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リアクション
第8章 生命を冒涜されし者
-AM1:30-
「逃がすなぁあっ!」
色即 是空(しきそく・ぜくう)たちが姚天君を逃がすまいと後を追う。
「こういう仕事は俺たちの役目なんだよねぇ。だからさぁ・・・あんたは行って、思いを果たしてくれ・・・さっちゃん」
「ここは俺たちが止めるから、島村さんたちは早く行ってください!!」
「―・・・すみません、ありがとうございます・・・」
友の言葉に答えようと、幸は兵器の創造主を追いかけていく。
「あれがあいつの心臓か・・・とりあえず全部潰せばいいんだよな?」
「そうだ・・・」
真は鉄甲を手にはめ直し、標的を見据える。
「危ないから離れていろよ蒼。あ・・・蒼はどこに・・・。おいっ蒼ー!」
獣人のパートナーの姿を探し当たりを見回す。
「蒼にーっ!そんなところで何やってるんだよ!」
恐怖のあまり蒼はゴーストクリーチャーの近くで動けなくなっていた。
「ふっ・・・ふぇえぇっ・・・」
今にも泣き出しそうな顔をし、びくびくと震えていている。
「くそっ、俺の位置からだと間に合わないっ」
怯えて動けない蒼を助けようと睦月が彼の元へ走るが、ムカデの化け物の牙が小さな獣人を噛み砕こうと凄まじいスピードで迫る。
獲物の身体を貫く、ドンッと鈍い音が場内に響く。
「―・・・だ・・・大丈夫か・・・蒼・・・・・・」
真が蒼の身代わりになり、亡者の牙に餌食になってしまった。
「蒼っ・・・!早く・・・カガチのほうに逃げろぉおお!!」
気を失いそうになりながらも唇を噛み千切りそうなほど噛み締め、痛みによってなんとか意識を保ち、蒼を助けようと叫ぶように声を上げる。
「早く離れるんだ!」
「やだぃやだぁっ。兄ちゃん・・・兄ちゃぁああん!!」
カガチに抱きかえられ、真の傍から離れされてしまう。
「こいつを守っててやってくれ」
「―・・・あぁ」
すっかり怯えきってしまっている蒼を、睦月がそっと抱き締めて宥めてやる。
「ぐがぁはぁあっ!」
牙がミシッミシィと音を立てて、骨にくい込んでいき真の身体に激痛が走った。
金網の床へ放り投げられ、叩きつけられてしまう。
ベシャァアッ。
飛び散った鮮血が蒼の顔にかかり、大切な兄が瀕死の状況に陥ってしまった光景を直視してしまい、ショックのあまり彼は気絶してしまった。
「(肋骨全部・・・イッたかな。牙が貫通してたから当然か・・・。ははっ、穴空いちゃっているよ・・・)」
手で触れた身体の感触は、腹部から背にかけて貫通している。
「(やばい、意識が・・・)」
「し・・・ぬな・・・・・・ま・・・・・・こと・・・」
「(誰か呼んでる・・・誰だろう。知っている・・・暖かい声・・・)」
「死ぬなっ、真ー!!こんなところでくたばったら承知ないぞ!ナラカの果てまでも追いかけて、そこからあんたを必ず引きずり戻してやる!!」
消え入りそうな彼の魂を呼び戻そうと、カガチが必死に呼びかけていた。
「なぎさんがキュアポイズンかけてくれて、あんたの天使の救急箱で応急処置をしてくれたんだよ!」
「そうか・・・ありがとう」
「てぇかあのあれだ、仲間護ってくたばるとかそういうおいしいシーンあんたらだけにゃやれんねぇ」
「(ありがとう・・・名前を呼んでくれて・・・)」
真はゴーストに立ち向かっていく友の背を見送りながら微笑んだ。
「俺の友・・・椎名くんの仇っ、燃え散りやがれぇえっ!」
百目魔君の心臓を目かげて、バスタードソードを横薙ぎに振るい爆炎波を放った。
ビシャシャッ。
斬ると焼かれるを同時にくらった数十個の心臓が割かれ、ゴーストの身体を焼いていく。
