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過去から未来に繋ぐために

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過去から未来に繋ぐために
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リアクション


5章 未来から来た者


 サートゥルヌス重力源生命体は機甲石と共に在る。機甲虫が集合し、現在のサイクラノーシュのような巨大な構造物となれば、サートゥルヌス重力源生命体も自立的な干渉が可能になる……と言った所だろうか。
 ならば、源 鉄心(みなもと・てっしん)は思う。今の状況ならばサートゥルヌス重力源生命体と会話し、状況を改善できるかもしれない。
 鉄心はスープ・ストーン(すーぷ・すとーん)と共にマルコキアス?を飛翔させ、戦場を一直線に突き進んだ。高速飛翔するマルコキアス?に続き、【レガート】に乗るティー・ティー(てぃー・てぃー)と【サラダ】に乗るイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が戦場を突っ切る。
 暗く淀んだ空の下では、混沌たる戦場が広がっていた。ストークの形状をコピーしたブラックナイトが空賊団やイコン達に次々と討ち取られていく。だが時間乱動現象の影響か、完全に破壊されたはずのブラックナイトが次々と『再生』されていく。
 元通りとなったブラックナイトがストーク強行偵察型に剣を振るう。ストーク強行偵察型が【雷皇剣】で敵の斬撃を受け止めている間に、すかさずノイエ13が蹴りを入れる。強烈な衝撃を受けたブラックナイトが吹き飛ばされた。次いで、ストーク強行偵察型が【機晶ブレード搭載型ライフル】から機晶エネルギー弾を放ち、ブラックナイトを破砕する。
 が、ブラックナイトが破砕する瞬間、時間が巻き戻った。ストーク強行偵察型が放った機晶エネルギー弾はそっくりそのままライフル内に戻され、ブラックナイトが再び攻撃を始める。
 理不尽にして酷い矛盾が戦場に横たわっていた。時間乱動現象を発生させているジェネレーターを破壊するために接近しても、時間を巻き戻されて元の位置に戻ってしまう。襲いかかるブラックナイトの群れを破壊しても時間を巻き戻されてしまい、すぐさま再生してしまう。
 理不尽極まりない光景だ。時間の災害だ。大廃都は、アイゼンダールは……このような強烈極まりない理不尽と戦っていたのだ。
 戦場を行く鉄心の胸中に、アイゼンダールのリーダーの言葉が蘇った。
(『墓守の一族だから犠牲になっても仕方ない』――
 ……納得はできない。少しでも被害者を減らせる可能性があるなら、最善の選択をすべきだ。そうは思いませんか、アイゼンダール……)
 映像の中でしか知り得ない者たちに胸の内で語りかけ、鉄心は虹色の泡を高速で回避していく。
 ティーとイコナもどうにか付いて来ているようだ。ティーは以前と同じように、眠りの竪琴と天使のレクイエムで機甲虫たちの説得を図っていた。だが、ブラックナイトはティーの言葉に応じない。自分達を裏切った人類への怒りを全身に漲らせ、剣を振り上げるばかりだ。
 迫り来るブラックナイトからティーを守るため、鉄心は【ブレードビット】を展開した。
 戦うためではない。守るためだ。機晶エネルギーナイフを搭載した遠隔操縦式のビットがマルコキアス?の周囲を縦横無尽に飛び回り、ブラックナイトの斬撃をエネルギーの刃で受け止めていく。
「……一気呵成に行く!」
 マルコキアス?は敵機の攻撃をブレードビットで受け流しながら、サイクラノーシュの懐に飛び込んだ。
『貴様らの生存を許す訳にはいかん……!』
 サイクラノーシュが右腕の各部位に搭載されたスラスターからエネルギーを噴出し、恐るべき速度で拳を放つ。
 サイクラノーシュのサイズは全高300メートル。無論、拳の大きさも尋常ではなく、僅かでも接触すれば衝撃でイコンはばらばらに砕け散るだろう。
