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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 4

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第13章 4時間目・自習

「お待たせしました、明日香♪」
「エリザベートちゃん。どこでオヤツを食べたいですか?」
 明日香は幼い校長と手をつなぎながら訓練場内を歩く。
「あの石の上に、座って食べましょう〜♪」
「柔らかいクッションを置きましたから、ここへどうぞ。それとも、私の膝の上で食べますか?」
「お膝の上がいいですぅ〜」
 エリザベートは当然のように言い、無遠慮に座る。
「明日香、本の扱い方ちゃんと覚えましたかぁ〜?」
「基礎さえしっかりしていれば、独自アレンジも可能なんですよね?」
「はい♪章の力を放出して、そこからイメージで変化させてもいいんですけどぉ〜。術を持続させる時間は、今のところは数秒くらいって覚えておいてください〜」
「もっと実戦経験を積んで、使いこなしてからってことですね」
「そうなんですぅ〜。…それで明日香、今日のオヤツは〜…」
「今日は、杏ですよ」
 冷蔵庫で冷やしておいた旬の果物を食べさせる。
「冷たくっておいしーですぅ〜」
「もう一口…はい、あーん♪」
「むぐむぐ……」
「あらあら、お口が汚れちゃいましたね。私がキレイに拭いてあげます♪」
 口についた果汁をナプキンでふきふきする。
「明日香は合宿に来ますかぁ〜」
「ということは、お泊りなんですか?」
 やっぱり外泊なのだろうかと聞く。
「そうですよぉ〜。でも、遊びに行くわけじゃないですからねぇ〜」
「エリザベートちゃんと同じお部屋がいいですね♪…自由行動はあります?」
「ん〜、時間があればですねぇ〜…。私も明日香と遊ぶ時間が出来ればいいんでけどぉ〜…。今のところわかりませんからねぇ。せめてご飯だけは、一緒に食べましょう〜」
「もちろんです♪」
「…明日香。アイデア術を練習する生徒がいると思いますからぁ〜。見に行きたいですぅ〜」
「分かりました。あら…抱っこするんですか?」
 膝から降りた少女が両腕を広げている様子を見て、抱っこしてほしいのだろうかと首を傾げる。
「ずっと立ちっぱなしで授業してたんで、疲れちゃいましたぁ〜」
「甘えん坊さんですね♪」
 クッションをバッグの中にしまった明日香は、果物を入れている器をエリザベートに渡し、お姫様抱っこしてあげた。

 

 マグヌスエクソシズムの練習をしようと、木の少ないエリアにルカルカたちが集まった。
「まずは綾瀬が呼び出し始めて、その後に裁きの章…哀切の章の順番で唱えるのよね」
「神降ろしで魔力増大させたら変化があるだろうか?」
「んー?分からないわね。まぁ、元々の術は成功しているんだから気楽に行こう♪」
 淵の提案にルカルカがノリノリで賛成する。
「失敗しても泣くことはないってことだな」
「ダリルったら…前向きにいこうよ」
「積み重ねってのぁ大事だよな。…失敗も知識の一部ってか?」
「カルキまでなんてこと言うの!」
「ダメモトという言葉があるんだし、気にすんな」
「もう!2人とも酷いっ」
 ルカルカはプンプンと怒り顔をする。
「綾瀬、始めよう」
「不機嫌なままですと、魔道具に影響しますわ」
「ぅ…うん。神降ろしは、章を使った後にやるわね」
「では、呼び出しますわ…」
 綾瀬は聖杯をかかげ、祈りを捧げる。
 ルカルカたちは手順通りに術を行使し、リトルフロイラインに吸収させる。
「(ここで神降ろしを使おう♪)」
 神降ろしのスキルも吸収出来ないか発動してみた。
 召喚されたリトルフロイラインは、申し訳なさそうにしょんぼりとしている。
「どうしました?」
「あ、あの…綾瀬様。章の術の後に、通常のスキルが使われていましたが、ああゆうのは吸収出来ません」
「通常のスキルで対応するものはないんですの?」
「残念ながらありません…」
 リトルフロイラインは申し訳なさそうにかぶりを振る。
「では…、解毒を銃弾の様に飛ばすことは出来ます?」
「それはマグヌスエクソシズムの効果にないものですから。改良した新しい術として、成功させるしかありません」
 パターン化していないから、今すぐには無理と答える。
「うわぁんっ、失敗!」
 ダリルが作ったチェリーのカップケーキを、ルカルカがやけ食いする。
「そういう時もありますわ」
「何か大きな声が聞こえましたけど。何か、あったんですぅ〜?」
「気にしなくていい。ケーキでもどうだ?」
 ルカルカに全部食べられる前に確保していた分を、淵が明日香にお姫様だっこされているエリザベートに渡した。
「どうだうまいだろう」
「おいしーですぅ〜」
「作ったのは俺なんだが」
「そ〜なんですかぁ?」
「エリザベートちゃん。ケーキがお口にくっついてますね」
「まったく妹かよ」
 明日香に甘えているエリザベートの姿に、カルキノスがつっこみをいれた。



