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第二課題 観光案内

「あ、いたいた!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の声に高根沢 理子(たかねざわ・りこ)セレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)が顔を上げる。
「あれ? 他のみんなは?」
「休憩中よ」
「そっか。買いすぎちゃったかな……」
「何を?」
 左手に持った紙袋を見ながら呟く美羽に理子が首を傾げる。
「んー。差し入れ。甘いもの食べたくなるかなと思って」
「良い計らいだな!」
「あ、空京ミスド!」
 袋の中身を机の上に置くと、セレスティアーナと理子が同時に声を上げた。
「うん。せっかくだからミス・スウェンソンのドーナツ屋さんを紹介しようと思って」
「ああ、なるほどね。これ食べていい?」
 理子がクリームの着いたドーナツを手に取る。
「もちろん! セレちゃんも好きなの取ってね!」
 美羽の言葉にセレスティアーナは箱に入った色とりどりのドーナツをきょろきょろと見回す。
「これにしよう!」
 チョコレートがコーティングされたドーナツを取り出すとセレスティアーナは早速口に入れた。
「これは美味いな!!」
「でしょ!! ミス・スウェンソンのドーナツ屋さんは、通称空京ミスドって呼ばれてるんだけど。冒険好きな学生が集まるお店で、冒険の情報が集まることでも有名なんだよ」
 セレスティアーナに説明する美羽の隣で理子が頷く。
「かつてはミルザム・ツァンダ東京都知事(踊り子シリウス)がステージで踊ったり、美味しいドーナツとコーヒーが評判だったり、店員の制服がかわいかったり……契約者の間では、何かと有名なお店でね、オーナーはヨハンナ・スウェンソンさんっていう地球人なの。コーヒー1杯、ドーナツ1個で長居する学生も温かく迎えてくれる、若い女性だよ」
 2つ目を食べながら説明を聞いていたセレスティアーナは、ほう、と感心したように呟くと3つ目を物色しにかかる。
 そんなセレスティアーナの様子を微笑ましく見ていた理子だが、ふとうつむき加減で柔らかな笑みを浮かべる美羽に気づいた。
「美羽?」
「実は……ね……」
 理子の袖を軽く引っ張り声を潜めた美羽に、理子は少しかがんで耳を寄せた。
「実はさ……コハクと初めてデートした場所が、この空京ミスドなんだよね」
「……ええええええ!! ちょっと、初耳なんだけど!」
「リコ、声大きいよ!! だって初めて言ったもん!!」
「どうした?」
「な、なんでもないよ。セレちゃん、もっと食べちゃってもいいよ?」
「そうか!? 次はどれにするかな……」
 二人の声に顔を上げたセレスティアーナだったが、美羽の言葉に再びドーナツの箱に向き直る。
「なるほどねぇ。美羽にとって思い出深い場所ってわけね」
「うん」
 微笑んだ理子の言葉に美羽は少し照れたようにうつむきながら頷く。
「これも美味いな!」
 その横で、セレスティアーナが感心したような声を上げた。
「それじゃセレちゃんも、今度一緒に行こうね」
「そうだな!」
 3人は楽しそうに顔を見合わせるのだった。

「うーん、やっぱりいつ来ても活気があって、でもどこか落ち着ける雰囲気もあって、良いですね」
「勉強にしても仕事にしても、効率を上げるには飲食は大事。それをするスペースの雰囲気も重要だわ」
 カフェテラスでは御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)夫妻がゆったりとティータイムを楽しんでいた。
 普段は自宅での食事やお茶が多いのだが、たまに気分を変え、外に出て時間を過ごすことがあるのだ。
「ちょうど良かった!! すみません、カフェテラスについてお話を聞かせてもらえませんか?」
「カフェテラスについて?」
 突然夏來 香菜(なつき・かな)に声をかけられた環菜が思わず陽太の顔を見た。
「えっと、君は……?」
「失礼しました。私、夏來 香菜と申します」
「はじめまして、御神楽 陽太です」
「ご主人ですね。せっかくのお話中にすみませんでした。実は……」
「……なるほど、お勧めスポット、ね」
 香菜から説明を聞いた環菜は少し考え込むように目線を落とす。
「もし良ければ、お二人にお話を聞きたいんですけど……」
「いいんじゃないですか、環菜」
「陽太が良いなら構わないけど」
「ありがとうございます!」
 陽太の言葉に環菜が頷いた。
「オープンテラスは、凄くお洒落ですよね」
「テラスも、室内も、学校のカフェテラスとは思えない豪華さです」
