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聖ワレンティヌスを捕まえろ!

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聖ワレンティヌスを捕まえろ!

リアクション

■□■2■□■「今回のMK5は『モテ男女を殺す五人組』ですッ!」

 ワレンティヌスが森の奥へ走っていくと、目の前にエリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)と、
 パートナーの剣の花嫁クローディア・アンダーソン(くろーでぃあ・あんだーそん)
 同じくパートナーのドン・キホーテの英霊アロンソ・キハーナ(あろんそ・きはーな)がいた。
 「聖ワレンティヌスの英霊だか知らないけど、チョコを奪っていくのはいただけないわね。
  食べ物を粗末にする不届き者にはオシオキが必要ね!」
 光条兵器のスーパーバズーカを構えたクローディアが宣言する。
 「食べ物を粗末にするとはなんたる罰当たりな。
  このような所業、騎士として許すわけにはいかない。
  英霊だかなんだか知らんが成敗してくれようぞ」
 アロンソも、自転車にまたがりランスを構えて宣言する。
 「な、なんなんだおまえら!?」
 「正直、私にはバレンタインなどどうでもよいのだが……。
  パートナー達が『食べ物を粗末にするな』と怒っているのでな」
 ひるむワレンティヌスに、エリオットが言う。
 「食べ物の恨みよ! そぉれ、オシオキのいっぱ〜つ!」
 「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ! 騎士道に則り、いざ参る!」
 「ぎゃああああああああ!?」
 クローディアがスーパーバズーカを撃ちまくり、アロンソが突撃してランスバレストを放つ。
 「ほらほら、キミが泣いて謝るまで撃つのをやめないわよ!」
 クローディアは特にノリノリであった。
 (それにしてもクローディア殿は恐ろしい……。
 改めて、食べ物は粗末にしないよう心がけることにしよう。バズーカ食らいたくないし)
 アロンソは、こっそりそんなことを思っていた。
 みかねたエリオットがクローディアに言う。
 「『捨てる』ならまだしも『隠す』程度なのだから、まだかわいい方だと思うが……」
 「あはははは! ターゲット、ロックオン! 粉砕するほどファイヤー!」
 しかし、クローディアは聞いていないのであった。
 「ぎゃああああああ、やーめーろー!」
 「泣いて謝らせる」の前半は微妙に達成できた状態で、ワレンティヌスが逃げ回る。

 「待ちなさいッ!!」
 そこに、黒衣の仮面男と、チビッコドラゴニュート、狼の獣人が現れる。
 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)と、
 パートナーのマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)
 同じくパートナーのシャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)であった。
 「バレンタインデーとあらば、このイケメンヒーロー(自称)の下に
  全世界5人のクロセルファンと5億人のクロセルファン予備軍から
  ギッシリどっさり本命チョコが届いて然るべきだと思うのですが……。
  手元にあるのは、市販の安チョコとかカカオ豆とか一目で義理チョコとわかるものばかり。
  ワレンティヌス、これは俺の人気に嫉妬しての犯行ですね!?
  覚悟せよワレンティヌス、ジェラしい炎に身を焦がす愚か者め!
  これは俺への挑戦状と認識しました!
  このお茶の間のヒーローが、直々に引導を渡してくれましょうッ!!!」
 木の上から、クロセルが高らかに宣言する。
 「お礼に一割チョコを頂戴するため……。
  もとい、正義のためにチョコを奪還しようではないかッ!」
 よだれをたらしながら、マナが言う。
 「マナ様に差し上げるはずだった手作りチョコを奪われてしまうとは、一生の不覚です!
  どうせなら、クロセルのヤツにくれてやる予定だったカカオ豆を持っていけば良いものを……。
  マナ様への愛が詰まったチョコを奪い去るとは……。
  さてはワレンティヌスという者、マナ様に横恋慕しているに違いありません!
  まったく、クロセルの阿呆だけでも面倒だというのに、
  これ以上マナ様のお側に、情操教育に悪そうな変質者を近付けるわけにはまいりません。
  これは後々の禍根を断つためにも、早々に排除しておくべきですね。
  ワレンティヌスめ覚悟せよ!
  それがしが徹底的にとっちめてくれましょう!」
 マナ様至上主義者の側仕え、シャーミアンも、ワレンティヌスに怒りの炎を燃やす。
 「何言ってんだおまえら……ぎゃああああああああ!?」
 クロセルとシャーミアンの本気の攻撃に、ワレンティヌスが逃げ出す。

