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シャンバラ一武闘大会

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第十七試合

 
 
『気をとりなおして、第十七試合に移りたいと思います。超 娘子(うるとら・にゃんこ)選手と無限 大吾(むげん・だいご)選手の戦いです』
「ニャーッハハハハハ、ニャー。正義のヒロイン☆ウルトラニャンコ、ここに参上! とうっ! にゃ」
 武舞台近くに立てられた照明灯の上に立った超娘子が、高笑いと共に大きくジャンプした。そのままキャット空中三回転で武舞台の上にスタッと下りつつ身を低くしてポーズをとる。
「ニャニャニャニャニャ……。ニャンコの力を見せてやるニャ」
 立ちあがり、腰に手をあてて超娘子がたっゆんな胸を張った。その胸には、シンボルである青い薔薇が飾られている。
「参ったな。俺は今日は真面目に戦うつもりだったんだが。だが、どんな相手だろうとなめてかかったりはしない。戦いを通じてわかり合うためにも、まずは全力であたらせてもらう」
 胸の蒼空学園の校章バッジをキラリと輝かせながら、無限大吾が爽やかに言った。
『さあ、試合開始です』
 ゴングが鳴る。
「うなれニャンコの拳と肉球!」
 一気に間合いを詰めてきた超娘子がパンチを繰り出してくる。一歩も引かずに、無限大吾が持っていた竜鱗の盾でそのパンチを受けとめた。
 敵の動きが止まったのを、インフィニットヴァリスタについた銃剣で薙ぎ払おうとする。だが、さすがに俊敏な超娘子はバク転でそれを避けた。そこを、間髪入れずゴム弾で狙撃する
「なんの。轟け怒濤の超魂ニャンコ稲妻キック!」
 銃弾をかいくぐった超娘子が、高くジャンプして跳び蹴りを浴びせる。
 再び盾で受けとめたものの、さすがに全ての衝撃を受けとめきれずに無限大吾の身体がわずかに開いた。そのわずかな隙を抜いて、超娘子が足先で無限大吾の胸をひっかいた。
 蒼空学園の記章バッジが床に落ちて撥ね踊る。
『勝負あり。超娘子選手の勝ちです』
 シャレード・ムーンが勝者を宣言する。
「やったにゃ、やったにゃ、やったにゃ」
 超娘子が、ピョンピョンと跳ねながら喜んだ。
「いい勝負だった……まあ、いいか」
 試合後の握手を求めようとした無限大吾だったが、超娘子は両足を揃えてジャンプしながら武舞台を一周している最中だった。
 
 
第十八試合

 
 
『さあ、どんどん行きましょう。第十八試合は、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)選手対、ジェイムス・ターロン選手です』
 光の翼と羽の翼の二つを軽く羽ばたかせて、コハク・ソーロッドがふわりと武舞台に降り立った。胸には紙風船、両手にはパラミタバゲットが握られている。
「よろしくお願いします」
「これはこれは御丁寧に。こちらこそよろしくお手合わせ願います」
 丁寧に挨拶するコハク・ソーロッドに、ジェイムス・ターロンが右手を軽く胸にあてて返礼する。初老の姿と相まって、いかにも家令というイメージだ。その左胸には、赤いコサージュが飾られていた。
「行きます!」
「御存分に」
 ゴングと共にバケットを振り下ろしたコハク・ソーロッドであったが、ジェイムス・ターロンは白手袋を填めた手でそれを軽く受け流した。いかに固いパンとはいえ、パン屑一つまき散らさないように加減して受け流す。
「いけませんね、食べ物をそのように粗末に扱いましては」
「できるだけ、人は傷つけたくないんです」
 丁々発止で、バケット対素手のやりとりを繰り広げながら、二人が言葉を交わした。
「ですが、さすがですね。パンもあなたも傷つけずでは、つけいる隙がございません。かくなる上は、できれば使いたくありませんでしたが、あれを……」
 パチンと、ジェイムス・ターロンが指を鳴らした。
 武舞台近くにしつらえられてあった簡易更衣室のカーテンが、はらりと下に落ちる。
「もーう、せっかくのレースがかぎ裂きになっちゃったじゃな……えっ!? きゃあぁぁぁ!!」
 着替え中だったリン・ダージが、カーテンがなくなっていることに気づいて、大きな悲鳴をあげた。
「うっ!」
 それを見たコハク・ソーロッドが顔を押さえてばったりと前のめりに倒れる。
 パチンと胸の風船が押し潰されて割れた。その後に、赤い血だまりが広がっていく。
「すぐに救護班を」
「はいでございます」
 シャレード・ムーンに言われて、担架をかかえた常闇夜月が、エクス・ネフィリムに手伝ってもらってコハク・ソーロッドを回収に行く。
「御無礼をいたしました」
 ジェイムス・ターロンが、運ばれていくコハク・ソーロッドとリン・ダージに深々と頭を下げた。
『勝者、ジェイムス・ターロン選手!』
 
