リアクション
* 「きゃはは! 自分の為にだかなんだか知らないけど笑っちゃうね。こんな玩具に何を求めてたんだか。哀れだねぇ。 さ、最後に死に顔でも拝んで帰ろっか♪」 ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)の声だ。 「うう、や……め……て……」 ティア・アーミルトリングス(てぃあ・あーみるとりんぐす)。 姿は見えない。 炎が、燃えている。黒い炎。ティアの内部であろうか。景色はゆがみきって、ぐらぐらゆれる黒い炎に何もかもが燃やされて何ひとつ見えない。 それはティアにとっては刺し殺した相手のそれが自分のなかに入っていることの異物感や恐怖の現れかもしれなかった。ジャレイラの悲しみかもしれなかった。しかしではそこが、ジャレイラの感情が唯一残されている場所でもあろうか? 「ううう、……ああ、あ゛……」 薄い液体の流れ出ていく感覚。吐瀉物が落ちる音。 「誰がそんなことしていいと許可した!」 再び、ロザリアスの声。ひどい音が何回もして、ティアの内部の黒い炎が大きくなったり小さくなったりした。その黒さを増しているようにも見える。 「ああ、はあ……っ……ご、ごめんなさいごめんなさい! もう、もう許可なく勝手なことしませんから許してください! ……あ、ああ……」 * ひどい夢……? こんなに黒く燃えたぎる炎ばかりの夢なんて。こんなのばかり残って…… 琳 鳳明(りん・ほうめい)は火の黒い海を歩いている。不思議と、琳には熱は感じられなかった。 「うん。私にはわかる。これがジャレイラさんの火だって。だったら、私には怖いものじゃないし、それにあの人の火は、本当はそんなただ熱いだけのものじゃないんだ。 こんな風景ばかりが続いていたはずじゃないよ。 このさきには、きっと違う風景が続いていたってよかった。それは……」 琳はジャレイラと一緒にいたとき、ジャレイラの幕舎の部屋をちょっと模様替えしてみたことを思い出した。 花、か。 ジャレイラの声。 そう花……私はわるくないと思ったんだ。琳の周りの風景がふいに、透明な花々に囲まれる。手に取ろうとすると、また黒い炎が浮かび上がり、花びらは燃えてしまった。 ジャレイラさん。貴女はどこへ、帰るの……? 「ジャレイラさんにもう一度会って伝えたかったんだ……ありがとうって。 そして、ごめんって……」 琳の手のひらで、黒い花びらが燃えていた。 でも、やっぱりこれがジャレイラさんなんだよね。ほんのひとかけらでもいいよ。 花びらは形を変えて、琳の手に、黒いフランベルジュが姿を現した。 ジャレイラさん。 これは……ジャレイラさん自身だから。ジャレイラさん、これを。 * ライゼは、再び、祭壇のところまで戻って来ていた。夢の祭壇だ。 「はぁ、はぁ……やっぱり、ここ?」 そこにはもう、だれの姿もなくて、ちらちらとした炎が祭壇の其処ここで燃えていた。 「火……違う。嘘の火だ」 ライゼは祭壇の中央付近、そのなかに一片の黒い火を見た。それだけがライゼには本当の火に思えた。だけど、もう消えていく…… ライゼは祭壇に駆け上がるとその火を包むように手をかざした。 その下に女性の幻が薄っすらと浮かび上がって見える。 「(この人、もう……でも、お願い!少しの間で良いから力を貸して!!)」 * 祭壇へ、更に、高速で飛んでくる者。 人形と少年。 一直線に飛んでくる。 火に覆われいく祭壇のなかに、突っ込んでいきそのまま消えた。 |
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