 「待て!」
 「今度はなんだよお!?」
 その先に、さらに水神 樹(みなかみ・いつき)が現れた。
 「バレンタインのチョコは、相手への想いをたっぷりと込めた凄く神聖なもの。
  普段は自分の気持ちを素直に言えない人にとってはとても大切なアイテムにもなる。
  それを奪うなんて許せません!!」
 (大好きな恋人の佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)さんのために作った
  ビターチョコのトリュフを奪うとは……。
  お店でいいチョコを選んで頑張って作ったのに。
  許せません!)
  怒りに燃えた樹が、必殺技を放つ。
 「水神の技……お見せしましょう!」
 「うわあああああああああ!?」
  ワレンティヌスは必死で、怒りのイルミン生達に向き直る。
 「どいつもこいつもまとめてぶっ飛ばしてやる!」
 「そうは行くか! 観念するのじゃ!」
 「参りましょう、アーデルハイト様!」
 樹とともにやってきていたアーデルハイトも現れる。

 ワレンティヌスがついに追いつめられたかと思われたそのときであった。
 
 英霊の相馬 小次郎(そうま・こじろう)がカラー爆煙を放ち、戦隊ヒーローが現れた。
 黒子衣装の志方 綾乃(しかた・あやの)が名乗りを上げる。
 「やっぱり黒子なのにMKレインボー、
  いい加減マンネリ気味だけど志方ないよね。
  【またこいつかよ】志方綾乃!
  チョコで悩める子羊達に、黒い虹の天使が祝福してあげますっ!」
  綾乃は思いっきりテロルチョコをばら撒いた。
 小次郎のパートナーの茅野 菫(ちの・すみれ)も、腕組みで仁王立ちして宣言する。
 「この世にヴァレンタインあるかぎり!
  妬みの炎があたしを焦がす
  MKブラック【胸はこれから】大きくなるのよ 茅野菫。
  ここに参上!
  ………………ほんとにこれから大きくなるんだもん」
  だんだん自分の胸を見て、胸を撫でて、声が尻すぼみになっていく菫であった。
 「色だけで正体がばれてしまう【マジでキンピカ】MKゴールド!
  キンピカネタ実は皆に飽きられてないかと不安です☆
  それでもやっぱり輝きます。
  なぜってこれがアイデンティティだから。
  ボクの個性なんだよ、志方ないんだよ!
  MKレインボーとMKブラックが暴走しすぎないか心配で参加したんでヨロシク!」
 エル・ウィンド(える・うぃんど)が宣言する。
 「MKショッキングピンクこと【無謀な関西弁】日下部社!
  俺のモテ期はどこ行った!?
  毎日発情期な奴らをぶっコロス為に只今参上!」
 日下部 社(くさかべ・やしろ)が、ピンクの全身タイツを身にまとって現れるが、溜息をつき始める。
 「つか、何やねんピンクって……普通こういうのは女がやるもんやろ?
  ええよな〜、綾乃さんはレインボーって……贅沢過ぎやろ……。
  エルさんもすみすみも自分のカラーに合っとるのになして俺はピンクやねん
  ……しかもショッキングって目にもキッツイわ〜!」
  萎える社であったが、すぐに顔を上げる。
 「……はっ! いや、まさかこのチョイスは俺にリア充どもの視覚から潰せっちゅう
  PLからのメッセージなんちゃうか!?
  よぉ〜し! エルさん! あんさんの金ピカと視覚を狙った合体攻撃や〜!
  ぬはは! リア充どもよ、愛する者が見えん苦しさを味わうがええわ〜!」
  社とエルのショッキングピンクと金ピカの光線が放たれる。
  そして。
 「「「「我ら【ノイエMK5】、聖ワレンティヌスに助勢する!!!!!!」」」」
 綾乃と菫とエルと社がポーズを取り、小次郎が再びカラー爆煙を放つ。
 「うむ、やはり、戦隊モノ、特撮モノはこうでなくてはな」
 秋葉系の小次郎が満足そうにうなずく。
 小次郎は、事前にメンバーにポーズや口上の熱血指導をしていたのであった。

