リアクション
第三十試合 『続いては、緋山 政敏(ひやま・まさとし)選手対、泉 美緒(いずみ・みお)選手です』 「えーっ、ココと戦いたかったのになあ……」 あてが外れたと、緋山政敏が、紙風船の載った頭をポリポリとかきながら武舞台に現れた。 「せっかくお姫様だっこして、ミトゥナは俺の嫁宣言するつもりだったのに……ぶつぶつぶつ」 「あのー、対戦相手は私なんですけどー」 何を考えているんだと、泉美緒が言った。 『さあ、試合開始です』 ゴングが鳴る。 「魔法大会でいいとこいったんだろう。こっちが格下なんだから手を抜けよー」 『ああっと、緋山政敏選手、いきなり薔薇の花がついている泉美緒選手のたっゆんを素手でつかみに行きました。これは直接的な攻撃だ!』 『女性の敵ですわあ。やられちゃえー』 シャレード・ムーンの実況に、セラフ・ネフィリムが同意した。 「何するんですかあ!」 泉美緒が剣で反撃するが、なぜか緋山政敏の直前で剣が逸れてしまった。 『痛いッス』と粘液のフラワシが、緋山政敏にフラワシ使いが荒いと文句を言う。いや、痛いのは緋山政敏も同じだ。 「いいから行け!」 緋山政敏の命令で、僥倖に変化したフラワシが、見えない手で薔薇のシンボルごと泉美緒のたっゆんをむんずとつかんだ。 「な、何!? 見えない手が。きゃー」 泉美緒があわてて逃げだす。 『勝者、緋山政敏選手です。あー、武舞台に物を投げないでください』 「いいぞー、もっとやれー」 客席から変な声援が飛ぶ。 『繰り返します。観客の皆様、武舞台に物を投げないでください』 第三十一試合 『お待たせしました。武舞台の清掃が完了しましたので、次の試合を行いたいと思います』 シャレード・ムーンのアナウンスの陰で、モップを片づけているディミーア・ネフィリムがなんでこんなことまでしなくちゃいけないのよと文句を言って、エクス・ネフィリムになだめられている。 『一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)選手対、神崎 荒神(かんざき・こうじん)選手の戦いとなります』 呼ばれた一瀬瑞樹が、846プロの制服であるフリフリのアイドル衣装で、ファンの人たちに手を振った。 「いっけない。ちょっと待っててくださいね」 そう言うと、やにわに更衣室に飛び込む。 おお、衣装換えだとファンが期待する中、すぐに一瀬瑞樹が魔導剣にミサイルポッドの連装で戻ってきた。殺る気満々である。頭には、シンボルである青い薔薇の髪飾りをつけている。 「ほう、腕試しにはちょうどいい」 準備体操を続けて一瀬瑞樹を待っていた神崎荒神が、面白そうに言った。頭の上に紙風船を載せている。 『さあ、お待たせしました。試合開始です』 ゴングが鳴る。 「よっしゃ、いこうか。まずは小手調べだ」 神崎荒神がリカーブボウを引き絞った。 「射撃戦ですね。いっけー!」 加速ブースターで矢を避けた一瀬瑞樹が、両足を床に固定してミサイルを一斉発射した。わずかに早くそれを看破していた神崎荒神が事前に回避する。 激しい爆発で視界がホワイトアウトする。その一瞬に、神崎荒神が一気に間合いを詰めた。 「隙だらけだぜぇい!」 素早い正拳突きで、一瀬瑞樹の頭の薔薇飾りだけを壊す。一瀬瑞樹は、背中に背負った大剣を抜く暇もなかった。 「まっ、俺に任せれば、ざっとこんなもんだぜ」 「参りました。完敗です」 一瀬瑞樹がさし出す手を、神崎荒神がしっかりと握り替えし、お互いの健闘をたたえた。 「じゃあ」 負けた一瀬瑞樹が、小走りに武舞台から去って行く。 「うっうっ、くやしーよー。負けるにしても、神崎姓の人に負けるだなんて……。マスターたちになんて言おう……」 ちょっと唇を噛みながら、控え室へと駆け込んでいく一瀬瑞樹であった。 第三十二試合 『さあ、次の試合は、西表 アリカ(いりおもて・ありか)選手対、リゼネリ・べルザァート(りぜねり・べるざぁーと)選手です』 「みんなー、頑張るよー」 大きく両手を振りながら、西表アリカが武舞台にひょいと跳びあがってきた。 「元気がいいね。