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飲みすぎにはご用心!?

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飲みすぎにはご用心!?

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ACT3 ヤマタノオロチ作戦


 ヴェーゼルが考えたヤマタノオロチ作戦。
 それはヴェーゼルがアルバイトでここまで運んできていたお神酒用の酒樽に入ったお酒を飲ませ、相手を完全に酔い潰して身動きをとれなくしてしまえというものだった。

「本当に大丈夫なの? 酔っ払いにもっとお酒を飲ませたりしたら、逆に被害が大きくなるんじゃないのかなぁ?」

 しかしパートナーの陽子はヴェーゼルの立てた作戦にかなり懐疑的だ。

「というか、なぜそんなアルバイトのついでにここに来たんですか?」

 ルークはヴェーゼルにそう聞いた。

「いや、まあ、色々あるんだよ。色々」

 確かに色々都合というものがあるということなのだろう。ルークはそう思って納得した。

「まあとにかくだ。作戦は決まった! 陽子は酒を樽から出してそこらへんにあるビニール袋の中に小分けにしてくれ。そうすれば空から口の中へ投げ入れやすくなるからな」
「あっ……う、うん」

 陽子はヴェーゼルの立てた作戦に納得はしていなかったが、彼の自信満々の態度に流されて準備に取り掛かる。

「それとアンタ」
「ルーク・カーマインです」
「そうか、じゃあルーク。アンタはあの巨大ゆる族たちと戦ってる奴らに協力を仰いでくれ。オレは社務所にいってビールやら酒やらあるもの全部いただいてくるから頼んだぜ!」

 ヴェーゼルはそういうと社務所に向かってダッシュしていく。
 ルークも陽子のようにこの作戦が上手くいくかわからないと思っていたが、何もしないで手をこまねいているよりは良いと思い動き出した。
 そしてルークの呼びかけに応え、契約者たちとそのパートナーたちはヤマタノオロチ作戦に参加。
 作戦の準備が整うと行動を開始した。

「誘導は私たちにまかせなさい」

 そういって小型飛空挺に乗ったエルサーラが動き出す。

「酔っぱらいは世間の大迷惑。なんとかしないとね」

 エースはそういってエルサーラの後に続く。

「ほら、ペシェちゃん。甘酒ですよ」

 エオリアは甘酒を手にしてペシェの鼻先を小型飛空艇で飛ぶ。
 それに気づいたペシェは鼻をヒクヒクさせる。

「あ、甘いにおいがするぅ」

 そして匂いにつられてフラフラと歩きだした。

「酒やー!」

 と、甘酒を飲んでいい気分のイオマンテもその匂いに誘われて歩き出す。
 そんな彼らの背中を押すように強い風が吹き付ける。

「さて、誘導開始だ」

 風術で風を生み出すエースはそうつぶやく。

「んっ、おい! おまえらどこに行くんだよぉー?」

 と、どこかにいってしまうふたりに向かってもっくんが声をかけた。
 そんなもっくんの頭にいきなり激痛が走る。

「いでぇ!?」

 もっくんが頭をおさえながら上をギロリと睨むと、そこにはバゲットを手にしたエルサーラが口元に笑みを浮かべていた。

「あらあら、また間違えちゃったわ」

 ぐぬぬっと唸るもっくん。
 そして怒りを爆発させてエルサーラを追いかける。

「貴方は好みじゃないんだけど……特別に追いかけさせてあげるわ」

 小型飛空艇を巧みに操ってエルサーラは避難する人たちとは反対の方向へと飛ぶ。
 そして3人の巨大ゆる族を所定の場所へと誘い出すと、そこに待ち構えていた契約者たちが動き出す。

「きたきたっ、待ってたよ!」

 ユーリはそういうと氷術を使ってもっくんたちの足を止める。

「んあっ? うっ、動けん!?」
「次、行くわよ!」

 間髪入れずにセレンが放電実験を行い、巨大ゆる族たちに軽い電撃を与えた。


「うああああっ、ほんじつさんかいめええぇぇぇッ!?」


 痺れたもっくんたちは大きく口を開ける。
 そこへ空飛ぶ絨毯に乗ったヴェーゼルと陽子、小型飛空艇に乗っているエルサーラ、エース、エオリアが酒の詰め込まれた袋を持って現れる。

「よし、みんな! あの大きく開いた口の中に遠慮なくどんどんと放り込むんだ!!」

 ヴェーゼルがそういうと皆一斉に酒を投げつけはじめる。

「あばばばばばばっ!?」

 口の中へドンドンと投げ込まれていくお酒たち。それらは体の中に入り込み、もっくんたちの身体の平衡感覚を奪っていく。

「う、う〜んっ――もう、飲めましぇーん」

 度数の高いお酒を飲まされて、完全に酔っ払ってしまった3人の巨大ゆる族。
 彼らは目を回してその場にバタバタ倒れると、ガーガーと大きなイビキを立てて眠ってしまった。

「作戦成功だぜ!」

 ヴェーゼルがよっしゃとガッツポーズ。

「イコン部隊が到着する前になんとかなりましたか……」

 それを地上で見ていたルークはホッと息をついた。