 「あんなグループに入ってまで聖ワレンティヌスを手伝おうとするなんて……」
 一方、菫のパートナーの吸血鬼パビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)は、
 菫の行動にあきれていた。
 「チョコがもらえないのが原因なら、ワレンティヌスと菫に
  あまり高級過ぎない程度のチョコを渡せば、おとなしくしてもらえるかしら」
 そんなことをつぶやくパビェーダであったが。
 「よーし、俺に味方するとはなかなか感心だな!
  あいつらをやっちまえ!」
 ワレンティヌスが、喜び勇んで宣言する。
 「ガフッ!? な、なんだこれはー!?」
 「マ、マナさん!?」
 「マナ様―!?」
 マナが綾乃のばら撒いたテロルチョコを食べ、クロセルとシャーミアンが慌てる。
 「キヒヒヒヒッ! 
  今回のMK5は『モテ男女を殺す五人組』ですッ!
  そんなにチョコが欲しいんですかーッ、このいやしんぼッ!!」
  綾乃はマッドに笑いつつ、トミーガンを連射して「鉛色のチョコ」をプレゼントした。
  さらにそこに、志位 大地(しい・だいち)
 パートナーの剣の花嫁シーラ・カンス(しーら・かんす)も宣言する。
 「カカオ依存症になってるじゃたさんを利用するなんて……じゃたさんは俺が正気に戻します!
  これぞ、【妖精パティシエール】の称号を持つ俺と、シーラさんが、
  おいしく作るポイントをことごとく、的確に『外した』チョコです!
  市販品を溶かして固めるのではなく、カカオの実の状態から調理。
  素材を生かした、むしろ殺した、悪い意味で究極のチョコレート!
  じゃたさんが好みそうな毒物・劇物・薬物等に安易に走らず排除し、こだわりにこだわり抜いた逸品です!
  じゃたさんを満足させられるように大量に作成しました!
  このチョコ、常人が食べるとあまりの不味さに視界が暗転、もしくは白濁して意識が遠のくのです!
  溶けるチョコが口いっぱいに広がっていく感触はさながらナメクジが這いずっているかのよう!」
 「私達が味見したら髪の毛真っ白になりましたから、
  じゃたちゃんも必ず喜んでくれるはずですわー♪」
 シーラの言葉通り、大地とシーラの髪の毛は真っ白になっていた。
 「チョコレートのにおいがするじゃた!」
 「じゃた、待つざんす!」
 暴走するじゃたを追い、さらにざんすかが現れた。
 「じゃたちゃん、こっちにおいで〜?」
 「もうチョコを探す必要はないんですよ、じゃたさん。
  俺の家に来ればもっともっとこのチョコが食べられますよ。
  さあ、俺といっしょに行きましょう?」
 シーラと大地が、「じゃたお持ち帰り」を目論み、じゃたを誘惑する。
 「もぐもぐ、うまいじゃた」
 「なにっ、そんなうまいチョコなのか……グハアッ!?」
 「マ、マナさん!?」
 「マナ様―!?」
 マナが、大地のばら撒いたチョコにも引っかかり、
 真っ白になってクロセルとシャーミアンが助け起す。
 「なんなんじゃ、この展開はっ!?
  早く事態を収拾するのじゃ!!」
 アーデルハイトがわめくと、さらに新たな人物が現れた。
 ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)であった。
 「ざんすかに危害を成す野郎は一切合切俺が容赦しねーぜ!!
  【ざんすか本命・片思い上等】ウィルネスト、惨状!!」
 ウィルネストは、板チョコをアーデルハイトに投げつけて火術を放つ。
 「ババ様御免!」
 「誰がババ様じゃっ……ぎゃー!?」
 「GO! じゃた、甘味製魔女を食べて来いッ!」
 「がるるる、チョコレートじゃた!!」
 「わああああやめろおおお!!」
 「やったざんす!
  これこそミーの望んでいた展開ざんす!!
  ウィルネスト、よくやったざんす!!」
 「ざんすか、喜んでくれて俺うれしいぜ!」
 チョコレートまみれになったアーデルハイトをじゃたが襲い、
 ざんすかとウィルネストがガッツポーズする。
 「アーデルハイト様!
  もとはといえば、このような事態を引き起こした
  ワレンティヌスを倒せば事態は収拾されるはず!
  お覚悟を!」
 樹が、ワレンティヌスに攻撃する。
 それを、半分の仮面の男が受け止めた。
 「チョコレートパラディン参上!
  ほろ苦くも口どけの優しいパラディン隊だ!」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)であった。
 「なっ、あなたは……」
 動揺する樹だが、
 佐々木のパートナーの英霊熊谷 直実(くまがや・なおざね)が、割ってはいる。
 「お前ら同士は戦っちゃなんねぇ。
  やるんだったら師匠の俺を倒してからにしてくんな」
 「くっ、たとえ最愛の人でも、
 私の信念は揺るぎません!」
 樹が、熊谷と対決する。
 「恋人同士か!?
  おまえ、どうして俺に味方するんだよ!?」
 怪訝そうな顔をするワレンティヌスに、佐々木が言う。
 「追われてるんだろ。じゃ、助けなきゃ。
  あんたは恋人の守護聖人だろ。
  だったら僕達の守護聖人だねぇ。護んなきゃ」