 
第十九試合

 
 
『さて、第十九試合です……、あらっ、雨?』
 突然会場に降り始めた小雨に、シャレード・ムーンが空を見あげた。
「あのう、こんな物を選手の方から渡されたのでございますが……」
 その間に、ディミーア・ネフィリムが何やら走り書きのメモをセラフ・ネフィリムに渡す。
「これを読めばいいのねえ」
 セラフ・ネフィリムが、マイクを手に取った。
『キノコ皇帝参上ー!』
 その声と共に、シンボルである天狗の仮面を被った佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が、ふわふわ気分で地上一メートルほどをスキップしながら会場にむかっていった。
『ええと、佐々木八雲選手、登場です!』
 あわててシャレード・ムーンが選手を紹介する。
『――おいおい、前も言ったけど、天狗は関係ないだろ?』
 佐々木八雲が、精神感応で突っ込んだが仮面を被った佐々木弥十郎は涼しい顔だ。
『ええっと、対するは、霧島 春美(きりしま・はるみ)選手です』
「出番のようだね、ワトソン君」
 見えないワトソン君に一言かけてから、名探偵ホームズの姿をした霧島春美がつかつかと武舞台にむかった。ハンチング横から大きく飛び出たウサ耳に、シンボルとなる紙風船が縛りつけてある。
「マジカルホームズ、霧島春美よ。よろしくね」
ははは。楽しいねぇ
 自己紹介と共にウインクする霧島春美に、佐々木弥十郎が楽しそうに笑った。
「キノコ皇帝……。確かに興味深いわね
 火の消えたパイプをポケットにしまいながら、霧島春美が佐々木弥十郎のキノコハンドに興味を示す。
 ゴングが鳴った。
「それでは、行きますよお。おっとぉ」
 攻撃を開始しようとした佐々木弥十郎が、自らがさっき雨で塗らした床でみごとにすっころぶ。
「ふむ。面白い、それは罠ですね。なあに、簡単な推理の結果だよ、ワトソン君」
 落ち着いて分析した霧島春美が、微動だもせずに言った。
「だが、その演技ではまだまだだね。ホームズエクセレントビーム☆」
 霧島春美が、マジカルホームズの天眼鏡に仕込んだビームレンズからビームを発した。
今のは……きりかえろ
 かろうじてそれを避けた佐々木弥十郎が、いったんメンタルアサルトを諦める。
「どれ、初歩的な対処を見せてもらおうかね、ワトソン君」
 そう言うと、霧島春美が真空波を放った。
 あわや天狗の面の鼻を切り落とされそうになって、佐々木弥十郎が後退した。
オンリディス、凍えなさい
 追うように距離をつめた霧島春美が、グレイシャルハザードを使って、バリツで敵を投げ飛ばして氷づけにしようとする。
 その冷気に凍った足許の水に足を取られて、佐々木弥十郎がつるーっとその場を逃げて行った。
「つかみそこねてしまったか。一筋ならではいかない人だなあ」
 振り返った霧島春美が苦笑する。
「その動き、ホームズが得意としていた体術、ええっと、確かバカッツでしたっけ……?」
「バリツだ!!」
 自分の愛する格闘技を馬鹿にされて、霧島春美が突っ込んでいった。それを、軽経杖を構えた佐々木弥十郎がまた受ける。それを見て、霧島春美が栄光の杖を突き出した。攻撃はせずに杖を杖で払いのけると、佐々木弥十郎が横に逃げる。
 追いかける霧島春美が横薙ぎに杖を振るったとき、佐々木弥十郎が横っ飛びに倒れ込んだ。今まで彼に隠れて見えなかった場所から、吉兆の鷹が突っ込んでくる。
「しまった……」
 避ける間もなく、霧島春美の紙風船が鷹によって割られた。
「ふふふ、ふふ。ワタシが料理しかできないと侮ったねぇ。君もマッシュルームにしてやろうかぁ。美味しいよ? ヒャー……ごほげほごほ……」
 なんだか変な台詞でパフォーマンスをしようとした佐々木弥十郎が、無理に声を出そうとして咳き込んだ。
『ええっと……、勝者佐々木弥十郎選手です。武舞台清掃のため、三分休憩します』
 シャレード・ムーンが言うと、ぶつくさ文句をたれながら湯上凶司がモップで濡れた武舞台を掃除し始めた。