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夢見月のアクアマリン

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夢見月のアクアマリン

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 高峰 雫澄(たかみね・なすみ)はパートナーの魂魄合成計画被験体 第玖号(きめらどーる・なんばーないん)を探して水ノ瀬 ナギ(みずのせ・なぎ)と廊下を歩いていた。
「……妙な感じがしますね。
 確かにパーティに呼ばれて集められたのですが、もっと別の意図によって“集めさせられた”とでも言いますか」
 第玖号の何か含みを持たせた様な言葉の意味は雫澄には良く分からなかったが、宴会場に居る間に気付いた事もある。
「……確かに様子がおかしい少し頭痛がするし、ナギも具合が悪そう……
 ナインを探しに行った方がいいかな?」
 そう思って第玖号を追って宴会場を出て居た。
 彼もまた途中北都に出会っていた。
「そうかぁ、ここでもないかぁ……」
 肩を落として歩いて行く北都を見送った直後、見つけた第玖号と合流したのは海達がセイレーンの秘密を知った場所だった。
 しかし海達と雫澄が違っていたのは、海らに敵が先に集中したお陰で誰にも追われなかった事だ。
 雫澄にはジゼルが悪い人間だとは思えなかった。
「きっと、何か理由があるはずだ……何だか、頭痛が酷くなってきてるけど。
 でもそれでも行かなきゃ……この程度の事で、負けてられない!」
 自分でも気付かない内に部屋から出て行ったジゼルを追い掛けて居た。

「ジゼル!!」
「……雫澄。
 どうしたの? パーティーのご飯、冷めちゃうわよ」
 振り返ったジゼルの目に、ナギが目に入る。
 ナギは力をかなり失っているのか、顔色が悪く雫澄にもたれて目を虚ろにしている。
 ジゼルは胸の奥がズキンと痛むのを感じていた。
「ジゼル、あのさ」
「ナギの調子悪そうよ。
 部屋に戻ったら?」
 痛みを隠そうとすれば、はねつけるように声が無表情になる。
――心を固くしなければ、同情してはいけない。
 ジゼルが迷っている所へ第玖号が口を開く。
「ジゼル様、もうそのように嘘をつかれなくても良いのですよ」
「ッ!!」
 ジゼルの表情には明らかに動揺の色があったが、慌ててそれを隠す様に馬鹿にした目で雫澄を見据える。
「……何よ、もうバレてるって訳?」
「本当に……本当に君が……?」
「だったらどうするっていうの?」
 雫澄が困っているのをいい事に、ジゼルは追いつめるように彼を蔑んだ。
「どうするって……どうしようとかそういう事じゃなくて……
 何か理由が有るなら話してくれ。
 僕等でも力になれるかもしれないじゃないか」
「アンタが? 力になるですって? そんな事絶対にあり得無い!!」
 ジゼルは踵を返して早歩きでその場を立ち去ろうとする。
「ジゼル! こんな事はやめるんだ!!」
「私がその子の……皆の力を盗ってるのよ! 私はアンタを騙したの!!」
 ジゼルはそう言い放つと、踵に手を掛けてサンダルを脱ぎ捨てた。
「私は……セイレーンのジゼル。この偽物の足の下には鱗に覆われた尾があるわ。
 こんなものを履いてるアンタ達地上人とは永遠に分かりあえない」
 残された雫澄はジゼルが残したサンダルを見つめて小さく呟いていた。
「……ジゼル……」