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ぼくらの栽培記録。

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ぼくらの栽培記録。
ぼくらの栽培記録。 ぼくらの栽培記録。

リアクション


7日目

 夜が明けようとしている。
 眩しい朝の光が、ガラスに反射して辺りを優しく照らしていく。
 幻想的な風景。
 その時。
「…え? ど、どうしたの……?」
 異変に気付いてざわざわと騒がしくなっていく。
 何度も乗り越えた睡魔をもう一度払い、しっかりと目を開く。
 一号の様子がおかしい。
 まるで吐き気を堪えているかのように頬をパンパンに膨らませ、時々、内側から溢れそうになる何かを必死に抑えていた。
 みんなが急いで傍に駆け寄る。
「おい……だ、大丈夫か、一号!」
 大佐が声をかける。
「うっ……うっ…ぷ……」
 顔に青筋まで立てて、必死に堪えている。
 一号は額に汗を滲ませながら、みんなの顔を見た。
「も、もう……うぷ、……そろ…………うっつ、うっつ、……そろそろ、だ、ぜ」
「え?」
「お前らに会えて……良かった! ………とくと…、見…やがれっ!!!!」
 そして一瞬、にっこり笑うと。

ぱああああん!!!


「きゃんっ!」
 穂須勢理之空佐知毘古が叫んだ。慌ててエリスの影に隠れる。
 風船が割れた音が耳を劈いた。
 目の前にいた一号の顔が弾け飛び──
 羽化した昆虫が羽を広げるかのように、中からゆっくりと、ゆっくりと、花びらが開いていった。
「…うわぁ……」
 ヴァーナーが感嘆の声をあげた。
「すごい……」
「な…んて綺麗なんだろぅ……」
 弥十郎の口から無意識に言葉がこぼれ出る。
「……こんな花、見たことないです……」
 神々しいばかりの七色の花が、朝日を浴びてさらに光輝く。
「眩しい……」
 思わず目を塞いでしまいたくなるほどの輝き。
「……綺麗」
 樹が呟いた。口を付いて出るのはそんな言葉ばかり。
「おはな……きれーれす。とっても…とってもきれーれす…きれー……」
 コタローも、同じ言葉しか出てこなかった。
 しばらく、みんな無言で花に見入っていた。
 まばゆい七色の光が、辺りを包み込む。
 しかし。
 剛太郎はハッとして叫んだ。
「一号! 一号!!」
「………」
 花は、何も答えなかった。
「……話も動きもしないですけど…これは、一号なんですよね…」
 コーディリアが寂しそうに七色の花を見つめる。
「あぁ……。仲間の遺志を受け継いだ、これが本当の姿であります」
 その時。
 温室のドアが開いて、中に入ってきた管理人が、集まっている皆の姿を見て目を丸くした。
「お前ら、何をやっているんだ!? もしかして昨日からここにいたのか? ちゃんと先生達に許可は取ってあるんだろうな?」
「…………」
「ん? おぉ咲いたか! 見事なもんだ。綺麗に咲かせたじゃないか」
「……」
 褒められても、素直に喜べなかった。
 咲かせたのは、たったの一輪だけなのだから……
「──お? おぉ、そうか……ははは、分かったよ」
「?」
 何も語らない花に耳を近づけて、管理人は一人で笑っていた。
「あ、あのぉ、管理人さん……?」
 北都はおそるおそる声をかけてみた。
「あぁ、悪い悪い。こいつがな、皆にありがとうってさ。水は、まずはネージュが持ってきてくれた栄養ドリンクが飲みたいとかぬかしやがる。この贅沢もんが」
「わ、分かるんですかぁ?」
「お? あぁ……なんとなくな」
「……管理人さん、ただもんじゃねえな……」
 ソーマが小さく呟いた。
「今度は成長促進剤なんか使わずに、じっくり育ててもらうのもいいかな。愛着が湧くぞ?」
 管理人がにっと笑った。
「ところで…こいつの顔はどうだった? 絶世の美女だったろう? 惚れ惚れしてしまうほどに…」
 絶世の、美女?
「び、美女ってなんのことですか?」
「こいつのことさ。愛情を注ぐのもひとしおだったろう?」
「……リアルマッチョでした」
「あ?」
「親父顔でした!」
「はは…はは、そうだったか。なるほどねぇ……そういうことか。水の配合の問題が……」
 管理人は何やらぶつぶつ呟いた。
「よし、とにかくありがとう。あとは日誌を見せてもらうから」
 そう言うと、管理人はおもむろに鉢を持ち上げた。
「じゃあこの咲いたやつは、校長に渡してくるから。咲いている時間は短いからな」
「あ……」
 ロザリンドと悠希の足が、『校長』という言葉に反応して前に出かかった。
「?」
「いえ……なんでもありません」
 二人は目を見交わして、苦笑した。
「じゃあ日誌を……」
「あ、最後まで書き終わっていないので、後で持って行きます!」
 樹の言葉に、管理人は微笑んだ。
「……分かった」
 温室から、花の姿が消えた。
 なんだかとっても寂しいものがあった。寂しいけど……
 また……会えるかな? きっと会えるよね。

 数日後。
 管理人から、あの花……一号のことを聞いた。
 校長室に飾られ、精一杯咲き続け、そして散っていったらしい。
 日誌を読んだ管理人は、みんなの眠る場所へ一緒に埋めてくれた。
 土に還って、そうしてまた会いにきてほしい。
 いつか、きっと。


7日目:最終日) 晴れ  担当 林田 樹・林田 コタロー


今日、一号が花を咲かせた。

とても綺麗な七色の花。朝日を浴びて、キラキラ光ってた。

あんな綺麗な花、強い花は、見たことがない。

きっと、皆と一生懸命育てたからなか。

あいつらに会えたこと、管理人さんに感謝します。

本当にありがとうございました。


おはなきれーれした。



「──これれ、おわったの?」
 コタローが目をくりくりさせながら尋ねてくる。
「あぁ、出来たよ」
「もうおわかれ?」
「……そうだな」
「もうちょっと、いたいれす」
 何を考え、思っているのかは分からないが、コタローは温室をゆっくりと眺めた。
「ほら、もう行くぞ!」
 樹はコタローの頭を一撫ですると、ノートを抱えて、管理人室へと急いだ──

担当マスターより

▼担当マスター

雪野

▼マスターコメント

こちらのシナリオを担当致しました雪野です。ご参加下さいまして、ありがとうございました。

前回自粛すると言っていたのですが、ご要望が多かったため少々盛り込ませていただきました。
嫌いな方・苦手な方、本当に本当に申し訳ありません!
まずい……温室ネタが、いつの間にかアッチ系になっている……
危険危険。戻さなくては……

今回、書き方等だいぶ悩んだのですが……とりあえず終わらせられてほっとしています。
顔に関してはモデルがいまして、名前を出せば簡単にイメージが湧いてもらえると思ったのですが…
やっぱり名前は出せませんね。大人の事情で。(笑)

称号はお気に召さなければスルーして下さい。
楽しんで頂ければ嬉しいです。ご参加ありがとうございました。!