「戦うために来た訳ではない……!」
 マルコキアス?はスラスター出力を全開にして拳を回避した。巨体から繰り出される拳の一撃が空間を振動させ、ゴォォッ……という轟音を発する。
 回避する最中、鉄心はサイクラノーシュの左脚の損傷に視線をやった。前回の戦闘で破損した部位は修復されておらず、内部回路が剥き出しなままだ。
(……脚部の装甲が回復していないな。損傷に気づいてないと言うことは無いと思うが……)
 鉄心の疑惑は的を射ていた。【ロッツ・ランデスバラット】がサイクラノーシュの左脚の損傷部位に接近した瞬間、損傷部位がレーザー砲台に変形して高出力のレーザーを放ったのだ。
 早期警戒管制システム【WACS「スピニウェーベ」】によって相手の攻撃を感知した【ロッツ・ランデスバラット】が寸前で制動をかけ、レーザーの回避に成功する。
 ――やはりと言うべきか。サイクラノーシュは罠を張っていたのだ。【ロッツ・ランデスバラット】が敵の罠に気付いていたかどうかは定かではないが、これで懸念の一つは解消した。
 疑念が解消した所で、やるべき事は一つ。鉄心はサイクラノーシュの周囲を飛び回りながら告げた。
「……サートゥルヌス重力源生命体、聞こえていますか?」
 上から下から迫るブラックナイトの斬撃をブレードビットで防御しながら、マルコキアス?はサートゥルヌス重力源生命体に語りかける。
「ようやく自立的な干渉も可能になった……と言う所ですか。
 しかし、見てはいたのでしょう? 共生関係にある機甲虫達の中から」
『……然り。私は【観察者】。大廃都の底より、人類の歴史を見守ってきた』
 サイクラノーシュの装甲の隙間から黒いエネルギーが漏れ出し、翼持つ蛇となって鉄心の言葉に応えた。
「……話は聞いています。正直な所、例え機甲虫が今の人類を全滅させたとしても、重大な欠陥を抱える機甲虫達の未来も同時に閉ざされてしまうでしょう。それは重力源生命体にとっても本意では無い筈です」
『君の言葉には一理ある。何が望みだ?』
「時空連続体を操作できるなら……このイコンに取り付いて、連れて行ってはくれませんか? 機甲虫が目覚めた、あの日に……」
 ……あの日、せめて警告がもう少し早ければ、助かる命もあったかもしれない。
 大きな変化を起こすのは無理かもしれないが、施設への被害を極大化することになっても、人的被害を最小限にしたい。そうすれば、未来が変わるかもしれない。
 鉄心の言葉に、サートゥルヌス重力源生命体は3つの選択肢を提示した。
『それは、【大廃都に隕石が降り注いだ日】のことか? それとも、【サイクラノーシュが目覚めた日】か? それとも、【機甲虫が人類に反乱を起こした日】のことか?』
「どれでも構いません。出来れば、全てをお願いします」
 サイクラノーシュが左指を【ブレードビット】に変形させた。
 鉄心は、サイクラノーシュの変形を冷静に捉えていた。イコン用兵装として装備している以上、兵装のコピーは避けられない。それは変えられない事なのだ。
 サイクラノーシュは左指のブレードビットを射出した。遠隔操縦で飛び交うブレードビットに対抗するため、鉄心はブレードビットをぶつける。
 ビット同士が激突する中、サートゥルヌス重力源生命体は告げた。
『【サイクラノーシュが目覚めた日】と【機甲虫が人類に反乱を起こした日】に関しては、変える事は出来ない。
 だが、【大廃都に隕石が降り注いだ日】――即ち、私のせいで起きた時間乱動現象の被害を少なくする事ならば、出来る。
 ……元々、大廃都で起きた時間乱動現象は【主】にとっても想定外の現象だった。時間の流れを正せると言うのならば、私も力を貸そう』
 その言葉から鉄心は悟った。この世には絶対とも言うべき流れがあり、変えられるものと変えられないものがあるという事を。
「イコンのエネルギーが尽きるまで……可能性が僅かでもあるなら、片道切符でも構わない」
 鉄心の片道切符発言は、同乗するスープを動揺させた。
(Σ こ、この人何言ってやがるでござりまするん〜!?)