 テラスを見ながらの陽太に、香菜が同意する。
「そうね。あとはメニューかしら」
「メニュー、ですか」
「そう。校内の施設だから、もちろん学生向きのリーズナブルなメニューも売りなんだけど」
「安くて、量があって……しかも学食としてはかなり美味しいですよね」
 御神楽夫妻の会話を香菜はメモを取りながら聞いている。
「その上で、地球とシャンバラにある大抵のメニューが揃う万能食堂でもあるわ」
「確かにそうですね。特に甘味メニューの充実は凄いと思います」
 陽太の言葉に、一同は自然とメニュー表に目をやる。
「リピーターも多いと噂ですね」
 香菜が頷きながら言葉を挟む。
「そう? 嬉しいわ」
 陽太は、そう言う環菜の言葉を聞き自分も嬉しくなってくるのを感じた。
「お二人のお話、参考にさせていただきますね。ありがとうございました!」
「お疲れ様」
 香菜は二人にぺこりと頭を下げるとカフェテラスを出ていく。
「たまにはこういうのも面白いですね」
「たまになら、ね」
 二人は少し苦笑を浮かべて顔を見合わせる。
「もう1杯飲んでゆっくりしたら帰りましょうか。おかわり持ってきますよ」
「そうね、ありがとう」
 二人の間に、ゆったりとした午後の時間が戻ってきた。

「お待たせー! 行こっか」
 四人乗りの飛空艇でダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)とともに現れたルカルカ・ルー(るかるか・るー)は理子とセレスティアーナをピックアップすると駅に向かった。
 駅からはまずヒラニプラ鉄道に乗りヒラニプラ駅へと向かう。
 ヒラニプラ駅でシャンバラ・レールウェイズへと乗り換えた。
「お客様のお席はこちらになります。安全運転で目的地までお連れします、列車の旅をどうぞお楽しみください」
「ありがとう」
「ああ」
 身振り手振りをつけ車掌のマネで席に案内するルカルカの姿に、理子とセレスティアーナが笑いながら席に着いた。
「それじゃ、シャンバラ・レールウェイズについて紹介させてもらうね」
 ルカルカが理子とセレスティアーナへと確認する。
 二人が頷くとダリルはビデオで説明するルカルカの姿を撮影しはじめた。
 最終的には映像資料として紹介資料の提出を予定しているのだ。
「ある時、パラミタ内海に魔列車が沈んでるのが見付かったわ。そこで環菜がシャンバラと他国を繋ぐ鉄道の計画を立てたの」
「エリザベートやラズィーヤも資金面やアダマンタイトの精製等で協力している」
 ルカルカの説明に適宜ダリルが補足を入れていく。
「魔列車はルカ達も含めた大勢の契約者で発掘され修復されたのよ」
「それがこの列車、内装も駅舎も含めて全てが契約者有志による物だ」
「現在の路線はヒラニプラ駅からヴァイシャリー湖南駅まで」
「さっきあたしたちが乗ったのがヒラニプラね」
「そうそう」
 理子の言葉にルカルカが頷く。
「行く行くはツァンダ、ザンスカール、ヴァイシャリー、ヒラニプラ、空京という主要都市を結ぶ予定だな」
「会社名はシャンバラ・レールウェイズ」
「シャンバラ諸鉄道という意味だな。『諸鉄道』としたのは支線敷設も視野に入れている為だ」
「その名前の発案者が私って訳。自分が名付けた列車が、こうして走ってて理子やセレスとミニ旅行が出来るなんて感無量だし凄く嬉しいわ」
「そうなのか!?」
 ルカルカの説明を聞きながら外を全力で眺めていたセレスティアーナが振り返る。
「そ。だから今回どうしても紹介したかったの。あと、さっきからセレスは見てくれてるけど、車窓からの景色もおすすめだよ」
「行楽シーズンには特別仕様列車が走る事もあるわ。六両仕立ての豪華な列車で、プールにカジノまであるのよ」
「それは面白そうだな!」
「それもさっき言ってた契約者有志で作ったの? 初めて乗ると外の景色を楽しんでいるだけで充分だけど、何度も乗っていると確かにたまにはそういう施設があっても面白いのかもね」
しばらく経つと、ルカルカはおもむろに「旅の思い出」を取り出し、広げる。
「ちょっと、何これ!」
「なんという……」
 理子とセレスティアーナが食いついた。
 金鋭峰と彼とお揃いの帽子を被ったルカルカの写真のページになると二人は顔を見合わせる。
「これは嬉しかったんじゃない?」
「顔が幸せそうだな!!」
「これ、ダリルが撮ってくれたの」
「ちょっと、これババ抜き? ババ引いちゃってるじゃない」
 続くページの金鋭峰に理子は思わず笑い出す。
「弁当まで買わされているしな」
 次のページをめくったセレスティアーナも笑みをこぼした。
「そうそう。お弁当も団長が買ってきてくれたのよ。あ、二人ともSR弁当食べる?」
