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リアクション
■ 月夜の息抜き ■
ニルヴァーナでお月見しよう、とヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)はルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)を誘った。
ヴィナの目には、ルドルフはいつも一生懸命仕事しているように見える。その為、自分の息抜きに目がいかない所があるので、うるさいくらいに誘って息抜きしてもらわなければと思ったのだ。
けれどうるさいほど言う間もなく、ルドルフはすんなりとOKしてくれた。
「師匠もお月見は美しいと言っていた。僕もその美しさに少しでも触れてみたいものだね」
美しいものは目にも心にも快いからと、ルドルフは月見を楽しみにしてくれているようだった。
「月が綺麗だなー」
月冴祭の会場で、ヴィナは空を仰いだ。
闇の中にくっきりと浮かぶ満月は、人の心を惹きつけてやまない。
こうしていつまでも見ていたくなる。
「そうだね。不思議とニルヴァーナで見る月も美しいものだね」
月を眺めるルドルフもくつろいだ様子だ。そのことをヴィナは何より嬉しく思う。
「たまにはこうやって、のんびりするのも必要だよ。ルドルフさんは上に立つ者だから皆の手本になるのはいいことだけど、勤勉すぎても下の者は休めない。適度な息抜きが必要だよ」
だからこのお月見に誘ったのだというヴィナに、ルドルフはふと笑う。
「君の目にも僕はそんな風に映っているんだね。どうも僕の場合、何にでも興味を持ってしまうから、人から見るとそれが勤勉に見えてしまうのだろうね。息抜きも十分しているつもりだよ」
「でも実際、仕事してる時間かなり多くなってるし。休もう休もうと心がけるくらいで、ルドルフさんには丁度良いくらいだと思うよ」
「そうだね。確かにこういう時間もまた良いものだ」
美に触れる時間は常に確保しておきたいものだと、ルドルフは月と竹林、池のある風景を見渡した。
「まあ、人の目なんて勝手なものだけどね」
自分だって、とヴィナはルドルフと共に月冴祭を眺める。
「人から見れば、俺は奥さん2人もいるのにルドルフさんにも恋愛感情抱く醜い奴なんだろうし」
「ふっ、罪深い男だね」
ルドルフは小さく笑った。
「でもね、俺はそれでも幸せ。大事な人が多ければ多いほど、俺は頑張れるから」
誰かを好きであるという気持ちはヴィナに力を与えてくれる。奥さんのことばかりでなく、ルドルフを想う気持ちもまた。
相手が振り向く振り向かないは問題ではなくて、自分がどうあるかがヴィナにとって大事なのだから。
そして、大事な人の人の支えになっていることが、一番大事。
「少しでも支えになれてるかな?」
ルドルフに聞いてみると、ああと頷いてくれた。
「君と話しているととても楽しいよ」
自分といて息抜きをしてもらえること、楽しいと思ってもらえること、それがヴィナにとっての喜びだ。
「今日は息抜きしてくれてありがとう、ルドルフさん。」
「こちらこそ、美しい月を見る機会をありがとう。ここがニルヴァーナの地だと思うと、感慨もひとしおだね」
優雅にマントを揺らしながら月を観賞するルドルフを、ヴィナは飽かず眺めるのだった。
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