天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

図書館ボランティア

リアクション公開中!

図書館ボランティア

リアクション


それぞれの活躍

 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)とパートナーのベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)は揃ってボランティアに参加していた。
「インスミール大図書館も良いが、たまには別な図書館も悪く無いな」
 3人が図書館を眺める。静かな中にも図書館らしい活気があった。
「ベルテハイトはカウンター業務を手伝ってもらうか。文芸作品には詳しいだろう? アウレウスは俺と来い」
 グラキエスの言うままに、文芸作品に詳しいベルテハイトはカウンターで利用者の便宜を図る。アウレウスはグラキエスと共に蔵書整理の任につくことになった。
 愛想の良く陽気に対応するベルテハイトのカウンターには、すぐに女性利用者の列ができた。
 その横で男性利用者の列ができているのはアトゥ・ブランノワール(あとぅ・ぶらんのわーる)の担当するカウンターだ。
「この図書館にはお世話になっているからね。まぁ、若い子達のお手伝いだね」と言っては見たものの、外見ティーンエイジのアトゥは、男性利用者の興味を引くには十分だ。しかも年相応に深いアドバイスが返ってくる。
「こんなにでしゃばっちゃって良いものかね」
 次々に利用者の希望に応えていた。
 そこに椎名 真(しいな・まこと)双葉 京子(ふたば・きょうこ)が相談に来る。
「ペット用の服を探してるんだが。あ、もちろん自作をしたいと思って」
「つまり裁縫か被服ってことだね。どんなペットなんだい?」
 京子が身を乗り出した。
「とっても可愛い双子のパンダなの! 今日ここに連れてこられれば良かったのに!」
「図書館に動物はねぇ。盲導犬とかなら良いんだろうけど……パンダ、パンダっと」
 アトゥが端末を操作する。
「さすがにパンダは無さそうだ。でも子熊ならあるね。子犬用も応用できそうだ」
「本だけじゃなくって、DVDとかでも良いんですが」
「ん、調べてみるよ」
 アトゥがリストアップする。
「この本は階が違うんで気をつけてね。DVDはこっちの棚だよ」
 椎名真と双葉京子はお礼を言って立ち上がった。



