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リアクション
プーチンが決死のリポートをしている横をふたつの影が通り過ぎる。
逃げ惑う人々とは逆にもっくんに向かっていくユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)とフユ・スコリア(ふゆ・すこりあ)だ。
「巨大化して暴れ回るなんていけないな!」
ユーリはそう言うと呪文を詠唱して両手に炎を生じさせる。
「そうだよね。おっきくなって暴れまわるなんていけないことだもん。元に戻してあげないとダメだよね」
スコリアは白の剣を手にし、その瞳を紅く染める。
「スコリア、僕は後ろから援護するよ!」
「うん、わかったよユーリちゃん。スコリアは暴れまわるおっきいゆる族ちゃんを”調教する”よ!!」
ふたりはそういって二手に別れた。
そんなふたりに気づいたもっくんは声を荒らげる。
「んぁッ!? なんらおめぇーら! 俺とやろーってぇのか、コノヤロー!」
そして巨大になった足を持ち上げて、近づいてくるスコリアを踏みつぶそうとする。
「やらせないよ!」
それを見たユーリは両手の炎をひとつにまとめ合わせて巨大な火の玉を作り上げると、もっくんの足に向かって投げつけた。
魔法の火球は狙った場所へと一直線に飛翔し、足にぶち当たると大きな音を立てて爆散。
毛の多いもっくんの足を炎の舌が舐めわます。
「うわあちちちっ!?」
そんな炎を消そうともっくんは懸命に足を振った。
「そーれっ!」
と、もっくんが炎に気を取られているうちにスコリアが地面を蹴って飛び上がる。
そして彼女はもっくんの体を足場にして上へ上へと跳ね上がっていく。
最終的にもっくんの頭上高くまで飛び上がったスコリアは、剣の刃を寝かせて振り上げると手にした得物を脳天めがけて思いっきり振り下ろした。
「いでぇーッ!?」
頭を襲った激痛に、もっくんは堪らずうずくまる。
「元に戻ったかな?」
地面へと着地したスコリアがもっくんをじっと見つめる。
と、うずくまっていたもっくんが顔を上げてスコリアを睨みつけた。
「何すんだこんのぉ糞ガキぃぃぃッッ!!」
両腕を高く振り上げて熊らしくガオーっと威嚇するもっくん。
巨大化しているのでその咆哮だけで周りの屋台のいくつがバタンバタンと壊れてしまった。
「あれっ、怒らせちゃったかな?」
「怒っちゃたもんねぇーッ!」
もっくんは悪い目つきをさらに悪くして巨大な両腕をスコリアに振り下ろす。
「――スコリア!?」
サポートが間に合わなかったユーリが声をあげる。
と、そんなユーリの横を何かが高速で飛んでいった。
見ればそれは一本の槍。それがもっくんの体に突き刺さる。
「ぎゃっ!?」
槍が突き刺さったもっくんは声をあげて仰け反る。
「今よ、セレン!」
と、セレアナの声が響いた。
すると間髪入れずに今度はセレンの声が響く。
「いくわよ、ライトニングブラスト!」
セレンが突き出した掌から暴れまわる雷たちが放たれる。
彼らが一直線に目指すのはもっくんの体に突き刺さった槍。
雷たちは槍に到達すると、それを伝ってもっくんに襲いかかる。
「あばびばぶばばばばばっ!?」
ビリビリと体中を襲う電撃にもっくんは舌を出して目を回すと、変な体勢で仰向けに倒れ込んだ。
「ユーリちゃん!」
その隙にスコリアはユーリの元へ戻る。
「スコリア、よかった!」
ユーリはスコリアの無事を確認するとホッと息をついて、セレンとセレアナにお礼をいった。
「お礼はちょっと早いみたいよ」
だがセレンはユーリにそういって厳しい表情を浮かべる。
彼女の視線の先ではもっくんがゆっくりと動き出していた。
「全然効いてない!?」
目を見開いてユーリが声を上げる。
「そうみたい。でもやるしかないわよ。みんなのためにもアイツのためにもね」
そんなセレンの声に応えるように戦う者たちは再び武器を構えた。
「――これは面白い見世物です」
と、この混乱が始まってから空飛ぶ魔法で上空に退避して成り行きを見守っていたガートルードがぽつりとつぶやく。
そして回復の呪文を唱えてもっくんの傷を癒すと、ガートルードは口元にだけ笑みを浮かべた。
「ここからジックリと見物させてもらいます」
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