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リアクション
第二章:久世 沙幸
同日 某時刻 海京某所
「SON団……あなたたちは大きな間違いをおかしている」
前後左右、全方位から襲い来る麺を、超人的な敏捷性で回避しながら久世 沙幸(くぜ・さゆき)は言い放った。
それほど広くない路地の一角。見渡せば、眼前にはずらりと並んだキメラーメンの一群の姿がある。対する沙幸はたった一人で無数のキメラーメンと相対していた。
多勢に無勢は火を見るより明らかなのは言うまでもない。だが、それにも関わらず、沙幸は互角以上の戦いを見せていた。
ニンジャとして本来彼女が持つ凄まじい敏捷性に加え、『みそ系麺能力』の効果で更に高まった素早さは、もはやキメラーメン程度では到底補足できるものではない。
先程から無数の麺が彼女を絡め捕ろうと襲いかかるも、そのうちの一本として彼女の身体に触れることすらできていない。
感情の伺えないキメラーメンの一群が心なしか焦った様子を見せると同時、一斉に動いた。前後左右は勿論、頭上からの一撃や、足元への地を這う攻撃も、そのすべてが同時に沙幸にへ向けて放たれる。
しかしながら、『みそ系麺能力』による強化を受けて、既に超絶的な域にまで達した彼女のスピードは、全方位から同時に放たれる一斉攻撃すら、いとも容易く避けていく。
「あま〜いおまんじゅうとおいしいラーメンを掛け合わせた物をあなたたちは食べたことがある?」
垂直の壁を、まるで平地のように駆け抜けながら、彼女は追いすがってくる麺に向けて言い放つ。
「ジンギスカンを取り込んだキャラメルをあなたたちは美味しいと言って食べられる?」
街灯の柱から柱へと、あたかも飛び石のように軽々と飛び移って麺を振り切りながら、彼女はなおも麺に向けて言い放った。
「そう、それぞれの食べ物はそれぞれで完結してこそ美味しいの」
標識の角を蹴って跳び、信号機の上に着地した彼女は、まるで諭すように言う。
「ラーメンにいろいろな食べ物を取り込もうだなんて……、それはラーメンへの冒涜以外の何物でもないんだもん」
叩きつけるように超然と言い放つと、彼女は信号機の上に立ったまま刃を抜いた。
「それに全ての料理を取り込んでしまったキメラーメンは果たしてラーメンと呼べるのかしら?」
信号機の上で動きを止めた彼女に、彼女が動きを止めたこの機を逃すまいと一斉に麺が襲い掛かる。だが、彼女はそれにも構わず、麺に向けて問いかけた。
「それに全ての料理を取り込んでしまったキメラーメンは果たしてラーメンと呼べるのかしら?」
襲い来る麺を、手にした刃で切り払いながら、彼女は言う。
「そう、それはキメラーメンというまったくの別物になってしまうんだよ?」
信号機の上という足場にも関わらず、まるで道路の上に立っているような危なげない足取りで彼女は、次々と襲い来る麺を片端から切り落としていく。
「だから私はラーメンを守るために戦うよ!」
彼女の宣言ととともに、キメラーメンの麺の根元から本体が露出する。丁度、全ての麺――触手を出して切ったことで本体が露出したのだ。
その瞬間を逃さず、彼女は左右それぞれの手で指の間に挟んだ棒手裏剣を構える。キメラーメンも自らの本体が露出したことに気付き、慌てて触手、もとい麺を引き戻そうとするが、もう襲い。
両手を振るった沙幸が放った棒手裏剣が左右から飛来し、次々とキメラーメンの本体に突き刺さっていく。都合二本の棒手裏剣を左右から受け、全てのキメラーメンは活動を停止した。
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