「むぅ、こんな本まであるのか」
 アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)は、サイコキネシスで黙々と本の整理を続けながらも、見つけた本に感嘆している。
 右手に『漢の歓楽街マニュアル』、左手に『酒の注ぎかた酔わせかた』。
「ここは本当に学園の図書館なのか?」
 アキュートの肩から触手が伸びると、『酒の注ぎかた酔わせかた』にピタッとくっつく。
「また くっついたですー」
「はいはい」
 ペト・ペト(ぺと・ぺと)の触手を引っぺがしてやると、本が一杯できらきらしたペト・ペトの目が笑った。
「ペトペト、手伝いになっとらんな」
 もう1人?のパートナーウーマ・ンボー(うーま・んぼー)もしっかりアキュートの背後についていた。
「そう言うそこの生臭い奴。おまえは浮いてるだけなのか?」
「大丈夫だ、見守っている」
 アキュートがブロウガンを突きつける。
「手伝わないなら、どこか飛ばされてろ。お守りはペトだけで十分だ」
「手伝っても良いが、その本は防水なのかな?」
 ウーマ・ンボーは口をパクパク、羽根をパタパタさせる。
「……俺が悪かった」
「漢が過ちを認めた時。それはさらなる成長への一歩となる」
 断定的な物言いに、アキュートはイラッとするものの、口に出すのは止めておいた。
「そこの人、静かにしてください! っとボランティアの方でしたか」
 3人? に注意を促したのは同じ蔵書整理ボランティアの御凪 真人(みなぎ・まこと)だった。しかし注意はしたものの、図書館に似つかわしくない3人の組み合わせに、あっけに取られてしまう。
「アキュート、謝っておけ」
「俺が悪いのか?」
「悪い悪くないではなく、3人の責任者はアキュートであろう」
「…………すみません」
 渋々ながらも頭を下げるアキュートに、真人も「いえいえ」と首を振る。
「俺も蔵書整理なんですよ。良かったら手伝いますよ」
「すまん。なにせこいつらが役立たずでな」
 “こいつら”でひとまとめにされたウーマ・ンボーとペト・ペトが不満そうに愚痴る。ウーマ・ンボーに言わせれば、手伝いたいが手伝えないのであり、ペト・ペトに言わせれば、指示をちゃんと出しているそうだ。
「そうですね。ウーマ・ンボー君、ちょっと横になってくれますか?」
「……? うむ」
 横向きになったウーマ・ンボーは平たくパタパタと浮いている。
「そのままだと本が濡れてしまいますが、こうすれば良いのでは?」とトレイを乗せる。その上に本をドンドン乗せていった。
「おい、何をする!」
「こりゃあ良いな! ウーマ、がんばれ!」
 ウーマ・ンボーは逃れようとするものの、二人して乗せられた本の重みで浮いているのがやっとだ。
「よし、これでアッチの棚まで頼む」
「アキュート、覚えて置けよー」
 口ではこうは言ったが、大人しく離れた棚まで飛んでいく。
「すみません。遊んじゃいました」
「気にするな。俺もウーマには手を焼いていたところだ」
 ニヤリと笑う二人を横に、ペト・ペトが再び泣き出した。
「アキュート、またくっついたですー」
「やれやれ」と思いつつも、本から優しくはがす……と、「ピリッ」と破れてしまう。
「あっ!」
 叫んだものの、もう遅い。『イナンナ様が見てる』の裏表紙が裂けてしまう。
「これは修復担当のボランティアに持っていった方が良いですね」
「いるのか? ボランティアに」
「案内しますよ」
 真人に連れられた3人は、修復作業と張り紙のされた部屋に入る。そこでは東 朱鷺(あずま・とき)が、本の汚れを落としていた。
「このくらい、大丈夫ですよ」
 2人は安堵、1人は「俺は無関係」とばかりに、プカプカ浮きながら部屋のアチコチで見て回る。そんなウーマ・ンボーを見て、健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)のパートナーアニメ大百科 『カルミ』(あにめだいひゃっか・かるみ)が「わぁ、お魚さんです!」と歓声をあげた。
「こんな部屋があったのか……」
 そこでは5人程のボランティアが本の修理に精を出していた。
 シャンバラ教導団の東朱鷺と大岡 永谷(おおおか・とと)、葦原明倫館からはアルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)、そして蒼空学園の健闘勇刃達。
「忙しそうですね」
 アキュートと真人も部屋を眺める。
「ええ、痛んでる本が多いのよ。中にはこーんなのも」と、落書きされた本を取り出した。「あぁ」とアキュートと真人が声を上げる。それと同時に「アキュート、またくっついたですー」と声がする。
「あら、大変」
 朱鷺の髪にペト・ペトの触手が伸びていた。
「こら、大事な髪になんてことずるんだ!」
 急いではがそうとするものの、絡んでしまってなかなか思うように行かない。
「大丈夫ですよ。ゆっくりいきましょう」
 むしろ朱鷺の方が冷静だった。
「銀色で目を引いたのかしら。これもそうだし……」と『イナンナ様が見てる』を手にする。本は白い革張りに銀で百合の装飾が施されていた。
 アキュートと真人が、悪戦苦闘してようやく引き剥がす。
「本当に申し訳ない。よろしくお願いします」
 アキュート達4人は、蔵書整理に戻るべく部屋を出て行った。
 落書きされた本を朱鷺が「よろしくね」と永谷に渡す。
「ひどいことをするもんだぜ」
 永谷がため息をついた。
 蔵書整理をしていて、推理小説の冒頭で犯人を示している落書きを見つけた。許せない思いでボランティアの修復班を立ち上げると、何人ものボランティアが賛同してくれ、司書から部屋も融通された。
 鉛筆書きなど、消せるものは消すが、消せないものが圧倒的に多い。数箇所程度なら修正液を使うものの、多すぎれば廃棄処分にもなりかねない。
 健闘勇刃とパートナーの冠 誼美(かんむり・よしみ)熱海 緋葉(あたみ・あけば)、アニメ大百科 『カルミ』も修復作業に参加していた。ただし修復するのは専ら勇刃だけで、誼美と緋葉は手伝いを、カルミは本を運びつつレア本に見入っていた。
「はわ!? この本は限定店舗でしか入手できない激レアの本じゃないのですか! お、おおお。あれ? どうしたのですか、ダーリン? あ、そうだった! ここは図書館だったのですね! ごめんなさいなのです。気をつけるのです。でもダーリン、こんなの見つけました」
「お、この本が、俺がずっと探してた激熱血漫画『バトルフェニックス』じゃないか! 読みたかったぜ! おっといけない、仕事に集中しないと。後で読もうか」
 『バトルフェニックス』をキープすると「ありがとなカルミちゃん」とカルミの頭をナデナデする。
 収まらないのが誼美と緋葉。不満そうな視線に気付いた勇刃が、2人の頭もナデナデする。
 そんな4人を見てアルメリアがクスクス笑う。
「仲が良いのですね」
「まぁ、仲が良いのか悪いのか、張り合ってばかりですけど」
 アルメリアは本の補強に透明なカバーをかけたり、テープを張ったりしている。それでなんとか本の形が維持されているものも少なくない。
「はい、どーぞ」
 アルメリアのところに誼美が本を運んでくる。『ワタシもした方が良いのかな?』と思って、アルメリアが誼美の頭をナデナデする。誼美はニッコリ笑うものの、「あーずるい!」とカルミと緋葉がアルメリアのところに先を争って本を運ぶ。結局、アルメリアも3人の頭を撫でることになった。
「すまない」
 わびる勇刃に「がんばっているのですから」とアリメリアは微笑んだ。
「それにしても、もうちょっと人手が欲しいもんだ」
 大岡永谷が言うと、他の面々もうなずいた。
 永谷と朱鷺が人を増やして欲しいと伝えたものの、他のボランティアも忙しいらしく増員はできなかった。手が空き次第向かうといってくれたボランティアもいたが、アキュート達を見れば他も忙しいことがわかる。
「とりあえずできるところまでがんばりましょう。その後はその後に考えるってことで」
 アルメリアの言葉で、またも修復作業に没頭し始めた。