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一会→十会 —アッシュ・グロックと秘密の屋敷—

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一会→十会 —アッシュ・グロックと秘密の屋敷—

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【目覚め】


「お帰りなさい」と微笑む瞳は、何処か悲しげな色を含んでいる。
 プラヴダの基地で契約者達を出迎えた者達も、帰って来た者達も互いが得た情報を既に共有していたからだ。
「アッシュさん、ごめんなさい。
 アッシュさんの過去を勝手に見てしまい、形見の品も無事に持ち帰ることが出来ませんでした」
 正面を見据えたアッシュの前に、豊美ちゃんが謝罪の言葉を贈り、鏡面が割れた鏡を差し出す。
「気にしないで、豊美ちゃん。僕も知らなかった……いや、忘れていた事を思い出させてくれたのは間違いなく、豊美ちゃんや皆のおかげだから」
 気遣う言葉を贈ったアッシュの雰囲気は、それまでのものとは明らかに異なっていた。渡された鏡の、割れた鏡面を指先でなぞって、アッシュは口を開く。
「懐かしいな。――ムッティの鏡だ」
 ゆっくりと瞼を閉じて、アッシュは呟いた。
「うん、全部思い出した」
 開いた赤い瞳と同じ様に、彼の周囲に炎が巻き起こる。
 闇に飲まれ、奪い取られた彼の勇気を、ヴァルデマールへ示す様に。
「僕の名はアッシュ、『炎を操る者』!」


* * *



 何処迄も続く暗闇の中、ほの暗い光が祭壇の前の男にのみ降り注いでいた。
 乳白金の髪、紫色の瞳。
 完璧なように見える容姿だが、魔法石へ力を与えるその右手には深い裂傷が残っている。
 ヴァルデマール・グリューネヴァルトは呪文を唱え続けていた。
 闇の勢力を広げる為に。
 世界を裏から操り、彼の闇で包み込む為に。
 しかし、ヴァルデマールの小さく開閉する唇が、ふと動きを止めた。
 指先は震え、裂傷からは痛みを伴って血がドクドクと溢れてくる。
「Quatsch!!(*馬鹿な!!)」
 ヴァルデマールは溢れる怒りを抑える様に、傷口を握りしめていた。
 あの時の苦渋を、また味わう事になろうとは――。
 だが今度は違う。
 今度はそうはいかない。
 光りの力に対抗する為の力を、数年の間に蓄えてきたのだ。
 そう、今ヴァルデマールの後ろには、何十、何百、何千という闇の軍勢が輪を巻いている。

 ――アッシュの目覚めと共に、闇の力もまた、この世に溢れる時が来たのだ。


続く


担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

Gruess Gott!
シナリオへの参加頂いた皆様、ここまで読んで下さった皆様、有り難う御座いました。

【東安曇】
 思った以上に破壊の限りを尽くす内容になり、執筆しながら東も驚いてしまいました。でも楽しかったから……(小刻みに震えつつ)
 えー今回は折角の地球旅行なのに、内容的に碌に観光も出来ない仕様だった為、無理矢理外国に居るんだよという雰囲気を出そうと、外国語のシーンを増やしてみました!
 (結果あれ、いつも通り?……な感じも致しますが)
 毎度の事ですが、東の外国語は適当です。口語もかなり混じっています。スペルチェックはした!くらいの勢いなので、生暖かく遠い目で見守って下さると助かります。
 さて。今回はアッシュの過去が明らかになりました。次回は地球に帰った皆さんと豊美ちゃんアレクは、魔法石の謎を解く為に動く事になる予定です。それでは。また次回お会いしましょう!


【猫宮 烈】
「……お前たちが破壊の限りを尽くしたが故に、私と豊美が苦労する羽目になったのは理解しておろうな?」(姫子

 ……だそうです。
東マスターが呪われないように祈っていますね(他人事

 実際に訪れたことのない観光地だと、どうしても想像になってしまいますねぇ。
こんな風になってるのかなーと、乏しい頭をひっぱたいて書いてみました。

 さて、そろそろ『敵』の方も契約者という存在が脅威であると気付いたようです。
 次回は契約者の弱点? を突いた妨害を仕掛けてくるかも?
 ……などと語りつつ、では、また。次回もどうぞよろしくお願いいたします。