 スープを更に動揺させる展開が起きた。地表の針葉樹が機甲虫に変形し、ハートナイトと化したのだ。
 ビットが飛び交う戦場に強引に押し入り、ハートナイトが無言で手を差し出す。
「ハートナイト……力を貸してくれるのか」
 マルコキアス?はハートナイトの手を取り、頷いてみせた。
「仕方が無いでござるな〜……こいつのデータを持っていくでござる!」
 なんだかんだ言いつつも、スープもスープで最善を尽くして協力するつもりのようだ。スープの操作により、接触箇所を起点として【※ヴィサルガ・プラナヴァハ】のデータがハートナイトに転送された。
 マルコキアス?からヴィサルガ・プラナヴァハのデータを受け取ったハートナイトは、ヴィサルガ・プラナヴァハの全構造を内部に再現し、己が持つ【機甲石】のエネルギーを全開にした。
 ハートナイトから凄まじいエネルギーの奔流が吹き荒れ、背面から3枚の光の翼を広がった。
『ならば参ろうではないか。――5000年前のあの日へ』
 ハートナイトとマルコキアス?に【翼持つ黒い蛇】が憑依し、過去に飛んだ。いま現在の光景が彼方に流れ去り、マルコキアス?とハートナイトを世界の過去へと導いていく。
 全てが流れ去っていった。サイクラノーシュが、大廃都が、アルト・ロニアが、超光速で『未来』に流れていく。今まさに、鉄心とスープは時間を遡っているのだ。
「エ、エネルギーが急速に減っていくでござる〜!?」
 スープが警告を発した。どうやら過去/未来への移動はイコンのエネルギーを消費するらしく、時間を遡っていくにつれマルコキアス?のエネルギーゲージは急速に下降していった。
(この調子だと、帰りの分は保たないか……)
 しかし、鉄心は自分でも驚くほど冷静に時間移動の影響を捉えていた。自分でも上手く説明できないが……こうするのが正しいのだと、何となく理解していた。
 マルコキアス?のエネルギー残量が10%を切った瞬間、周囲の光景が静止した。時間移動が完了したのだ。
 鉄心は、呟いた。
「過去に……飛んだのか?」
『そうだ。これは約5000年……隕石が落下する直前の光景だ』
 マルコキアス?とハートナイトの眼下に、5000年前の大廃都の光景が広がった。
 近未来的な――こう言うと矛盾しているが――都市だった。白亜の建造物があちこちに立ち並び、人々は機晶姫と共に生活していた。
 人は機晶姫と共存していた。互いに助け合い、互いを敬い、互いを対等な関係として扱った。そこに『奴隷』の二文字は無かった。
 大廃都に住まう人々は上空に浮かぶマルコキアス?とハートナイトを指差し、驚きを露わにした。レーダーに反応しない機体がいきなり2機(正確には3体)現れたのだ。無理からぬ反応と言えた。
「この世界で、俺はどうしたらいい?」
 マルコキアス?とハートナイトはサートゥルヌス重力源生命体の翼の上に乗っていた。
 翼持つ黒い蛇は、遥かなる上空に向きを変えた。
『3分後、隕石が大廃都に降り注ぐ。それを砕くのだ』
「この都市の人々が……自分たちの力で隕石を発見して迎撃するような真似は、できないのか?」
 翼持つ黒い蛇は、首を横に振った。
『この時代、この都市に存在するレーダーは、隕石が発する時間乱動現象に対応していない。迎撃は不可能だ。
 万物は【時の流れ】に従っている……。大きな流れは変えられない。だが、支流は変えられる』
「………………分かった。やってみよう」
 マルコキアス?は新型ダブルビームサーベルを、ハートナイトはハートサーベルを引き抜いた。更に万全を期して、マルコキアス?をブレードビットを周囲に展開する。