だが、僕がやるからには、勝つ気で行くよ」 ファーのついた黒いコートを翻して、リゼネリ・べルザァートがゆっくりと武舞台に上がってくる。この大会は、パートナーたちの間の力量を比べ合ういい機会だ。それゆえに負けるわけにはいかない。 両者、共に頭の上に紙風船を載せている。 『それでは試合開始です』 「ボクのスピードについてこれるかな」 開幕早々、リゼネリ・べルザァートが放つ月削ぎのスキアと星掬いプロセウケの二丁拳銃の攻撃を、西表アリカが流星のアンクレットを使って華麗に避けまくった。 「速いね」 その動きを追って、リゼネリ・べルザァートがさらに銃を撃つ。その銃弾を剣で切り払った西表アリカが、一気に二刀流を繰り出した。 間一髪、リゼネリ・べルザァートが雪風で空に舞いあがって逃げた。そのまま、氷雪を叩きつけると地上に下りてそこから銃撃する。 「うにゃあ、尻尾があ」 尻尾の先が凍りついて、西表アリカがちょっと悲鳴をあげた。 「ええい、こうなったらあ!」 西表アリカが、最後の技にでた。リゼネリ・べルザァートにむかって、乱撃ソニックブレードを放ちつつ、二刀流を構えて一気に突っ込んでいった。 その勢いに、武舞台端まで追い詰められていったリゼネリ・べルザァートが、さっと横に避ける。 「あっ、あれ!?」 勢い余って、すとーんと西表アリカが武舞台を飛び出して落ちた。 「うぎゃん!」 そのままびたーんと地面に突っ伏し倒れる。 『勝者、リゼネリ・べルザァート選手です』 第三十三試合 『続いては、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)選手対、マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)選手です』 「いい試合にしましょう」 首から髑髏のネックレスを提げたゲドー・ジャドウが、見た目と違って礼儀正しく握手を求めてきた。 「ま、まあ、そういうことなら……いてー!!」 握手ぐらいならと手を出したマサラ・アッサムが悲鳴をあげる。あわててゲドー・ジャドウから離れると、掌に刺さった画鋲を抜いて床に投げ捨てた。 「いい試合になんざならねぇよ! ヒャハハ!!」 ゲドー・ジャドウが高笑いをあげる。 『ああっと、試合前から、まさに外道です、ゲドー・ジャドウ選手。さあ、マサラ・アッサム選手、この強敵を倒せますでしょうか。試合開始です』 「何が出るかな、何が出るかな。アヒャ」 あれこれと攻撃魔法を選びながら、一気に決めてやろうとゲドー・ジャドウが一歩前に進み出た。 ぷすっ。 なんと、先にマサラ・アッサムに使用した画鋲が床に落ちていたのを、うっかりと自分で踏んでしまう。 「あ〜、超イテェ、泣きそう」 「隙あり!!」 その一瞬をついて、マサラ・アッサムがレイピアを突き入れた。ネックレスの紐を切られ、髑髏が床に転がる。 「勝者、マサラ・アッサム選手です」 「あんだって、そんなのどうだっていいぜ。茶番は終わりだあ!!」 試合など無視して、ゲドー・ジャドウがマサラ・アッサムにむかって、光術と闇術を交互に放つ。 「イヒヒヒヒャハハハハッハハハハハ……はあっ?」 高笑いをするゲドー・ジャドウの前で、炸裂したはずの光と闇が急激に消滅していった。その後ろから、ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナが姿を現す。それぞれの手には、ゲドー・ジャドウの魔法を吸収した星拳が光り輝いていた。 「よくも、うちのメンバーに手だそうとしてくれたな。空の果てまで吹っ飛べー!!」 容赦なく、星拳スター・ブレーカーが炸裂する。 守ろうとした手下のアンデッド諸共、ゲドー・ジャドウが吹っ飛ばされて空のお星様になって光り輝いた。 『キラン、してしまいましたゲドー・ジャドウ選手。もろに、ゴチメイ隊の怒りを買ってしまったようです。なにげに、完全な星拳の一撃を受けています。無事をお祈りいたしましょう』 |
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