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特別なレシピで作製された魔法薬

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特別なレシピで作製された魔法薬

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イルミンスール・魔法中毒者の確保


 イルミンスールの街。

「やっぱり、やりやがったか、あのマッドサイエンティストめ! 黒亜の野郎、今すぐにでも殴り倒しにいきてぇが……」
「ですわね。妖怪の山であんな騒ぎを起こして、また同じことをするとは……それより中毒者ですわ。そう言えば、会うのは初めてですわね」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は怒り、リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)は呆れていた。以前妖怪の山にて黒亜のお仕置きを担当した事があるため尚更である。それでもこちらに来たのは妖怪の山を救うためだ。
「そういや、そうだな。あいつに会って何とか向こうの解除薬作製に協力させねぇとな。レシピを完成させたのなら出来るだろうし。何より事態を動かせる奴がいるなら呉越同舟だ!」
「そうですわね。色々とお話したい事はありますが」
 何やかんやと魔法中毒者に関わりながらも顔を見るのが今回が初めてであるシリウスとリーブラ。
 その後、二人は執念のヴラキから魔法中毒者の居場所を聞き出し脱毛の魔法薬をぶっかけられた報復と騒ぐ彼と調薬友愛会を説得して魔法中毒者の確保と情報収集を認めて貰った。当然魔法中毒者確保に向かう事は皆に拡散した。

 寂れた通りに佇む怪しげな家。

「……ここか」
「改めてこの街を選んだという事に何かを感じますわね」
 シリウスとリーブラは家を見上げていた。研究所があったこの街を選んだ自体何か意味を感じていたり。
 とにもかくにも
「……無駄口はここまでにして行くか」
「そうですわね」
 シリウスとリーブラは乗り込んだ。解除薬だけでなくシリウスは『プロフィラクセス』、リーブラは『心頭滅却』で他の魔法薬の対処済みである。

 家の中。

「おいおい、何だよ、これ、自爆事故か!?」
「……状況から見て間違いなさそうですわね」
 シリウスとリーブラはすぐに魔法中毒者を発見するも目の前の状況に唖然。何せ自作した薬で意識不明になっているのだから。
「……ま、まぁ、この方がやりやすいよな。オレはこいつに解除薬を飲ませるから、他を頼む」
 シリウスは呆れの溜息を吐くしかなかったが、すぐに治療に動いた。
「……そうですわね。わたくしは家中を換気して汚染された空気を外に出しますわね」
 リーブラはすぐさま家中の窓を開け放ち、『光条兵器』の大剣で壁を壊して最高に風通しをよくした。それさえ整えば後は空気清浄担当に任せておけば問題無い。ちなみに記憶素材化の魔法薬が入っていた瓶は全て気体化して空であった。

 解除薬を魔法中毒者に飲ませた後。
「……起きねぇし、素材化が収まってねぇな。やっぱり、発生源にいるからか? リーブラ」
「はい。記憶が素材になっているのなら読み取れば何か分かるかもしれないという事ですわね。では、申し訳ありませんが……」
 シリウスとリーブラは目覚める様子のない魔法中毒者に次の手を取らざる得なかった。それは素材に触れて記憶を確認する事である。

 しばらくしてリーブラが魔法中毒者の記憶確認を終えたのを見計らい
「どうだった?」
 シリウスが訊ねた。
「魔法薬を完成させた様子は見えましたが詳しくは……ただ」
 リーブラは読み取った結果を報告。肝心な事は頼りにならなかったが他の重要な記憶を得ていた。
「ただ?」
 促すシリウスに
「幸せな記憶として名も無き旅団のクリスと名乗る女性と交流した時の物がありましたわ。特別なレシピと旅の目的について話していまして記憶を素材にするレシピと記憶を集める旅で似ていると盛り上がっていましたわ」
 リーブラは楽しそうに客人である旅団の女性と話す魔法中毒者の姿を思い出しながら話した。
 その時、
「……ん」
 魔法中毒者が目覚めを迎えた。
「ようやく、お目覚めか。状況は分かってるな。お前のレシピを改良してばら撒いていやがる奴がいる。解除薬の効きも悪い。協力してくれたらこの騒ぎ後の便宜を図ってやるぜ」
 シリウスは挨拶をすっ飛ばし、用件だけを簡潔に述べた。こうしている今も妖怪の山では大変なので。ちなみに便宜についてはシリウスが『根回し』でエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)達に恩赦を出すように掛け合い、了承済み。
「……改良……解除薬の効きが悪い……そんな事が……」
 中毒者が心に入れたのは恩赦ではなく改良された魔法薬の事であった。
 彼女はぼんやりと立ち上がり、フラフラと歩き始めた。
「おい、はやる気持ちは分かるが、待て。あと名前を教えろ(本当なら遺跡の事を話したいが、今はそんな時間がねぇな)」
 シリウスは急いで追いかけ、腕を掴んで止めた。本当なら名前を聞くだけでなく別の話もしたい所が時間が無く惜しいばかり。
「……ミモラ」
 魔法中毒者は簡単にそう答えるだけ。余計な事は口にしない。頭にあるのは黒亜に対する対抗心のみ。
「ミモラか。よし、案内してやるから。力を貸して貰うぜ」
 掴んでいた腕を放し、改めて案内を始めた。
「……上手く行きましたわね」
 リーブラは交渉成功確認後、入手した情報を拡散した。
 シリウス達は無事にミモラを治療所兼避難場所へ案内した。到着するなりミモラは協力に加わり、シリウス達は監視に回った。なぜなら他の者達は騒ぎ解決で手一杯なので。