「俺が買って来よう」
 すかさずダリルが立ち上がると弁当を買いに向かう。
 4人分の弁当がそろうと早速揃って食べ始めた。
「祈祷が明けたらアイシャとも一緒にどっか旅行行きたいな」
「パラミタの危機が去れば機会もあるだろう」
 笑いながら言うルカルカにダリルが同意する。
「そうね」
「ああ」
 理子とセレスティアーナも頷いた。
「さて、と。列車の旅ならコレよね。ババ抜きとポーカーどっちがいい?」
 トランプを取り出しながらルカルカが尋ねる。
「ババ抜きだな」
「ちょっと、さっきの写真思い出しちゃうじゃない」
「団長格好良いよね」
「ババ引いてたけどね!?」
 ルカルカの言葉が更に理子のツボを刺激したらしくひとしきり笑い続けた。
「なんだと!?」
「あ、またババ引いた?」
「なぜ分かったのだ!?」
「だからセレス、反応分かり易すぎるって」
 ババを引くたびに声を上げるセレスティアーナにルカルカが突っ込む。  
 ひとしきりトランプを楽しむと、再び旅の思い出を見返して盛り上がる。
 そうこうしているうちにあっという間にSRの旅は終わりに近づく。
「二人とも、どうだった?」
「おかげで楽しかったわ」
「景色もきれいだったな」
 二人は楽しそうに顔を見合わせた。
「よし、撮るぞ」
 旅の終わりに、ダリルは三脚を出し四人での記念写真をタイマーで撮る。
「旅の思い出に貼っとくね。ねえ、理子、セレス。代王の責務は重いけど出来る事は手伝うし、何かあった時は駆けつけるよ。ロイヤルガードってだけじゃなく、友人としてもこれからも宜しくね」
 ルカルカは笑顔でそう告げた。

「おはよー! 水着持ってきた?」
「ええ。どこに行くんだったかしら?」
「空京にあるドーム型リゾート施設 パラミアンだよ。今年の冬に行ったんだけど、一年中南国気分が味わえる所なの。家族とか恋人とか友人と来たりする人が多いかな。テロリストも来た事あったっけ」
「……え?」
 明るいトーンのまま言ってのける桐生 理知(きりゅう・りち)ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)は耳を疑う。
「あ、捕まったから安心してね!」
「そ、そう。良かったわ……」   
 到着すると早速着替え、中を回り始める。
 人が多いため、はぐれないよう二人で手を繋いで中を回ってみる。
「プールの種類は沢山あって一日居ても楽しめるんだよ。せっかくだもん、遊ばなくちゃ! ウォータースライダーで一緒に滑る? 流れるプールで泳ぐのもいいな。ルシアちゃんは何で遊びたい?」
「流れるプールに行ってみたいわ」
「うん! じゃあまずこっちね!!」
 理知の案内でルシアは興味のあるプールから順番に回っていく。
 水の抵抗もあり、2時間ほど全力で遊んでいると、さすがに少し疲れてきた。
「すごいボリュームね」
「レストランやカフェもあるしマッサージもあるんだよ。休憩スペースもあるから少し休む?」
「ええ」
 二人は休憩スペースに移動すると、そのあとの動き方について相談する。
「そろそろアレ行っちゃう?」
「そうね。少しは空いたかもしれないし」
 ひとしきり休憩すると二人はウォータースライダーへと向かった。
 思っていた以上のスピードに、二人は滑りながら笑いが止まらなくなる。
「はー! 怖かったねー!」
「でもスッキリするわ。水も温かいし。まだまだ種類あるのね」
「目指すはプール全制覇だね! 外は暑いけどここは暖かいって感じだから過ごしやすいと思うよ。パラミタで南国気分!」
 理知は施設内を効率的に案内し、一日かけて二人でプールやレストラン、マッサージからカフェまで完全に堪能したのだった。

「お忙しいところお時間いただいてしまいすみません。キマク商店街の紹介をさせていただきますね」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)の言葉に理子とセレスティアーナが頷く。
「キマク商店街は、言葉の通りキマクにある商店街です。嘗ては、ドージェ信仰のメッカとして栄えていました。一度は、チーマー軍団のリーダー、蓮田レンのパートナー、ミゲル・デ・セルバンテスの立ち上げた首領・鬼鳳皇(どん・きほうてい)によって手痛い経済的打撃を受けましたが、多くの契約者の活躍によって持ち直す事が出来ました」
「なるほどね」
 理子が相槌を打つ。
「商店街の経営者達は、古くからの荒野の住人であり、嘗ては、略奪してきた品を物々交換する事で生計を立てていましたが、現在では、貨幣を用いた商売を営み、パラミタトウモロコシなどの農作物を育てています。農作業にはパラ実イコンを導入しており、種モミの塔のイコン工場で生産されたイコン用農具を使用しています」
