リアクション
* 増援部隊を率いるマーゼンとジーナはすでに城外付近に陣を張っていた。 「アム」 「……」 「ではあの城外に出ている見張りを頼む。む、あの見張りは、なんだ味方か。 敵はジーナ殿の言った策とやらが効いておれば、あらかた酔いつぶれておるか…… ふむう。そうか、これは存外らくにいけるかもしれぬな」 「いかが致しましょう?」 アム・ブランド(あむ・ぶらんど)。 「うむ。いかに堅固な砦といえ、これならば抜け穴を掘るような手間も危険も要らんだろう。 よし、アム。君は自分と共に正面より、飛鳥は百を率い裏手に回ってくれ。この戦いの指示はもうそれで十分だろう? できる限り捕え、そうでなければ殺してしまえ」 「うん!」 本能寺 飛鳥(ほんのうじ・あすか)は純情可憐に頷いた。 「あ、マーゼン様。いよいよですね」ジーナが来た。 「うむ」 「林田様によりますと、裏手の方が細い通路になっておりますため、そこにあぶり出せば一網打尽にできるそうです。 どうします? ワタシは林田様と連絡を取って呼応いたしますので裏手にまいります」 「わかった。こちらはこの飛鳥が裏手に向かう。ならば兵数はそのまま百、裏手に集中させればちょうどよかろう。 うむ、自分とアムは正面から引き入れてもらう」 「はい。正面の方はエル様黄金の鷲の所属の方が見張りをやっています。 こちらも、すでに連絡済です。では……」 「あたし本能寺飛鳥。よろしくね!」 「はい!」 * コンサートも最高潮に達していた。 最後に、シャンダリアは、 「今夜からわたくしがあなたたちの女神様。 ゴッドイーグルですわ! 女神として命じます。黒羊軍と縁を切り教導団の仲間になりなさい!」 わーわー もう 戦は終わったんだぜぇぇ おれたちゃ自由に、やるぜぇぇぇ ほとんどの者が酔いつぶれ、盗賊らは事象の関連性もよくわからなくなっていた。とにかく、もう黒羊のために戦う必要はない。これからは、教導団第四師団の仲間になって毎晩楽しく宴会しながら、暮らしていくのがいいのかなぁぁぁ 電気が落ちた。 「ち。やられたな」「兄者……」 酒に滅法強い盗賊頭領の兄弟だけが策に嵌らなかった。とは言え、最後の最後で敵を知ったが、遅かった。 「樹ちゃん。敵をあぶり出すルートは、こうこうこうで……」 「うん。よし、発破いくぞ」 うわぁぁぁぁ! 盗賊らが、一斉に逃げ出す。 「裏口へ!」「こっちれす、こっちれすよー」 盗賊らが、一斉に出てくる。そこには、教導団の部隊が待ちかまえていた。 「ここまでね!」 「砦に残っている敵も、皆捕えましょう!」 飛鳥を斬り込み役に、ジーナ、獣人兵らが突入していく。 正面口では…… 「ちっ。裏口はだめか。 兄。上手く逃げろよ……く、しまった。ここにも敵か」 「当然だ。逃がさん」 マーゼンは、ディフェンスシフトを展開、敵・頭領弟の強靭な腕で振り下ろされたハンマーを受け止めた。すかさず出たアムが敵の首筋に牙を突き立てる。「ぎゃ、ぎゃぁぁ」 砦内。PA室。 「はっ。樹ちゃん……」 樹の前に下り立った敵に、緒方が林田を守って前に立つ。頭領だ。 「女。指揮官か。貴様を道連れにしよう。その前に姫さんのナイトから、かな?」 「僕の樹ちゃんに何かしたら、タダじゃおかないよ〜」 「姫とナイトって柄じゃないがな」 「えっ。樹ちゃん〜〜」 「残念ながら、サポート専門なんだ。手柄は、……正直好きではない」 林田が言うのを合図に、 「へっへっへ」小柄な老人が現れた。 「いいぞ。存分にやってくれ」 「む。新手……」と言いかけた頭領の首に、ナイフが突き立った。「……く、……」頭領は倒れた。 騎狼部隊浪人三人衆の爺さんであった。「ここにいない二人の分も込めてな。まあ、ナイフは一つで十分じゃったようじゃな」 「あっ。樹様〜」 「ジーナ!」 正面から、マーゼンらも入ってきた。「おお、林田殿。それにエル殿。随分と派手な宴会をやったようですな」 飛鳥が来る。「砦は制圧しました!」 「うむ。これで、この方面の不安材料は無事取り除かれたな」 大量の物資・食糧も手に入った。進攻軍は黒羊郷を打ち破り、やがて戻ってくることになろう。これでまた改めて、戦勝の宴ができるかもしれない。 「そのときには是非、エル殿らにご協力頂けますかな?」 「ウ……ウン……。ギル、シャンダリア。教導団からお呼びがかかった。 黄金の鷲の新しい任務だ。頑張ろう……」 「……わなわな」「つん」 |
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