 そんな中、ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)
 パートナーの吸血鬼アマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)
 同じくパートナーの英霊ロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)が現れた。
 「ヴァレンタインデーは単なるチョコレートの祭日ではない!
  聖ワレンティヌスの殉教を契機に、真の愛情について考えるべき日である!
  故に、手段に些か問題ありと雖(いえど)も、余は聖ワレンティヌスの
  み心に全面的に賛同するものである!
  よって、余は速やかに聖ワレンティヌスの下に伺候(しこう)し、
  元・神の代理人、聖ペテロの後継者たるアレクサンデル6世の名において、
  ここに回勅(かいちょく)を発し、「非モテ十字軍」の成立を宣言する!
  神がそれを望んでおられる!」
 ロドリーゴが高らかに宣言する。
 (実は私はアマーリエからチョコレートをもらっているのだが、
  ロドリーゴにはとても言えませんな……)
 (やっぱりロドリーゴにもせめて義理チョコくらいはあげておけばよかったかしら)
 ゲルデラー博士とアマーリエの内心は知らず、ロドリーゴが続ける。
 「余は常に聖人のお側にありて、聖人をお守りする所存なり。
  誤ったヴァレンタイン観を持って近づく者あらば
  雷術火術鐘つき棒を以て鉄槌を下し煩悩を払うべし!」
 (……ワレンティヌス様、結構可愛いしの)
 「おーし! 反撃開始だ!
  あいつらやっちまえ!」
 勢いづいたワレンティヌスの前に、さらに味方が現れる。
 パラミタ刑事シャンバランこと、神代 正義(かみしろ・まさよし)であった。
 しかし、いつもと様子が違う。
 「パラミタ刑事シャンバラン改め……モテぬ男と嫉妬の味方!
  嫉妬刑事シャンバラン! 参上!」
 シャンバランは、いつものヒーローお面ではなく、禍々しい赤い嫉妬仮面を被っていた。
 「お前のそのバレンタインに対する嫉妬パワー……気に入った!
  この嫉妬刑事、お前達に助力してやろう!」
 シャンバランはワレンティヌスに宣言すると、なまはげのように襲いかかる。
 「リア充はいねがー!!
  貴様等……バレンタインだからって浮かれ気分になりやがって……。
  モテない男達がどれだけこの時期苦しんでいるのか貴様等にはわかるまい!
  ……ならば俺が直々に教えてくれるわー!」
 「な、なんだか一緒にされるのはアレな気分だが、
  やってしまえ!」
 ワレンティヌスが嫉妬刑事シャンバランを応援する。
 そこに、さらに仮面の3人組が現れた。
 メイド服にパピヨンマスクの3人組が名乗りを上げる。
 「【謎のメイドソルジャーM】改め【謎のメイドローグM】!
  嫉妬に狂ったシャンバランさんを成敗しますぅ!
  そんなにチョコがほしければ言ってくださればよかったのに。
  一人身であろうとカップルであろうとチョコは美味しいものですから〜」
  微妙に論点がずれたことを言っているのは、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)である。
 「【謎のメイドローグS】あらため、【謎のメイドソルジャーS】!
  イルミンスールの森は、いまや、戦場と化している。
  油断したら、地獄行きだよ?」
 メイベルのパートナーの剣の花嫁セシリア・ライト(せしりあ・らいと)は、
 気分はベトナム帰りの古参兵であった。
 「【謎のメイド剣士F】あらため、【謎のメイドナイトF】!
  同じ英霊として、ワレンティヌスの行動は許せません。
  乙女の楽しみを奪う人はヴァイシャリー湖にかわっておしおきよ!」
 同じくメイベルのパートナーの英霊フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が、
 決めポーズを取る。
 【謎のメイドローグM】、【謎のメイドソルジャーS】、【謎のメイドナイトF】は、
 全員野球のバットを構えていた。
 「えいっ、おとなしくしてくださいねー」
 「ぐばあああああ!?
  こ、この世に嫉妬の炎ある限り! 俺は何度でも復活するぞ! 
  フハハハハ!!」
 明らかに悪役っぽい台詞を言いつつ、【謎のメイドローグM】のバットを喰らって
 嫉妬刑事シャンバランは倒れた。