「ずいぶんとおとなしくなったのだな」
 セレスティアーナが興味深げに呟いた。
「私、酒杜陽一は、商店街の集客数の向上や、経営者達への貨幣経済の解説に加え、日本等の外国からの投資を呼び込むパラミタトウモロコシ市場開発の為の農業の推進を働きかけてきました。キマク商店街に限らず、契約者達の働きかけによって、略奪を文化とする荒野の人々の意識にも変化が見受けられるようになってきました」
「良い話だな!!」
「そうね。実際に行ってみることってできるのかしら?」
「もちろんです。手土産だけは持っていきましょう」
 ……。
「なんだかちょっと懐かしい気がするんだけど」
「リコ。支援してあげるから、しっかり仕留めなさいよ!」
「美由子の支援は、支援じゃなくてトドメじゃない」
 酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)4人は商店街への手土産にするため、パラミタ巨大チキンを狩りに来ていた。
「狩りが上手いのか?」
「上手いというか……えげつない……まあ、結果的には上手いのよね……凄まじくね……」
 不思議そうに首を傾げるセレスティアーナにそう答える理子の姿に、陽一が苦笑をもらした。
「特戦隊の皆は、セレスを守ってあげてね」
「私は大丈夫だぞ。……うわあああああぁぁ!」
 胸を張ったセレスティアーナだったが、直後現れた巨大チキンの軍団に思わず叫んだ。
「リコ! 行くわよ!!」
「わかったわよ!」
「セレスティアーナ様、ここにいてくださいね」
 陽一はそう告げると走り出した二人を追いかける。
 理子が武器を構えてチキン軍団に殴りこんだところだった。
「理子さん!」
 陽一が援護する。
 二人は連携しながらチキンたちを岩場のほうへと追い込んでいく。
「リコ! 右側のチキンあの木に向かってぶっ飛ばして!」
「簡単に言ってくれるわねっ!」
「すみません、理子さん」
 思わず謝る陽一に理子が笑う。
「行くわよ!」
「さっすがリコ! 二人とも後ろに離れて!!」
 美由子の言葉に二人はとっさに後ろに退避する。
「それっ!」
 美由子は1羽のチキンの目に何かを投げつける。
 スパイスの効いた妙な固形物をぶつけられたチキンがふらつくところへ、すかさず足払いをかけると、そのチキンが倒れ、ドミノ倒しのように軍団が総崩れとなった。
「おお!!」
 見ていたセレスティアーナが思わず声を上げる。
「達人の域に達してない……?」
「そう……ですね……」
 ぽかんとする二人だったが、さっそく倒れたチキンたちを陽一まとめて引きずりながら商店街に持ち帰ると、店長さん達やその家族達と一緒に調理し食事をともにするのだった。
 
「では、行きましょうか」
 レイカ・スオウ(れいか・すおう)リファニー・ウィンポリア(りふぁにー・うぃんぽりあ)を案内しながらイルミンスールの森の中を空飛ぶ箒ミランで飛んでいく。
「こんなところに……?」
「そうなんです。そこまで奥地に存在するわけではないんですが、多分見つけたことのある人はあまり居ないと思います。空から捜そうとしても、木々に紛れている上に花畑自体がそこまで大きくありませんから」
 驚いた声を上げるリファニーにレイカが説明した。
「どうやって見つけたんですか?」
「以前薬草学の勉強のために森へ入ったときに偶然見つけたんです。目に鮮やかな花だけでなく、効用のある薬草も数多く生えていて、今でもお世話になることがあります。木々のせいで影ができて花が育たないのではないか……とも思ったのですが、どうやら木々が避けるように生えていて、しっかり日差しが入っているようですね」
「そうですね。どの植物も健康そうな色に見えます」
 リファニーは気持ちよさそうに深呼吸をした。
「リファニーさんは、色々な場所を散歩するのが好きなんですよね?」
「ええ」
「イルミンスールの森のような、鬱蒼とした場所はまた珍しいかな、とも思うんですが……どうでしょうか? その森の中にひっそり佇むお花畑……ロマンチックで素敵だな、って思うんです」
「そうですね。落ち着ける、すごく良い場所だと思います」
「そう言ってもらえて良かったです」
 二人は話しながら花畑の中をいろいろと観察しながらゆったりと歩く。
 途中リファニーが気になる植物があると、すかさずレイカが説明をしていった。
「少し休憩しますか?」
「そうですね」
 草花を避けてリファニーが座ると、レイカはヴァイオリンを演奏し始めた。
 穏やかな日差しの中で綺麗な花に囲まれながら優しく響くヴァイオリンの音色に、リファニーはしばし目を閉じて聴き入った。