天君は力なく床にへたり込んでしまった。