 場の様子をみはからって、エルがワレンティヌスに言う。
 「もう気は済んだかい?
  このまま負のエネルギーを出していてはキミの未来は暗いままだろう。
  もう一度考え直してみるんだ。
  誰かを妬み嫉妬するのではなく祝福できる存在となるんだ。
  そうすればキミの未来もきっと輝けるはずだ☆」
 「な……俺は……」
 エルの励ましの言葉にためらうワレンティヌスであったが。
 「まずは格好から入ろう、この服に着替えるといい」
 エルが差し出したのは、金塊の着ぐるみであった。
 「あれ? そういえばエルさん。ある人とええ感じとか聞いたんやけど何でこれに参加しとるんやろ?」
 社がふと気づいて、エルにツッコミを入れる。
 「ほほう……。自分は他所でイチャラブしつつ、俺にこんな格好させる気かー!!」
 「え、違うよ? 違わないけど……うわああああああああああ!?」
 エルは、ワレンティヌスに思いっきりぶっ飛ばされた。

 そんな中、
 佐々木が持っていたチョコが落ち、樹が拾い上げる。
 「これは……」
 「ああ、みつかっちゃったか」
 全力で戦っていた樹だったが、表面に書いてある文字を読んで赤面する。
 「大好き」の文字が書かれていたのだった。
 「ワレンティヌスのおかげで僕達はうまくいってるからね。
  いつもどうもありがとう!」
 樹の手を取って、佐々木が言い、樹はさらに真っ赤になる。
 「弥十郎さん……う……あうあう」
 そのラブい空気に、綾乃と社は急にむなしくなる。
 「これって、もしかして全部、私のひがみだったんじゃないでしょうか……。
  あ……皆さん……私先に失礼しますね……
  今回は私のGAに付き合って下さってまことにありがとうございます
  ……楽しかったです……バイバイ」
 「はは……ホンマは分かってたんや……こないな事しても無駄な事くらい……
  でも、この気持ちのやり場がなかったんや……
  もう俺に帰る場所はないんかな?
  いや……あった! 携帯ゲームがっ!!」
 帰って行こうとする綾乃と社であったが。

 桐生 ひな(きりゅう・ひな)
 パートナーのアリスナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)が現れた。
 「チョコレート分が不足した為に騒動が起きてると聴きましたっ。
  私が思う存分味あわせてあげちゃいますよー」
 「にひひ、全身でチョコを思いっきり味わうと良いにゃー」
  大量に用意した業務用チョコを溶かしたものを、ナリュキが一同にぶっ掛ける。