「私が声をかけるから、チームに参加してみてヨ」
「で、でも…。メンバーが固定で足りなかったり、効力に該当しない魔道具を持ってきてしまったら…。相手を困らせてしまいますよ」
「うん…。確かによくないネ。合うものを持ってくるって、事前に伝えようネ」
 トゥーラをアイデア術に参加させようと、ディンスはメンバーを探す。
「私もなるべく同行するカラ。だから、チャレンジしてみようヨ。トゥーラに合わせて、私が変更するからネ」
「は…はい。そこまで言うなら…」
 意欲と適正に合わせて方針を変えることは誤りではないし、エクソシストになるための「頑張る!」であれば、言葉に偽りはないようだ。
 草が茂っている場所で、歌菜たちが集まっている。
「…トゥーラを参加させてくださイ!」
「何の魔道具ですか?」
「アークソウルですヨ。私は見学していますネ」
「陣さん、これで揃いましたね」
「じゃ、手短に説明するか」
 陣はノートを見せてアイデア術の発動手順を説明する。
「で…分かった?」
「はい」
「せっかくアップグレードしたんやし。強化バージョンのホーリーソウルも混ぜ込んで、強化の足してみようや」
「成功したパターンの魔道具のリストに入っていないぞ、陣。それでは新しい別の術になるのじゃ。だいたい、どう使うか決めているのかの?」
「き…決めてない」
「愚か者!それは丸投げじゃぞ」
「や、やめや。…ホント、マジでやめてジュディ、ごめんって!」
 無理やり激辛饅頭を食わされそうになり謝る。
「そんじゃーやりますかっと…。魔を貫く雫よ…魔の匂いと魔の真実を暴く元素を抱き…」
 彼の詠唱に合わせてトゥーラたちも言葉を紡ぐ。
 アークソウルとエアロソウルの宝石の光が、ジュディ・ディライド(じゅでぃ・でぃらいど)のスペルブックに飛び込む。
「追いつけるもんなら追いかけておいでー」
 リーズは不可視の者を挑発し飛び回る。
「ちびに触ったら、いてーッてなったゾ」
「にゃはは」
「天へ駆け昇り…弾けて混ざれ!混ざりし雲よ、我らに全てをさらけ出す豪雨を降らせよ!」
 裁きの章から黒い霧が噴出して天井へ広がり、黒い雲へと変わった。
「セット!レイン・オブ・ペネトレーション!」
 リーズにじゃれる魔性に浴びせ、姿なき正体を見破る。
「エアロソウルを持っていなくっても見えるんですね?」
「術を使った者なら、はっきりと見えるんや」
「ボクにはぼんやりとだけだね」
 術に参加していないリーズは目を凝らして見るが、薄っすら確認出来る程度だ。
「範囲は少しだけ広くなったか?」
 ほんのり広くなっただろうか…と羽純が雲を見上げる。
「(まだ遠いネ…)」
 ディンスは見学しながら、魔道具に挟まっていた【地図】を開き、目標を再認識する。
 トゥーラを不安にさせない実力をつけたら、これを見せて対等な仲間としてそれぞれの夢を叶える為に全力で協力して欲しい、と伝えようと思っている。
「ちゃんと見ていてくれましたか?」
「ぇ?う、うん…」
 途中から地図を見ていたディンスは、トゥーラに小さな声で言う。