「き、来たでござる〜!!」
 スープが絶叫する。成層圏を貫き、真紅に燃える隕石が落下してくるのがモニター越しに見えた。
「……頼むぞ、マルコキアス……!」
 鉄心の言葉に呼応するかの如く、マルコキアス?が動いた。
 全てのブレードビットを発射し、隕石に突き刺す。無論、ブレードビットだけでは隕石を止められない。少しでも隕石を細かく砕いて、大廃都への被害を小さくするのが目的だ。
 効果はあった。ブレードビットの刃に切り裂かれ、隕石が2つに分かれた。
「今……!」
 マルコキアス?とハートナイトが踏み込み、2つに分かれた隕石にサーベルを突き立てた。ビームの奔流が隕石の内部を貫き、爆散し、そして――
『【時の流れ】に干渉できるのは、ここまでだ』
 サートゥルヌス重力源生命体が翼を広げ、マルコキアス?とハートナイトを包み込んだ。
 再び視界が流れ去った。5000年前の大廃都は過去に流れ去り、マルコキアス?とハートナイトが『現在』へ時間移動する。
 周囲の光景が超光速で過ぎ去っていく中、スープが言った。
「あ……あの後、5000年前の大廃都はどうなったんでござるか……!?」
『【隕石が直撃した】という事実から、【隕石の破片が直撃した】という事実に変わった。
 隕石が落ちた事は変えられない。だが、隕石が細かく破砕された事により、大廃都への被害は最小限に留められた。
 だが、問題は……』
 言わずとも分かっている。鉄心は頷いた。
 時間移動の際にはイコンのエネルギーを大量に消費する。行きでエネルギーを70%以上消費しているのだ。残ったエネルギーで『現在』に帰るのは不可能だ。
『……私に出来るのは、ここまでだ』
 サートゥルヌス重力源生命体が霧散し、マルコキアス?は暗黒の中に放り出された。


■再現された過去■


 暗闇の中で、鉄心の意識は過去に飛んだ。
 ――ヒラニプラ山脈にある標高7000メートル級の高山【マレンツ山】。あの山に行った時の思い出が蘇った。
「鉄心、これ……」
「ん?」
 背後から呼びかける声があった。鉄心が振り返った先には、イコナ・ユア・クックブックが佇んでいた。
 イコナが広げた手の平には、ミヤマヒメユキソウがちょこんと顔を覗かせていた。
「あぁ。なんだ、それなら御上先生の所に持って行くんだぞ。……しょうがないな、貸してみろ。俺が、一緒に持って行ってやる」
 鉄心がイコナの手の平からミヤマヒメユキソウを取り上げる。途端、イコナは鉄心が取り上げた花をひっつかんだ。
「な、なんだ……? どうした、イコナ?」
 イコナは頬を膨らませ、不機嫌そうに怒っていた。
「もういい、鉄心のバカ!」
 イコナは手にしたミヤマヒメユキソウを口元に運んだ。イコナがミヤマヒメユキソウを食べようとした瞬間、花は消えてしまった。
「あ、あれ?」
「ダメですよ〜。折角今まで頑張ったのに、最後の最後で癇癪起こしちゃあ〜」
 イコナが振り返ると、すぐ傍の岩の上で誰か――ノイズが混じっていて顔は見えない――が屈み込んでいた。その手には、イコナの花が握られている。
「か、返して下さい!」
 イコナは必死にぴょんぴょんとジャンプするが、届かない。
「返してあげてもいいですよ? ただし、ちゃんと渡すって約束するならです。約束できますか?」
「……はい」
 唇を尖らせ、イコナは首肯した。
「そうこなくっちゃ! さぁ、勇気を出して」
 誰かはイコナに花を渡し、微笑んでみせた。
