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17)緋桜 ケイ(ひおう・けい)

「先ほどの放送事故を深くお詫びいたします」
(何があったんだ!?)
緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、
トッドさんに確認したかったが、
テレビ出演に緊張気味であったので、そんな余裕はなかった。


「イルミンスール魔法学校の緋桜ケイ、です。
今日はよろしくお願い……します」
口調も丁寧なものを意識する。
(コントラクターとして、地球のみんなにパラミタのことを伝える機会だ。
しっかりしないとな!)
「うむ。ケイのパートナーの悠久ノカナタだ。よしなに頼むぞ」
悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は、堂々としたもので、
いつも通りの口調だった。

「こんにちは。東シャンバラのロイヤルガードでもあるケイさんですが、
百合園女学院に留学された経験があったりされるんですよね」
「へ? え、えぇ……まぁ……」
予想外の質問にケイは面食らう。
「地球の番組なのに、すごいリサーチ力ですね。
そんなことまで調べてあるとは……驚きました」
「美術室にはセクシーなお姿での肖像もいくつか拝見しましたけれど、」
(……美術室?)
ケイはぽかんとする。
たとえばこれなんですけど
「な……と、盗撮!?」
ケイが硬直する。

「普段お召しの下着はどのようなものなのかしら。
やはり、男の娘用補正下着もお召しなのかしら。
もしくはTPOに分けてどのように履き分けていらっしゃるの?」
「そうですね……やっぱり可愛い感じが好みで……って、何だよ!その質問はっ!!」
赤面して素の口調に戻るケイだったが、
カメラを意識して我に返る。
「……そ、そんな質問、答えられません!
というか、さっき静香校長にも同じようなこと聞いてましたよね!?」
「さっきのお姿では、内側はどのような状況になっていらしたの?」
「引っ張らないでください!
……ほ、他っ!他の質問にして下さいっ!」
「こやつは滅多なことでは人前に肌を晒さぬからな
……風呂でも胸元までタオルで覆っておる」
「カナタ! 個人の自由だろ!?」
「それよりも、わらわについてはスルーされるとはどういうことなのだ!?
たしかにケイは可愛い容姿をしておる。
だが、わらわとて、【真紅の魔法少女】と呼ばれる存在。
そうした俗的な話題であっても、ケイだけが優先されるのは納得がゆかぬ!」
「って、下着の話、聞かれたいのかよ!?」
「わたくし、同世代の方にはそうした話題については興味ありませんの」
「なにっ、おぬしとわらわが同世代だと!?」
「トッドさんの洞察力もすごいけど、
それって、本当は、めちゃくちゃサバ読んでもらってるんじゃないのか?」
「やかましいわ!」
カナタがケイを杖でしばく。

「では、次の質問に移っていいかしら」
トッドさんはペースを崩されない。
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)さんからケイさんへの質問です。

ロイヤルガードの合コンパーティーでリア充として密告されたと聞きました。
そこで、ケイさんとお相手さんとの馴れ初めをお聞かせ下さい。
密告されるくらいのラブラブだと、どんな馴れ初めがあったのかなーと気になったもので」

(密告されたのは、俺とあいつだったよな……)
「馴れ初めとは違うけど、元々同じ学校の生徒同士だったしな……。
俺にとっては魔法使いの先輩でもあったし……でも……」
それだけではなかった。
パラミタに来た最初の夏、ケイが見た、あの少女の姿は。
「2019年の夏、ルクオールという町が冬になってしまった事件があった。
しかも、アーデルハイトが誘拐されてしまって、
連れ戻すまで夏休みは中止だとエリザベートが宣言したことがある。
その事件に、俺たちは一緒に関わっていたんだ」
ケイは、事件の起こり
そして顛末を語って聞かせた。

(アイスを作ってじゃれ合っていた、
あの少女の姿をもう一度取り戻すためにも、俺は……)
ケイは決意を新たにする。
それが、どんなに困難なものであっても。