「(真おにいちゃんが死んだみたいな言い方ですねー)」
捕まえようとする手から逃れながら叩き潰していくなぎこが心中で呟いた。
「もう一発・・・ありゃっ?」
カガチが潰したはずの心臓の細胞がくっつき合い再生してしまった。
「うーん再生能力か、厄介だな・・・」
後方から和弓で援護している巽は顔をしかめ、どうやって倒そうか思考を巡らせる。
「これじゃキリがないな」
ゴーストの血に濡れたグレートソードの刃を床に下ろし、ソウガは片腕で頬の汗を拭う。
「確実に倒すとしたら誰かが、接近戦をしなければいけないかもれないな」
「カガチがやるそうですー」
「えっ、えぇえ!?」
なぎこが勝手にカガチを特攻役に推薦してしまう。
「しょうがないですねぇ、なぎさんも手伝います」
「ボクもやるよー」
彼1人だと不安だと思ったなぎことティアも接近戦に参加する。
「そんならオレらは遠距離やね」
陣と巽は後方で援護することにした。
「んじゃいっちょ、やるかっ」
生物兵器を外に出してたまるかと、ゴーストを睨むように見据えて倒そうと挑む。
-AM2:10-
再生しようとしているゴーストの皮膚を武尊の術が再び溶かす。
「セット!ここですかぁ・・・ってかぁ!?」
ムカデの化け物の身体を包み込むように、陣が火術を応用させた火柱を発生させる。
「今やっ!」
「はい、ご主人様」
ハウンドドックの銃口をターゲットの心臓へ向け、トリガーを引き銃弾を浴びせた。
銃弾を補充しダンッと壁を蹴り、叩きつけようとしてくるムカデの尾を避け銃弾を撃ち込む。
巽は後方から和弓で援護し、彼に気をとられている隙にティアとなぎこがハンマーで殴りかかる。
潰した心臓からドプッと血が流れ出る。
「あと残り30個です!さぁカガチ、やっちゃってください!」
滑るようにターゲットの懐に飛び込み、爆炎波をくらわす。
炎の刃風が百目魔君の身体を斬り裂く。
「最後に轟雷閃を・・・」
「兄貴いったん退いてくださいっ」
叫ぶように声を上げる陣の方へ振り返った瞬間、カガチは百目魔君の手に捕まってしまう。
「くそっ、離せぇえ!」
なんとか逃れようと必死に暴れるが、相手のパワーに敵わず身体を拘束されてしまった。
「んっぐぅ・・・」
ズブズブッとゴーストの手が腕にめり込み、叫びそうになってしまうが、休んでいる真に聞こえないようになんとか耐えた。
「はぐぅあっ、ぐがぁぁあぁあ゛ー!!」
腕を引き千切られそうになり、激痛のあまり耐え切れなくなったカガチは声にならない悲鳴を上げる。
皮膚だけでなく肉まで裂かれていた。
「このままでは再生してしまうぞ!」
高速で動き回る亡者に挑もうとソウガはバーストダッシュのスピードで間合いを詰め、チェインスマイトの連撃をくらわす。
「さすがに素早いな・・・そう簡単に何度も攻撃させてくれないようだ」
「ソウガ、百目魔君さんが場内を出ていってしまうわ!」
「まずいな・・・あと数時間でトンネルが外と通じてしまう。外へ出られたら大変なことになってしまうぞ」
バーストダッシュでなんとか追いつくが、肝心の斬撃がなかなか当たらない。
捕らわれているカガチは、百目魔君が移動する度にその衝撃が身体中に伝わり、振動の影響で彼は気絶しそうになる。
「くそっ、気分悪ぃ・・・・・・でも、黙って見てる訳にもいかねぇんだよ!!」
周は兵器にされた死者に手をかけることを躊躇いながらも、ツインスラッシュの剣圧でゴーストの身体を斬り裂く。
ズゥウウウンッ。
100個の心臓を潰された百目魔君は轟音を立てて床へ倒れこみ、身体を維持できなくなった亡者は腐り蕩けていった。
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