 「きゃああああああああ!? 私、もう帰るって言ったじゃないですか!」
 「いくらチョコほしいからって、こんな形のは望んでへんわー!」
 「うわああ、俺はじゃたさんをお持ち帰りしたかっただけなのにー!?」
 「このままじゃじゃたちゃんに襲われ……きゃー、いけませんわー」
 「ぐはああああ、シャンバランチョコを食べて元気になろう!?」
 「きゃー、野球のバットの普及をーっ!」
 「動いてるものは片っ端から殴っちゃうよー」
 「今宵の野球のバットは血に飢えています」
 「ワレンティヌス様、ぐはあっ!?」
 綾乃、社、大地、シーラ、シャンバラン、メイベル、セシリア、フィリッパ、ロドリーゴが、
 ナリュキのチョコの餌食となった。
 「許せ、ロドリーゴ」
 「あなたのことは忘れないわ」
 ゲルデラー博士とアマーリエは、ロドリーゴを盾にして避けた。
 「チョコを巡って争うなら、身を持って知るが良いのですーっ。
  えへへ、一緒に包……むぎゅ」
 ひなは分銅を背負って、チョコまみれのメンバーに突撃した。
 「志方ないですね……ぎゅう」
 「おお、俺にはまだ……ぎゃむ」
 「じゃ、じゃたさ……ぐにゃ」
 「じゃたちゃーん……ぐにょ」
 「まだだ、まだ嫉妬の炎は消えな……ぎにゃ」
 「野球のバットは……ぎゃにょっ」
 「まだ殴らないと事態が沈静化しな……ぎょにょっ」
 「バットで殴りまくりですわ……ぎゅにゃっ」
 「わ、ワレンティヌス様ー!? ……ぐにゅ」
 ひなと一緒に、
 綾乃、社、大地、シーラ、シャンバラン、メイベル、セシリア、フィリッパ、ロドリーゴが、
 分銅につぶされて板チョコになった。
 「色んな形で情けなく潰れておるのぅ。持って帰ってじっくりと味わうとするのじゃ」
 ナリュキが、板チョコを持ち上げようとする。
 「しまった、ああやって一緒につぶれたほうがかえって美味しかったのでは!?」
 クロセルがキーッとなる。
 「チョコレートじゃた!」
 「うわー、何をするのじゃ、やめるにゃー!?」
 しかし、ナリュキは板チョコになったメンバーごと、じゃたに襲われた。

 「いいかげんにせんか! 私をババ様などと呼んだ報いじゃ!!」
 「ぎゃああああああああああああ!?」
 ウィルネストが、アーデルハイトの魔法でぶっ飛ばされる。
 「がるるる、チョコレート食べたいじゃた!」
 「しまった、じゃたがまた暴走しはじめたざんす!」
 「くっ、ここは一時撤退だ!」
 その場はさらに大混乱に陥り、ざんすかとワレンティヌスは逃走するのであった。