 しばしその顔を見ていたイコナは「うん!」と返し、鉄心に向き直る。
 そして、改めて鉄心に花を差し出した。
「鉄心。これは、鉄心にあげる花です」
「え? 俺にか?」
「ハイ。だから、鉄心が食べて下さい!」
「わ、分かった……。有難う」
 困惑気味に花を受け取る鉄心。傍らでは、誰かがにこやかに拍手をしていた。
「な、なぁイコナ。これ……、今食べなきゃダメか?」
「ううん。そんなコトないけど……。どうして?」
「いや、なんだか、食べるのがもったいないような気がして……」
 ――『食べたら、泣いちゃいそうで』
 胸中ではそう思ったが、口に出すのは憚られた。
「……鉄心の、好きにしていいよ」
 鉄心の胸中を汲み取ったかのように、イコナが言った。
 鉄心は、自身の心が穏やかになっていくのを感じた。イコナの想いを受け止めた鉄心は、微笑んでこう応えた。
「……有難う、イコナ。俺は、本当に嬉しいぞ」
「うん!」
 鉄心はイコナの頭をくしゃっとする。イコナは、心の底からの笑顔を浮かべた。


■現在■


 ――戦場に、イコナの歌声が響いた。
「♪ 一欠片 独りきり 笑い合えた日々を思い……」
 サイクラノーシュとイコン達が争い合う戦場で、イコナは昔を思い出していた。
 幸せを感じた時の事。あの時の思い出を……鉄心との過去を思い出し、イコナは歌を歌っていた。
 ただ、それだけの事。イコナがいま歌う歌は、本当にただそれだけの物だ。
 ――奇跡は起きた。たったそれだけの事で……イコナの歌声は、時間という名の暗闇を彷徨う者を導く光となった。時の渦を放浪する鉄心は微かな灯火と光の翼に導かれ、『現在』に現れた。
 新たに発生した虹色の泡からサートゥルヌス重力源生命体とマルコキアス?が現れ、イコナの下に転げ落ちる。


「俺は……帰って来たのか……?」
 目を覚ました鉄心は、はっきりと認識した。自身が元の時代に帰って来たのだと。かけがえのないパートナーたちの下に帰って来られたのだと。
 ……過去を変えた事で、大きな変化は起きなかった。大廃都に隕石が直撃したという事実は変えられなかった。
 だが、5000年前に大廃都で起きた【隕石の直撃】は【隕石の破片の直撃】に変わり、失われるはずだった人々の命は僅かながらも救われた。過去は変わったのだ。
「エネルギー残量0でござる〜! 動けないでござるよ〜!」
 スープの言う通り、マルコキアス?のエネルギーゲージは0を示していた。
 鉄心は【機晶脳化】を解除したスープを連れて、マルコキアス?のコクピットハッチを開いた。眼前の光景は、5000年前に戻る前と全く変わらない。サイクラノーシュとイコン達は戦闘を繰り広げており、大廃都は時間乱動現象に覆われている。
 周囲を見渡す。ハートナイトがいなかった。マルコキアス?に憑依しているサートゥルヌス重力源生命体は、鉄心に真実を語った。
『……【彼】は過去・現在・未来における自身の全てのエネルギーを使い、君をこの時代に時間移動させた』
 それは、ハートナイトの『死』を意味していた。
 サートゥルヌス重力源生命体がマルコキアス?から離脱し、サイクラノーシュの下に帰って行く。翼持つ蛇の飛翔を見届けながら、鉄心はハートナイトを想った。
(ハートナイト……ありがとう)
 俯く鉄心の下に、サタディとヨルクが駆るホワイトクィーンが現れた。
 スラスターから青白く輝くエネルギーを噴出させながら、ホワイトクィーンが鉄心に手を差し伸べる。
『――乗れ! 戦いはまだ終わっておらぬ!』