リアクション
第二十三試合 『さあ、次は、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)選手と、シグルーン・メタファム(しぐるーん・めたふぁむ)選手の戦いです』 シャレード・ムーンに呼ばれて、頭のリボンに紙風船をくくりつけたベアトリーチェ・アイブリンガーが、空飛ぶ箒パロットに乗って武舞台に現れた。 「よろしくお願いします」 そのまま箒に乗って戦うつもりのようだ。 「えっ、もう、わ、私、私の番!?」 のんびりしていたシグルーン・メタファムが、自分が呼ばれたことに気づいて、あわてて控え室を飛び出した。 「よ、よろしくお願い……あいたっ!」 あわてて武舞台に駆けあがってきたシグルーン・メタファムが、端でつまずいて転ぶ。 『おおっと、シグルーン・メタファム選手大丈夫でしょうか。なんだかいっぱいいっぱいです。さあ、戦いが始まります』 「いきますよー!」 シグルーン・メタファムが、開幕早々ヘッドバルカンユニットを乱射した。 ベアトリーチェ・アイブリンガーの眼前で爆発が起こり、もうもうと白煙が広がる。 『これは決まったか……いや、ベアトリーチェ・アイブリンガー選手、無傷です。これはどういうことなんでしょうねえ』 『周囲を見てください、剣の結界です。あれで相殺したようです』 シャレード・ムーンに聞かれて湯上凶司が答えた。 「まだまだー!」 シグルーン・メタファムが、レイ・ライフルを発射した。だが、ベアトリーチェ・アイブリンガーが箒でひらりとそれを避ける。 「そこです!」 逆に、飛んでくる光の剣に、シグルーン・メタファムがあわてて後退した。 それを狙いすましたかのように、ベアトリーチェ・アイブリンガーが鬼払いの弓を放つ。狙い違わず、矢がシグルーン・メタファムの胸にある赤いダミー機晶石だけを打ち砕いた。 「あの、大丈夫でした? お怪我はありませんか?」 ちゃんと狙ったとはいえ、石以外に怪我をさせてはいないかとベアトリーチェ・アイブリンガーが箒から下りてシグルーン・メタファムに駆け寄った。 「だ、大丈夫です」 反動で尻餅をついてしまっていたシグルーン・メタファムが、元気そうに答えた。やっと試合が終わったためか、緊張から解放されてほっとした顔をしている。 『勝負ありました、ベアトリーチェ・アイブリンガー選手の勝利です』 第二十四試合 『第二十四試合は、神代 明日香(かみしろ・あすか)選手の不戦勝となっています』 第二十五試合 『さあ、第二十五試合目、真田 大助(さなだ・たいすけ)選手とローザ・シェーントイフェル(ろーざ・しぇーんといふぇる)選手の登場です』 「パラミタ中の強者との力試しの場。稚拙ながらも、僕がどこまで通用するか、お相手願えますか?」 二本の金盞花を腰に差し、頭に紙風船を載せた真田大助が、ローザ・シェーントイフェルに言った。 「いいわよ。相手になってあげる。最強の座をあの人に捧ぐため。――名も無き花嫁、いざ参ります」 シンボルである薔薇の花束を飾った胸の谷間から、するするとのびあがってきたグリントフレイルをつかむと、真っ白なシルクのウエディングドレスを着たローザ・シェーントイフェルが答えた。 『さあ、試合開始です』 「では、お覚悟を」 「速やかに砕け散ってちょうだい! 大丈夫、痛くしないから!」 ローザ・シェーントイフェルが叫ぶが、どう見てもその棍棒は痛そうだ。さすがに、真田大助がそれを避けて背後に回る。 「それで避けたつもり?」 歴戦の立ち回りで、ローザ・シェーントイフェルがグリントフレイルを背後に負けて振り回す。 手応えがあった。 「えっ、喪悲漢!?」 空蝉の術だ。 「迂闊ですよ、そこっ!」 すでにジャンプしていた真田大助が、着地と共にローザ・シェーントイフェルの胸の薔薇を真っ二つに切り落とす。はらりと、ローザ・シェーントイフェルの胸が顕わになり、あわてて両手で押さえるとぺたんとしゃがみ込んだ。 「やったあ、この勝利を糧に精進を」 「やん、そういうサービスはやってないわよ? 何を精進するの?」 小躍りする真田大助に、ローザ・シェーントイフェルがちょっと悪戯っぽく言った。 『勝者、真田大助選手!』 第二十六試合 『続いては、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)の登場です……が、ええっと……』 姿が見えないので戸惑っていると、空からまたレティ・ランセットが降ってきた。 巨大なメスが武舞台に突き刺さる直前に、二つの人影が武舞台に舞い降りる。 「じゃ、あたしの分も頑張ってね」 すでに敗退しているレティシア・ブルーウォーターが軽くリアトリス・ブルーウォーターにキスをすると、ぶん投げたレティ・ランセットに飛び乗って去って行った。 「さあ、元気百倍だよ!」 ラナンキュラスの造花をリーブラ・クロースの右胸につけたリアトリス・ブルーウォーターが、燃えてがぜんやる気を出す。 『では、対するは……、アルベール・ハールマン(あるべーる・はーるまん)選手……って、こっちも姿が見えない!?』 「いえいえ、すでにここにおりますよ」 それまでどこにいたのか、いつの間にか武舞台の上に姿を現していたアルベール・ハールマンが、薔薇の花の香りを嗅ぐ仕種をしてから、それを左胸のポケットに差した。 『さあ、なんとか試合が始まりそうです』 「ふふふ。よろしくお願いいたしますね。では、まずは、お近づきにひとつお茶でも……」 そう言って取り出したティーポットから、アルベール・ハールマンが熱湯をリアトリス・ブルーウォーターにめがけて振りかけた。 「遅い!」 素早い身のこなしであっけなくそれを避けると、リアトリス・ブルーウォーターが交差させたヴァジュラの交点に爆炎波を発生させた。 その爆炎を軽く前に押し出したかと思うと、一気にキックで加速した。 その後を追うようにしてリアトリス・ブルーウォーターが飛び出す。 「刃神楽・葬炎!」 一気に決めようとしたリアトリス・ブルーウォーターであったが、すでに初撃でアルベール・ハールマンの薔薇は散って燃え尽きていた。 「楽しいひとときでございました。では」 神崎荒神が参加すると言うので戯れに参加した大会だ。怪我でもしては割に合わないと、アルベール・ハールマンはそのまま姿を消した。 「それでは、勝利の舞いを……」 リアトリス・ブルーウォーターがフラメンコを踊る。タンと、区切りをつけると、ポーズを決めた。 「驕れず、ただ精進するのみ」 『勝者、リアトリス・ブルーウォーター選手です!』 |
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